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第六章
第47話『やるからには徹底的にやる』
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「アルマ様、申し訳ありません」
「大丈夫だから、気にしないで」
アルマ達は現在、屋敷にて籠城戦を強いられていた。
屋敷内にあるありとあらゆるものを組み立ててバリケードを構築。
しかし、最初こそは一階にて防衛線を繰り広げていたが、それは半日と耐えられず二階へと移動している。
二階は、数々の窓から侵入されることもなく、階段を付近を死守していれば良いため、攻防もしやすくなっていた。
だが、二つある階段の一つは占領されてしまい、どんどん戦況は悪くなっている。
「幸いにも最後の砦となっている残りの二部屋には、第二武器庫と第二食糧庫がある。ここさえ死守すれば、長期戦ができるし、もしかしたら相手が諦めてくれるかもしれない。援軍だってきれくれるかもしれない」
希望的推測にしかならないとはアルマはわかっている。
しかし、こんな絶望的状況下では希望になるものが必要だ。
「今頃みんなは安全な場所に居るはず。だから、そこだけは安心だ」
今朝方、最後の馬で従者を橋の方へ遣わせた。
逃がすという意味もあったが、「橋を落せ」という命令を伝えてある。
アルマ達は逃げられなくなるが、その分、村人と従者達の危機は去った、ということである。
ここに残されているのは、昨日報酬を用意していた三人。
メイドと執事は、大半の人を逃がした後にアルマの援護をしようと残ってしまったのだ。
偶然にも、戦場で巡り合えたのは良かったが、メイドが転倒して襲われそうになっていたその瞬間――そして、そこでアルマは初めて勇気を振り絞ってウルフへ飛び掛かり、見事その息の根を止めた。
「あれ、あのペンダントはどうしたの?」
足を痛めて座り込むメイドに、アルマは問いかける。
「えっ――階段を上った時にはあったのですが……落ちているとしたら、バリケードを作っている時に落ちたのかもしれません」
「じゃあ、そう遠くはなさそうだね」
「だ、ダメですよアルマ様、危険です! 私は大丈夫ですから!」
「今の僕なら大丈夫。信じて」
「――絶対に帰ってきてください」
「任せて」
メイドも執事もアルマに助けられ、その言葉の意味を十分に理解していた。
本来であれば止めるべきだが、主を信じ、送り出す。
こんな状況だというのにたかがペンダントのためになぜ? と、誰しもが思う状況だが、そのペンダントはメイドの母親の形見であり、毎日拭いてはとても大切にしているのをアルマはちゃんと見ていたからこそ、行動しようと決めたのである。
「すぐに返ってくるけど、もしもの時は戦うんじゃなくて、ここを閉じてね」
「……わかりました」
「アルマ様、お気をつけて」
アルマは力強く頷き、バリケードの一部を崩す。
その際中、ウルフの姿は見えず、まずは一安心。
完全に体を出すも、ペンダントは付近には見当たらなかった。
見落としはないかと、何度か辺りを見渡す――と、少し先にある階段へ差し掛かる場所に光を反射する物を発見。
急ぎ回収をするためにアルマは駆け出す。
(良かった。このままペンダントを回収して戻るだけだ)
と、安堵したその時だった。
「っ!」
階段から二匹のウルフが上がって来てしまった。
完全に鉢合わせであり、逃げ道はない。
この距離感であれば、助けを求めれば二人は駆けつけてくる――だが。
「今までの僕とは違うんだ」
不利な状況だが、戦う決意を示す。
(カナト、キミに教わったことをしっかりと活かすよ)
今のアルマには、臆病な面は消えていた。
呼吸は整い、震えはなく、自らの意思のまま体を動かせる。
二人を助ける際、そこに迷いはなかった。
がむしゃらに駆け、不器用に剣を振るい、無我夢中に戦い。
護りたい人を護る、その信念を貫き通せたことにより、いつの間にかアルマの中から恐怖心は消え去っていた。
そう、今のアルマは、カナトが思った通りの戦士になったのである。
「アルマ様、ありがとうございます!」
二体のウルフを討伐し、アルマは無傷のまま帰還を果たした。
メイドは、アルマに何事もなかったことと、一度は諦めたペンダントがこの手に戻ってきたことでいろいろな感情が溢れ出し涙を流す。
「でもちょっと疲れちゃったな。少しだけ休憩しても大丈夫かな」
「はい、アルマ様が休憩されている最中、絶対に守ってみせます」
「私も!」
執事は剣を、メイドは槍を手に意気込む。
「じゃあ、お願いするね――」
「ふぅ、もう終わりなのかな? あっけなーい」
ミサヤは余裕そうに剣をブンブンと回す。
「まだまだ戦いたい気分ではあるが、それどころじゃない。急ぐぞ」
ウルフ群との戦いは、前後左右から怒涛の攻撃が繰り出される混戦となった。
普通の冒険者なら、たぶん上手く対応することができなく体力を削られ、最悪命を落としてしまっていたかもしれない。
しかし、俺達にはゲームの世界だが幾度となくこういう戦いをした経験がある。
ゲームと自分の体を動かすのでは、大分違いはあるが俺達にはステータスがあり、現実世界の生身で戦うわけではない。
それに、俺達の決意はちょっとした痛み程度では折れるはずはなく。
痛みを感じても、助けたい人のために見えないバフがかかっている。
橋を渡りきり、そのまま前進したところで、信じられない光景を前に全員の足が止まってしまった。
「なっ」
アケミはあまりのショックに両手で口を押さえてしまう。
無理もない。
小屋であろう建物は全壊し、家であろう木造の家は半壊している。
その他様々な道具が道端に転がり落ち、犯人であるウルフが残した無数の足跡が残っていた。
「あたし達、間に合わなかったのね……」
「くそっ」
アンナは悲しみに肩を落し、ケイヤは珍しく感情を露にする。
心の片隅では、みんな思っていた、俺も含み。
ここへ辿り着くのに、丸一日が経過してしまっていた。
でも、みんな希望を持っていたということだ……この光景を目にするまでは――。
しかし、ミサヤは口を開く。
「みんな、落ち込んでちゃダメだよ。ボク達は間に合わなかった。でもたぶん、ウルフ達はまだこの村を破壊しているかもしれない。だから、ボク達はここに住んでいた人達のためにも、徹底的にウルフを根絶やしにしないといけない」
「……そうだな。俺もミサヤの意見に賛成だ。やると決めたんだ。やるからには徹底的にやる。今は、これが正解だと思う」
三人は震えながら息を吸い、言葉はなく頷く。
そうだ、今は泣き崩れている時ではない。
アルマの意思を引き継ぎ、この村をあいつらなんかに譲ってはいけないんだ。
これは絶対であり、共と交わした約束だから。
すると、数体のウルフが俺達を無視して横切っていく。
「あいつらを全滅させる。いいな?」
俺は全員に問う。
だが、ケイヤが。
「少し待って。もしかしたらなんだけど」
「気になることでもあったのか?」
「うん。今更なんだけど、なんでウルフ達は急に村を襲撃したのかな。二人の様子からするにまだ時間の猶予はありそうじゃなかった?」
「言われてみればそうだな」
「それに大型ウルフは兎も角、小型ウルフまで統一感があって……」
「まるで指揮官がいるような、ってことか」
「そうそれ。これは推測でしかないんだけど、もしかしたらボスがいるんじゃないかなって思ったんだ」
「ほう、なるほどな」
俺も以前、そういう存在が居てもおかしくないと考察したことがある。
その時はただの強さを計る指標にしかしていなかったが、さっき橋の前で待機していた後発隊や今目の前を横切った小型ウルフを見たら、ケイヤの推測が現実味を帯び始めた。
「そうすると、今のあいつらはボスの元へ集結しているということになるか?」
「かもしれない。でもなんで……」
「村を壊滅させて尚、そういう事をするとすれば、食糧に集っているいるか生存者がまだいるか」
全員の目に、力が戻る。
「なら、俺達がやることは決まったな」
「あれ……待って。あの家も、あの家も」
「どうしたアケミ」
「こんな状況なのに、誰も亡くなっている人がいない」
「なんだと」
冷静になった今、アケミが言った通りに辺りを見渡す。
「本当だ。――なるほどな。みんな、俺らの友である次期領主はしっかりと自分の役割を果たしたみたいだぞ」
みんなの顔に明るさが戻る。
「案外、アルマは馬鹿正直にみんなを護ろうって、屋敷にでも籠城してたりしてな。そんでもって、ウルフのボスは一斉攻撃を仕掛けるために仲間を集めているかもしれない」
そんな時。
『ワオォオオオオオオオオオオンッ!』
耳を塞ぎたくなるような大きな遠吠えが響き渡る。
「ご丁寧にあちら側から居場所を教えてくれてるぜ。んじゃあ、作戦は一緒だ――やるからには徹底的にやる――だ。みんな行くぞっ!」
「大丈夫だから、気にしないで」
アルマ達は現在、屋敷にて籠城戦を強いられていた。
屋敷内にあるありとあらゆるものを組み立ててバリケードを構築。
しかし、最初こそは一階にて防衛線を繰り広げていたが、それは半日と耐えられず二階へと移動している。
二階は、数々の窓から侵入されることもなく、階段を付近を死守していれば良いため、攻防もしやすくなっていた。
だが、二つある階段の一つは占領されてしまい、どんどん戦況は悪くなっている。
「幸いにも最後の砦となっている残りの二部屋には、第二武器庫と第二食糧庫がある。ここさえ死守すれば、長期戦ができるし、もしかしたら相手が諦めてくれるかもしれない。援軍だってきれくれるかもしれない」
希望的推測にしかならないとはアルマはわかっている。
しかし、こんな絶望的状況下では希望になるものが必要だ。
「今頃みんなは安全な場所に居るはず。だから、そこだけは安心だ」
今朝方、最後の馬で従者を橋の方へ遣わせた。
逃がすという意味もあったが、「橋を落せ」という命令を伝えてある。
アルマ達は逃げられなくなるが、その分、村人と従者達の危機は去った、ということである。
ここに残されているのは、昨日報酬を用意していた三人。
メイドと執事は、大半の人を逃がした後にアルマの援護をしようと残ってしまったのだ。
偶然にも、戦場で巡り合えたのは良かったが、メイドが転倒して襲われそうになっていたその瞬間――そして、そこでアルマは初めて勇気を振り絞ってウルフへ飛び掛かり、見事その息の根を止めた。
「あれ、あのペンダントはどうしたの?」
足を痛めて座り込むメイドに、アルマは問いかける。
「えっ――階段を上った時にはあったのですが……落ちているとしたら、バリケードを作っている時に落ちたのかもしれません」
「じゃあ、そう遠くはなさそうだね」
「だ、ダメですよアルマ様、危険です! 私は大丈夫ですから!」
「今の僕なら大丈夫。信じて」
「――絶対に帰ってきてください」
「任せて」
メイドも執事もアルマに助けられ、その言葉の意味を十分に理解していた。
本来であれば止めるべきだが、主を信じ、送り出す。
こんな状況だというのにたかがペンダントのためになぜ? と、誰しもが思う状況だが、そのペンダントはメイドの母親の形見であり、毎日拭いてはとても大切にしているのをアルマはちゃんと見ていたからこそ、行動しようと決めたのである。
「すぐに返ってくるけど、もしもの時は戦うんじゃなくて、ここを閉じてね」
「……わかりました」
「アルマ様、お気をつけて」
アルマは力強く頷き、バリケードの一部を崩す。
その際中、ウルフの姿は見えず、まずは一安心。
完全に体を出すも、ペンダントは付近には見当たらなかった。
見落としはないかと、何度か辺りを見渡す――と、少し先にある階段へ差し掛かる場所に光を反射する物を発見。
急ぎ回収をするためにアルマは駆け出す。
(良かった。このままペンダントを回収して戻るだけだ)
と、安堵したその時だった。
「っ!」
階段から二匹のウルフが上がって来てしまった。
完全に鉢合わせであり、逃げ道はない。
この距離感であれば、助けを求めれば二人は駆けつけてくる――だが。
「今までの僕とは違うんだ」
不利な状況だが、戦う決意を示す。
(カナト、キミに教わったことをしっかりと活かすよ)
今のアルマには、臆病な面は消えていた。
呼吸は整い、震えはなく、自らの意思のまま体を動かせる。
二人を助ける際、そこに迷いはなかった。
がむしゃらに駆け、不器用に剣を振るい、無我夢中に戦い。
護りたい人を護る、その信念を貫き通せたことにより、いつの間にかアルマの中から恐怖心は消え去っていた。
そう、今のアルマは、カナトが思った通りの戦士になったのである。
「アルマ様、ありがとうございます!」
二体のウルフを討伐し、アルマは無傷のまま帰還を果たした。
メイドは、アルマに何事もなかったことと、一度は諦めたペンダントがこの手に戻ってきたことでいろいろな感情が溢れ出し涙を流す。
「でもちょっと疲れちゃったな。少しだけ休憩しても大丈夫かな」
「はい、アルマ様が休憩されている最中、絶対に守ってみせます」
「私も!」
執事は剣を、メイドは槍を手に意気込む。
「じゃあ、お願いするね――」
「ふぅ、もう終わりなのかな? あっけなーい」
ミサヤは余裕そうに剣をブンブンと回す。
「まだまだ戦いたい気分ではあるが、それどころじゃない。急ぐぞ」
ウルフ群との戦いは、前後左右から怒涛の攻撃が繰り出される混戦となった。
普通の冒険者なら、たぶん上手く対応することができなく体力を削られ、最悪命を落としてしまっていたかもしれない。
しかし、俺達にはゲームの世界だが幾度となくこういう戦いをした経験がある。
ゲームと自分の体を動かすのでは、大分違いはあるが俺達にはステータスがあり、現実世界の生身で戦うわけではない。
それに、俺達の決意はちょっとした痛み程度では折れるはずはなく。
痛みを感じても、助けたい人のために見えないバフがかかっている。
橋を渡りきり、そのまま前進したところで、信じられない光景を前に全員の足が止まってしまった。
「なっ」
アケミはあまりのショックに両手で口を押さえてしまう。
無理もない。
小屋であろう建物は全壊し、家であろう木造の家は半壊している。
その他様々な道具が道端に転がり落ち、犯人であるウルフが残した無数の足跡が残っていた。
「あたし達、間に合わなかったのね……」
「くそっ」
アンナは悲しみに肩を落し、ケイヤは珍しく感情を露にする。
心の片隅では、みんな思っていた、俺も含み。
ここへ辿り着くのに、丸一日が経過してしまっていた。
でも、みんな希望を持っていたということだ……この光景を目にするまでは――。
しかし、ミサヤは口を開く。
「みんな、落ち込んでちゃダメだよ。ボク達は間に合わなかった。でもたぶん、ウルフ達はまだこの村を破壊しているかもしれない。だから、ボク達はここに住んでいた人達のためにも、徹底的にウルフを根絶やしにしないといけない」
「……そうだな。俺もミサヤの意見に賛成だ。やると決めたんだ。やるからには徹底的にやる。今は、これが正解だと思う」
三人は震えながら息を吸い、言葉はなく頷く。
そうだ、今は泣き崩れている時ではない。
アルマの意思を引き継ぎ、この村をあいつらなんかに譲ってはいけないんだ。
これは絶対であり、共と交わした約束だから。
すると、数体のウルフが俺達を無視して横切っていく。
「あいつらを全滅させる。いいな?」
俺は全員に問う。
だが、ケイヤが。
「少し待って。もしかしたらなんだけど」
「気になることでもあったのか?」
「うん。今更なんだけど、なんでウルフ達は急に村を襲撃したのかな。二人の様子からするにまだ時間の猶予はありそうじゃなかった?」
「言われてみればそうだな」
「それに大型ウルフは兎も角、小型ウルフまで統一感があって……」
「まるで指揮官がいるような、ってことか」
「そうそれ。これは推測でしかないんだけど、もしかしたらボスがいるんじゃないかなって思ったんだ」
「ほう、なるほどな」
俺も以前、そういう存在が居てもおかしくないと考察したことがある。
その時はただの強さを計る指標にしかしていなかったが、さっき橋の前で待機していた後発隊や今目の前を横切った小型ウルフを見たら、ケイヤの推測が現実味を帯び始めた。
「そうすると、今のあいつらはボスの元へ集結しているということになるか?」
「かもしれない。でもなんで……」
「村を壊滅させて尚、そういう事をするとすれば、食糧に集っているいるか生存者がまだいるか」
全員の目に、力が戻る。
「なら、俺達がやることは決まったな」
「あれ……待って。あの家も、あの家も」
「どうしたアケミ」
「こんな状況なのに、誰も亡くなっている人がいない」
「なんだと」
冷静になった今、アケミが言った通りに辺りを見渡す。
「本当だ。――なるほどな。みんな、俺らの友である次期領主はしっかりと自分の役割を果たしたみたいだぞ」
みんなの顔に明るさが戻る。
「案外、アルマは馬鹿正直にみんなを護ろうって、屋敷にでも籠城してたりしてな。そんでもって、ウルフのボスは一斉攻撃を仕掛けるために仲間を集めているかもしれない」
そんな時。
『ワオォオオオオオオオオオオンッ!』
耳を塞ぎたくなるような大きな遠吠えが響き渡る。
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