18 / 52
第18夜 隠者のカード
しおりを挟むシャルロットの魔法猫がオレにちょっかいを出してきたが、そのこと自体とりあえず言わないほうがいいのだろう……何があってもポーカーフェース。リー店長が言っていたのはこういうことが起こるからなのかもしれないな。
「リー老師が私のことも一緒に食事にって誘って下さったの……ご一緒させて頂きますわ」
シャルロットが金髪のポニーテールを揺らしてオレに近づいてきた。
魔法猫はアティファがペットセンターに連れて行ったので今のところひと安心だが……。
オレの隣の席に美少女シャルロットがちょこんと座った。まるでお人形さんが動いているかのようだ。
『血を引き継ぐのよ。シャルロットを抱いて子供を作り新しいランプの持ち主を作るの……』
シャルロットを抱いて子供を作り、新しいランプの持ち主を作る。
オレは魔法猫に言われたセリフを思い出してしまった。
そして、そのシャルロットが今オレのすぐ隣にいる。
透き通るような白い肌、年齢の割に大人びた表情、大きく可愛らしい目、頬はうっすらピンク色、ほんのり赤く艶めいた唇、女性らしいラインを描く清らかな胸……。
こんなキレイな女の子を抱くようになんて言われたら意識しちゃうじゃないか? あの猫何考えてやがるんだ?
「あの、ジロジロ見ないでくださる?」
シャルロットに視線を送り続けていたのが本人にもバレているようだ。
精霊セラが咳払いした。
「いや、あの猫結構デカイから肩にいつも乗せていて大変だろうなって……」
「あの子は私の大事な魔法猫ですの。大変とは思いませんわ!」
そうなんだ。
あの話すとナマイキな魔法猫を大事にしているとは……。
するとリー店長が用事を片付けたのかヘラヘラした表情で席に着いた。
「いやあ、なんか猫ちゃん迷子になってたみたいだねえ。無事保護できて良かったよ」
リー店長は本当のことはシャルロットに言うつもりはないようだ。
「私の可愛い魔法猫を保護していただき感謝していますわ」
私の可愛い魔法猫……。
あの魔法猫は私の可愛いシャルロットって言っていたような……猫からするとシャルロットの面倒を見ている気になっているんだろう。実は猫がランプの精霊らしいから長生きしてそうだし。
アティファがペットセンターの用事を終えて席に着いた。
リー店長がディナーセットを注文し、夕食は穏やかに進んだが……。
オレがステーキを食べ終わり、デザートのジェラートアイスを食べようとした時に占い師が近づいてきた。
「みなさんこんばんは。私、このレストランで期間限定でタロット占いをしております。どうですか? 恋占いか何かしてみては?」
占い師の男は全身黒づくめのローブを着て、水晶玉を手に持ち、ピエロのようなメイクをしている。髪の色はブラウンだ。
「悪いけど今アイスを食べているんで」
オレがやんわり断るのを聞いていなかったのか、もしくは強引なのが手法なのかタロットを引き勝手に占いをし始めた。
「おやまあ。大変ですね……このカードは」
何がどう大変なのか、こちらから聞かなくても解説してくれるようだ。
「まず、あなた自身について……隠者のカードです。このカードは暗い中を隠者の男がランプを手に持ちランプの灯りだけを頼りに生きていくとても孤独なカードです。ランプだけでは灯りが少ない……そう思いませんか?」
よりによってランプかよ。
オレは確かに境界ランプの持ち主だがそれしか頼るものがないわけじゃない。
セラやルル、リー店長、最近ではアティファも仲間になった。
ランプが無くても大丈夫……。
そう考えたかったが、それらの仲間は皆境界ランプで繋がっていて確かにランプだけが頼りの状態であることには変わらない気がした。
「そしてこれからのあなたの人生……恋人のカード……不幸なことに逆位置ですね。三角関係や移り気、欲に駆られないように注意が必要ですよ」
確かに今のオレはセラを可愛く思いながらシャルロットの事をそういう目で見つつありとても移り気な……ってだからと言ってすごく恋愛に夢中になっているわけでもないし、キレイな女の子を見てキレイと思う感情は正常なハズだ。
「あいにくオレ恋人いないんで……」
微妙に当たっているタロット占いに嫌気がさしつつも、オレはポーカーフェースを貫くことにした。
「これからドラマティックな恋が始まるのでしょう! もう出会っている人かもしれませんが注意が必要ですよ!お代はお気持ち程度で結構です」
やっぱり金を取るのか……。
リー店長がヘラヘラしながら
「千夜くんなんか当たっているっぽくて嫌な占いだったねえ」
とかなんとかいいながら占い師に代金を渡した。
すると占い師は多めの代金に喜び「おお! こんなに……ではサービスで新品のタロットカードセットを差し上げましょう。22枚の大アルカナで構成されたシンプルなカードセットですが何かの役には立つハズです。……頑張ってくださいね響木千夜(ひびきせんや)さん」
最後に耳元でオレの名前を呼んで占い師の男は去って行った。
「何かの役立つってさ! 千夜君、君もそろそろ魔法を覚える時期なのかもね! 頑張ってカード魔法覚えてね!」
カード魔法……オレは不思議と手に馴染むタロットカードセットをぼんやり眺めた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
ブックマーク・評価、宜しくお願いします。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる