異世界の英雄は美少女達と現実世界へと帰還するも、ダンジョン配信してバズったり特殊部隊として活躍するようです。

椿紅颯

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第三章

第19話『任務完了』

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「どひぇええええええええええええええええええええっ!?」

 報告会の第一声に、さくらは目と口をこれでもかと最大限に広げ、仰け反りながら驚愕を露にした。

「あの、これはどういうことなんですか!?」
「桜さん、ここは人通りのない別室でも声量的にマズくないですか」
「たしかに別の従業員が駆け着けそうですけど……いやいや、この状況を前に冷静に対応しろっていう方が無理がありますって」

 桜は目を高速でパチパチしながら、提出された情報が記載されている書類に目を通す。これでもかと至近距離で。

「落ち着いてください。俺たちの実力を目の当たりにした桜さんなら、そこまで驚くことはないですよね」
「いや、まあそうではありますけど……いやいや、私、ちゃんと忠告しましたよね」
「ええ。ですから、無理をせずに引き返してきたんです」
「違いますよ、全然違います」
「何がですか?」
「あのですね。居ないんですよ、未だかつて初日で第10階層のボスを討伐しちゃう人なんて。世界初ですよ、こんな偉業」
「ほほぉ」

 桜は片をガクッと落とし、盛大なため息を吐き出す。

「あんまり目立たないようにって意味での忠告だったのに、やってくれましたね」
「それはごめんなさい。なんというか、成り行きでそうなっちゃいました」
「でしょうね、としか言えませんよ。仕事中で確認がまだですが、配信はしていたのですか?」
「はい」
「あぁ……視聴者はどれぐらい居ましたか? 常時観ていたしていませんでしたが、確認していたときは0人でした」
「配信終了するときに確認は?」
「ごめんなさい、0人のままだと思って確認していませんでした」
「じゃあ、まだ間に合うかな……でも、それだったら危惧しすぎな可能性もあるし……」

 桜は悩みに悩む。
 上にどうやって報告すればいいのかというのもあるし、もしかしたらとんでもない放送内容にどんな反応があるのかも気になってしまう。
 このまま放置するか、もういっそのこと配信用のチャンネルを削除してしまうか――を検討しているが、逆に放置していてもいずれまた偉業を成しとける可能性を視野に入れたら対策の全てが無意味となる。

 であれば。

「わかりました。もう、ダンジョンでの行動や配信活動については秋兎あきと様にお任せいたします。ですが、ほどほどにお願いしますね」
「わかりました。まだまだ不慣れなことの方が多いので、試行錯誤してみます」
「本当に、ほどほどでお願いします」

 成るように成る、と半ば諦めた桜は書類をテーブルに置いて姿勢を正す。

秋兎あきと様、少しだけお聞きしたいことがあります」
「はい、なんでしょう」
「別室にてお待ちいただいている皆様とは、どのような関係性なのですか? 婚約相手とかでしょうか」
「いえいえ、全然そんなことはありませんよ。彼女たちとは契約上の主従関係であり、魂で繋がっている存在――ですかね」
「それは、あちらの世界だとどれぐらいの関係値なのでしょうか」
「簡単に言えば今の通りでしかないのですが。魂の契約というのは、文字通りそのままで、俺が寿命以外で命を落せば契約解除をしなかったら同じく命を落とします」
「そこまでの深い絆で結ばれているということなのですね」
「ええまあ、そうですね。後は、互いにそれぞれの能力を制限し合っていたりしますね」
「と言いますと?」
「フォルで例えると、まさかこちらの世界で魔法が使えるとは思っていませんでしたが、地上にとんでもなくデカイ穴を作り出すぐらいには強力な魔法を使うんですよ、彼女は元々」
「え……」
「ですので、契約で能力の上限を設定し、逆に俺の能力の一部を彼女に制限してもらっています」
「ちょっ、ちょっと待ってください」
「はい?」

 桜はちゃんと話を聴き、理解してきた。
 明確でも正確でもないが、想像するには人智を逸脱した内容をなんとか想像しつつ。
 しかし、目の前に居る秋兎が、一番自分と近しい存在である、いや同類である人間と認識していた秋兎へ懐疑的な目線を送る。

「秋兎様が、今は能力を制限されている。という認識したのですが、それはどういう」
「まああれですよ、形だけとはいえ主従関係のある契約ですから。彼女たちの全力に勝利しないと結ぶことができないって話です」
「いやいやいや、え? え? 今、私の目の前に居るのは人間ですよね?」
「ええ、正真正銘の人間ですよ」

 本来なら、逸脱した存在を下す存在だとしたら恐怖心を抱くだろう。
 しかし、今となっては桜と秋兎は会話を重ね食事までし、少なくとも一緒に時間を共有した仲だ。
 もう自分がどうやってリアクションをとればいいんかわからなくなっているが、もうここまで来れば疑問しか浮かばない。

「こんな質問をするのはおかしいとは思いますが……秋兎様はどれぐらいのお強さなのですか……?」
「自分で言うのはお恥ずかしい話ではありますが、あちらの世界では【暁煌の英雄】と呼ばれていました」
「……英雄と呼ばれる、ということは何かの偉業を成しとげたということですよね?」
「そうですね。ギルドが各冒険者などに求めていた5大クエストをクリアしてまでです」
「え……中身を訊かせていただいても?」
「1、全ダンジョン踏破。2、全ボス討伐。3、魔王討伐。4、神兵との勝負。5、神との勝負。です」
「ま、まさかそれら全てを成し遂げたと……?」
「いえ、そういうわけではありません。ダンジョンは先人たちが既に何十階層も踏破していましたし、過去の英雄によりボスもほとんど討伐されていました」
「残りの3つは……?」
「魔王討伐は成し遂げました。大切な親友が命を落としてしまいましたが……。後の神々との戯れは、もはや目を付けられて強制的に挑戦する他なかっただけです。その後、こっちの世界に還してもらったんです」
「ははぁ……」

 桜は、あまりにも現実味のない話に頭がクラクラし始め、自分は夢の中に居るのではないか、という錯覚に陥り始めようとしていた。

「と、まあこういう感じです」
「あのぉ……もしものことがあったら、私も護っていただけたりしませんでしょうかぁ……」
「冷たいことを言うようでごめんなさい。全ては状況で判断します。俺は、ありのままの日常を過ごしたいので、政府や組織に協力します。でも、大切な日常が脅かされるのなら、俺は敵となる相手に容赦はしません」
「……ですよね。どんな状況でも敵対はしないと誓っておきます。判断はお任せいたしますので」

 秋兎の真剣な眼差しと声色で、桜は嘘偽りないことを悟る。

「それでは、本日は以上になります。いろんな話を聴かせていただき、ありがとうございました」
「こちらこそご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ありませんでした」
「正直、上の人間がどう判断を下すかによります。ですが、さすがに脳なしではないと思うのでご安心ください」
「そう祈るわかりですね」
「それで、今後の予定なのですが。ある程度の自由行動をとっていただいて大丈夫です。もしかしたら急用に対応していただく可能性もありますので、そのときはよろしくお願いします」
「わかりました」

 互いに頭を下げ、部屋を退出した。
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