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第34夜 夜明けのリミニス
しおりを挟む「精霊セラ……お前のチカラを貸してくれ。マスター千夜が命ずる。精霊セラよ、悪魔ゴエティアの完全抹消に協力せよ!」
「かしこまりました、マスター千夜!」
境界ランプの魔導師アブラカタブルさんと彼の身体を乗っ取っていた蛇の悪魔ゴエティアを分離させることに成功した。
もう迷う理由はない。
オレとセラは全力で黒い蛇の悪魔ゴエティアに攻撃を放った。
「グアアアアアアアアア!」
悪魔ゴエティアは断末魔をあげて跡形もなく消滅した。
カランカラン……。
アブラカタブルさんの境界ランプがゴエティアの消滅した場所から転げ落ちる。
それまで黒ずんでいた境界ランプだったが悪魔ゴエティアから解放され元の輝きを取り戻していた。
するとランプの中から白い蛇が1匹出てきてアブラカタブルさんの方に向かって行った。
飼い主のアブラカタブルさんの無事を確認したいらしい。
白蛇がオレを見てシューシュー何か訴えている。
「キュー! 白蛇さんはアブラカタブルさんを助けてって言ってるキュ」
ミニドラゴンのルルには白蛇の言葉が分かるようだ。
精霊王から出された第二テストの内容は相手の境界ランプを奪うこと。
だがオレは第二テストの内容を無視して、このランプをかろうじて呼吸しているアブラカタブルさんに握らせた。
ランプの魔力でアブラカタブルさんの命が助かるように……。
いつの間にかオレの隣にいたリー店長が
「千夜君のそういうところ魔導師としては甘いけど人間としては結構いいと思うよ」
と言ってクスリと笑った。
その後、ずっとオレ達の様子を見張っていたという監視者メシエがやってきてアブラカタブルさんを病院に運んで行った。
一命を取り留めたものの、しばらく魔導師としては活動できないそうだ。
するとどこからともなく精霊の声が聞こえる。
『テスト第二段階クリア。響木千夜(ひびきせんや)を精霊王の元に強制送還します』
オレは前回のテストと同じように精霊のチカラで強制送還されたが、以前と異なり場所は封鎖されていた精霊王の宮殿だった。
入口の門番に案内され、会議用の部屋に通される。
先に集まっていた他の境界ランプの持ち主達が何やら深刻そうな面持ちで揃っている。
「あっ! 千夜君……精霊王ったら酷いのよ。私たちユミル君の境界ランプを奪ってテスト担当者にちゃんと提出したのにいきなり呼び出しがかかって……」
「お姉ちゃん、落ち着いて」
双子踊り子姉妹の朱那(しゅな)と白亜(はくあ)だ。
ランプを奪われたハズのユミル少年の手元にはしっかりと境界ランプが握られている。
「ボクって運が良いなあ」
とかなんとか言いながら双子姉妹の姉が悔しがっているのを笑って見ている。
結局テストはあやふやになってしまったのだろうか?
チラリと人の輪を見ると魔導師貴族のシャルロットの姿があった。どうやらシャルロットは今回も無事だったようだ。相変わらず肩に例の紫色の魔法猫を乗せている。
みんなそれぞれ不満があるようだ。
すると注目を集めながら精霊王ガイアスがやって来た。
「ごほん! もう知っている者も多いと思うが、悪魔ゴエティア達が境界ランプを奪いに襲撃を仕掛けてくるようになってきた。ゴエティア達の狙いはかの有名なソロモン王の魂を冥界より連れもどし魔導王の玉座に返り咲かせることらしい……もしそんなことになればこの世界は悪魔達の支配下に置かれることとなる」
世界が悪魔達の支配下に置かれる……。
魔導王の玉座にはそんな支配力があったのか。
「今から数百年前にも同じように悪魔ゴエティア達が境界ランプを奪おうと反乱を起こしたことがあった。現状はその頃よりもっと酷いと予想される……そこで過去に消滅した魔導師組織を復活させたいと思う。もちろん優秀な魔導師であるキミ達にも協力願いたい」
過去に消滅した組織……?
するとリー店長がいつになく真剣な顔つきで精霊王ガイアスに尋ねた。
「あの、例の魔導師組織ってまさかあの組織をもう一度作るのですか?」
リー店長は不老不死の錬金魔導師と言われているだけあって例の組織について知っているようだ。
しばらく沈黙したのち、精霊王ガイアスが答える。
「作り直すと言った方が正しいかな……。諸君! 私精霊王ガイアスは消えた魔導師組織を継承した新たな魔導師組織を設立したいと思う。組織名は『夜明けのリミニス団』詳しくはまた明日お話しする。以上!」
リミニス……ラテン語で境界のという意味だ。
どうやらオレ達はいつの間にかランプを狙う悪魔ゴエティア達と本格的に戦うことになってしまったようだ。
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