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第2章 二周目
第12話 1日限りの恋人デートを
しおりを挟む結局、押し切られる形でジークと出掛けることになったわたくし。場所は神聖ミカエル帝国の中でも、景観の良いことで知られるエーデ海岸。
高校二年生のジークは、身長もスラリと伸びて、すでに二十歳のジークを彷彿とさせるイケメンへと成長していた。稀代の美青年と呼ばれるのはこの二年後くらいだけど、今でも十分カッコいい。
わたくしはというと、昨夜フィヨルドと喧嘩してしまったこともあって、涙で目が赤く腫れていた。この顔ではあまり堂々と歩けないため、普段はかけない眼鏡スタイルに。
本当は『海が見えるカフェテラス』でのんびりとお話しながら、過ごす予定だったらしい。しかし現実は、カフェ奥の半個室席で人目を気にしながらこそこそと、オムライスを頂いている。キノコのデミグラスソースが、なかなか美味しいですわ。
「オムライスは美味しいけど、フィヨルドが今頃修学旅行クエストで、どうしているのか考えると。わたくし、わたくし……! 他の女子生徒がフィヨルドと……あぁ気持ちが荒ぶって!」
「ヒルデ、落ち着くんだ。はぁ……参ったな。これじゃあ、恋愛で悩む妹の面倒を見るお兄さんだよ。まったく」
食事が終わり、まぶたの腫れを確認するために、眼鏡を外して様子を見てもらう。
「うぅ……情けないですわ。お洒落で眼鏡を着用するならともかく、顔を隠すために着用するとは」
「ヒルデは、いつの間にか視力が低下していたんだね。普段はコンタクトだったんだ。眼鏡っ子も知的で素敵な要素だし、イメチェンも兼ねて検討してもいいんじゃないかな」
ジークは女の冒険者とばかりつるみ、ハーレム勇者として名を馳せ始めていた。
彼の好みの幅は広いため、知的な眼鏡っ子も攻略対象なのでしょう。さりげなくイメチェンも兼ねた眼鏡ポジを勧められますが、わたくしは眼鏡だと動きが鈍くなる体質なのです。
「ええ。別に眼鏡っ子でも良いのですけど、それほど眼鏡装着の動きに慣れていないのでコンタクトレンズなんですの。うぅ……まだわたくしの目蓋、腫れてます?」
「おやまぁ。昨日は随分と泣いたみたいだね。ほら、氷で冷やすといいよ」
「んっ。ありがとうですわ、ジーク」
一旦眼鏡を取って、わざわざ店員さんに氷を注文して作ってもらった『氷袋』で目蓋を冷やす。そのうち腫れも引くでしょうけど、これでは深窓の令嬢失格ですわ。
「ヒルデがそんなに寂しがり屋さんじゃ、フィヨルドだって自由に行動できないよ。女性はある程度、男に対して外に出ることを許すようにしなきゃね」
よくよく考えてみると、フィヨルドの修学旅行クエストはとっくに決まっていたこと。フィヨルド不在の間、わたくしが寂しくて騒がないように、ジークに面倒を見るように頼んだ可能性だってある。どうして、気がつかなかったのかしらわたくし。
「具体的に自由な動きとは、どのような活動なんですの。あと一年ちょっとで、大学デビューしてしまうフィヨルドの自由な活動とは?」
「えっ……僕がフィヨルド君に、計画を聞いたわけじゃないけど。例えば、大学の新歓コンパなんか百パーセント女子がいるだろうし、ゼミも女子がいるよね。就職先にだって若い女の人が、当然のようにいるだろうし」
「女がうじゃうじゃ……フィヨルドに。わたくし、堅実な結婚生活が送りたくて頑張っているのに。フィヨルドは浮気をするんですの!」
ゼーハーと、息切れしながら嫉妬と怒りをぶちまけるわたくしの背中を、ジークは優しくポンポンと撫でてくれた。完全に保護者ポジションになってくれているけど、彼は生来の女好き。ずっとは、保護者モードが続くはずもなく。
「……だからさ、ヒルデ。キミも少しだけ、広い世界に目を向けた方がいい。例えば、神殿のお告げが変化したらフィヨルドじゃなく、僕と結婚するようにと言われるかも知れない」
神殿のお告げがジークを選ぶなんて、まるで一周目と同じ展開を示唆するかのようなセリフ。
保護者モードの砕けた口調から一転、例の甘く低い乙女ゲーム顔負けのイケボで囁いたのち、わたくしの手を握りました。
(これは……! 恋愛の悩みを男友達に相談しているうちに、自然と相談相手に傾いていく定番パターン?)
「あの……ジーク?」
「試してみないか? 僕と1日限りの恋人デート。保護者ではなく恋人として……ねっ」
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