Re:二周目の公爵令嬢〜王子様と勇者様、どちらが運命の相手ですの?〜

星井ゆの花

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第2章 二周目

小国の王子フィヨルド目線:01

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 オレがルキアブルグ邸で下宿を始めて、数年が経ち高校二年生になった。婚約者のヒルデはちょっぴり焼きもち焼きだが、オレに一途で可愛らしい。最近は中学二年生にして発育もよく、すっかり女性らしくなってきて。無防備なパジャマ姿で会う時は目のやり場に困ることも。

 可愛いヒルデと順調な恋愛は、ふとしたところから崩れ始めた。聞くところによると、神殿のお告げでオレとヒルデはそれぞれ別の人と結婚した方が良い、との卦が出たという。

「如何なされますか、フィヨルド様。相手の女性はすでに乗る気で、フィヨルド様とのデートを楽しみにしているとか」

 自室で魔法の勉強をしていると、執事が急用だと言って報告に来た。困っているのか喜んでいるのか分からない曖昧な笑顔で、執事のニコラスがオレに指示を仰ぐ。

「デートって、まさか会う約束を取り付けてしまったのか?」
「ええ……申し上げにくいのですが、相手の女性というのは、フィヨルド様と同じ学園に通う同級生でして。次の修学旅行クエストで頼むから一度でいいから、フィヨルド様とデートしたいとか……」
「丁重にお断りしてくれよ。ヒルデとの縁談が駄目になったら、この家だって出て行かなきゃならない。ヒルデとは、学園内でも公認のカップルなんだ。評判を落とすような真似は、辞めてくれ」

 参ったな、神殿のヤツら金でも積まれたのか。もしくは、他の女をオレに与えてヒルデとの破局を促し、ヒルデにはジークと結婚させる気なのか。

「それが、相手の女性は元老院幹部のお嬢様でして。理由もなく引くような雰囲気では、ないのでございます」
「理由は、ヒルデに決まってるだろう! 馬鹿なんじゃないか、その女は。オレとヒルデは、年頃の男女が遊びで交際しているのとは訳が違う。オレは自分の国を背負って、この神聖ミカエル帝国に留学してきてるんだぞ! ヒルデだって公爵家のご令嬢として、オレとうまくやろうと必死なんだ。邪魔しないでくれっ」

 異国での暮らしだって最初の頃は気を揉んで仕方なかったのに、ここに来てまた妨害されるのか。

 そこまで考えてふと、自分の思考のおかしなところに気がつく。不思議なことにオレは何度も、このようなシチュエーションを体感している気がしてならない。
 正確にはやたらリアルな白昼夢を時折、見てしまうことがあるのだ。オレとヒルデが婚約契約書を届けようとすると、どうしても邪魔が入る。
 今回みたいに他の女を当てがわれるのだって、何度もあった気がする。そして、たいていは神殿側がオレの【女遊びが判明した】という理由で婚約者のポジションから外すのだ。

 結果、ヒルデはジークと婚約する羽目になるが……やはりこの組み合わせも何らかのアクシデントで、必ず二人は破局する。時に、喧嘩別れもあれば、死別の場合もある。

 けれど、ヒルデもジークも元気に生きているし、オレだってまだ女というものを抱いたことがない。

 いつか見た白昼夢のように、オレが他の女を抱いてしまって、ヒルデに死なれたらと考えると気が気じゃなかった。


 * * *


 お断りを入れてから数日すると、執事が再び元老院の娘とのデート話を持ちかけてきた。

「それが……お断りされるのなら、元老院側からルキアブルグ公爵を裏取引の疑惑で、失脚させることも出来るとの言付けが」
「何だって、完全に脅迫じゃないか……どうしてそこまで」
「フィヨルド様、一応相手が満足されるよう【お相手】されてみては、如何でしょうか。その……婚外子でも良いからお子様を授かりたいとのご要望で」

 例の白昼夢を思い出して、背筋がぞくっとする。オレは元老院のご令嬢に気に入られたばっかりに、半ば無理やり肉体関係を持たされてしまい。ヒルデは自殺未遂して、記憶に障害が出てしまう。結果、神殿はお告げとしてジークをヒルデの夫とするのだ。

「……断ってくれ、頼むから」
「すみません、フィヨルド様。お父上は国の借金を神聖ミカエル帝国の元老院に、肩代わりしてもらっていまして。フィヨルド様が、少しだけお気持ちを柔らかくしてくれれば……と。ですが、条件をのんでくだされば【ヒルデ様のご命だけは安全】かと」

「オレのお父様は、国は……オレを売ったのか……。頼むから、ヒルデにだけは手を出さないでくれっ。本当にオレは……彼女を、ヒルデを愛しているんだっ」

 結局、オレは【ヒルデの命を守るため】に、この条件をのんでしまう。

 他の男よりは幾らか信頼出来るジークに、ボディーガード役をお願いして。『ヒルデとデートして、彼女の心を慰めてくれ』と、自分がこれから犯す罪を懺悔しながら。

 そして、忌まわしい修学旅行クエストという名のデート当日を迎える。オレはどのようにして、元老院のご令嬢がオレに気が無くなるか、移動のバスの中で何度も頭で検討する。

 万が一何かがあった時のために、焚書コーナーから持ってきた書物を捲ると、【自分の貞操を守る雷の禁呪】が目についた。

「自分の貞操の危機に、自分の半径数メートルすべてに雷を落とす禁断の魔術。本当は女性用なんだろうけど、時代は変わったんだ。もう……オレに残された手段は、この禁呪しかない」
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