愛、信じますか?

椿紅颯

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抱き枕にしては最高だ

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 鼓膜を叩くアラーム音が部屋に鳴り響く。寝室に鳴り響く高音は正直不快だ。
 ふかふかだが体が沈み過ぎない心地良いベッド。心地良い朝に、すべすべもちもちの手触り。つい夢のような感触を味わいたく抱き寄せた。

「――はわ……ふ、ふににゃっ」

 聞き馴れた声。腕の中に感じる体温。体の中に染みる甘い匂い。
 目を開ける前、夢見心地の気分からは完全に抜けた。サーッと血の気が引ける中、ゆっくりと目を開いた。
 もぞもぞと動く正体――リサ。

「あー、リサ……おはよう」
「おふぁよ、ふみや」

 離れるどころか、挨拶を返すと俺の胸に顔を埋め始めた。俺が拘束を緩めると、逆にリサが俺の背中に腕を回し始めた。

「リ、リサ。朝だぞ、起きるぞ」

 返事は無かったが、大きく数回深呼吸したリサは俺から離れてくれた。
 アラームは気づけば止まっていて、俺達は起き上がった。

「ちょっと朝風呂にする。その間に朝食の準備お願い」
「はいはーい。でも、昨日入ったよね? それに、朝風呂って入っていたっけ?」
「い、いーんだよ。きょ、今日は何となく入りたくなっただけ!」

 一体誰のせいだと思ってるんだ。お、俺だって男だぞ。あんな状況で正気を保ってた方ことを褒めてほしい。
 洗濯物が増えてしまうが仕方がない。洗濯機を回す時間は無いからリサに頼もう。

 洗濯機に服を投げ入れ、風呂場の扉に手を掛けた。

 ◇◇◇

「ふぅ、朝に飲むホットミルク美味しいなあ」
「ふふっ、文哉って本当に好きだよね~。ついでに焼き立てパンのマーガリン塗りとか、ね」
「なんてったって大好物だからな。リサもその内気に入ってるよ」

 そんなこんなしているうちに出勤の時間になってしまった。食器を水道まで運び、俺は玄関に腰を落とし、靴を履いていた。

「文哉ー、鞄忘れてるよー」
「あー、ほんとだ。ありがとう」
「あーっ、ほら、ネクタイ曲がってるよ」

 俺は立ち上がり、リサから鞄を受け取る。その流れで、リサは崩れたネクタイに手を掛け整えてくれた。

「……ありがと」
「ふふっ、なんだか新婚さんみたいだねーっ」
「なっ」
「冗談冗談、ささっ、いってらっしゃーい」

 リサにくるりと体を半回転させられ、背中を押された。
 流れるような一時だったが、俺の顔は熱く火照っていた。リサの顔は見えなかったが、よくもまあ恥じらいなくあんなセリフが言えたもんだ。本当にこっちの気も知らないで。
 だけど、新しい生活に何一つ不安はなく、出勤時間も心が躍る。
 返ったら何をしようか。リサと何を話そうか。今から楽しみで仕方がない。
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