神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜

星井ゆの花(星里有乃)

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外編 甦りのアッシュ

02

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 アッシュが、冥府の入り口である魂の深層を訪れるのは二度目。
 前回は、乗船切符待ちのために港に滞在していたため、ギルド訪問は初めてだ。
 目的地に着くまでのあいだ、ポックル君から魂の深層や冥府エリアの基本的な情報を教えてもらう。

「冥府ギルドは大きな墓標の隣にあるんだっけ。あの花畑と墓標の丘は、現代王都にも残っているな。古代の景観なんて殆ど消えていると思ったのに」

 古代ペルキセウス村をそのまま映した魂の深層は、文明が進んだアッシュの時代よりもモダンな景色だと感じていた。現代のペルキセウス王都の過去の姿と言われれば、なんとなく察せられる程度しか共通点が無いように見えた。

 しかし、改めて村の中を歩いていくと、一つだけ現代王都と合致する場所があった。それが、目的地の冥府ギルドに隣接する十字架の墓標だ。


「これは推測ですが、あの十字の墓標が現代との魂を行き来させるゲートの役割を果たしているのではないかと。基本、精霊鳩はあの墓標をポイントとして飛ぶようになっていますね」
「そっか。現代のギルドの場所は墓標とは離れてるから、冥府ギルドのオリジナルの拠点って感じだな」
「精霊管轄ですからまったく無関係というわけではありませんが、ギルド間の干渉は少なそうですね。甦りの試練はかなり特例のクエストです。所属してクエスト挑戦許可をもらいましょう」


 ギルドは墓標の丘を守るように建てられていて、その白い洋館はまるで墓守の館だとアッシュは直観的に思った。

「ようこそ、冥府のギルドセンターへ。私は受付担当のナディ。魂の照合を行います。石板に手をタッチしてください」

 ギルド案内人ナディは、エルフのように長い耳の金髪の女性で、古代の巫女風のオリエンタルなファッションが特徴的だ。エルフなのか精霊なのか、アッシュには判別つかないが、どちらにせよ人間の魂で無いことは確かである。

「この石板、古代文字だけど確かにオレの名前が浮かび上がった! ふうん、古代文明って一周巡ってハイテクなんだなぁ」
「ふふっ。最初は皆さん、驚かれますねぇ。クエストでカルマを解消して、来世を決める感じになります。将来の希望は残留とユグドラシル経由の転生のどちらでしょうか……9割は転生コースですが」

 ギルドクエストを一定数こなすと、カルマというものが解消されて、自動的に魂の行き先を選択するようだ。

 事実、ポックル君から聞いた話では、ここの人々は既に亡くなって魂として住み続けている人は少数。それでも長い年月のペルキセウス人の魂が暮らしているのだから、それなりの人口になるだろう。
 働いている精霊達は、精霊界からの派遣という形で冥府にいるようだ。

「お待ちください! ナディ様。ワタクシ、ポックルと申すものです。実は、アッシュ様はまだ完全には死んでいないのです」
「えぇっ? では、冥府奥地にもユグドラシルにも行かない感じですね」
「はい。人間としては死んだかも知れませんが、精霊体としては生きています。今回は、彼を精霊として甦らせる特別クエストを受けに来たのです。ここのギルド内にも古い伝承の書物が残っているはずです」

 来世のコース選択を問われるアッシュに気付き、同行者のポックル君がふわりとカウンターに降りたって、ギルドの受付嬢に事情を説明し始める。
 まるで元からカウンターに飾られているフクロウの置物のようだとアッシュは思ったが、ポックル君に悪いので敢えて口に出しては言わなかった。

 そもそも彼は自分のことを『精霊鳩』と自称している。ただ他の精霊鳩よりも、霊力過多で羽が収まりきらないだけだ……と。

「まぁ! 博識で有名なフクロウ精霊様がそう仰るなら、甦り出来るのでしょう。蔵書検索の石板に、キーワードを入力してしばらくお待ちください」
「クルックー! ナディ様、あの。ワタクシ、精霊鳩ですので! お間違いなく」
「うふふ。正体を隠していらっしゃるのですね」

(あれ、ポックル君。完全にフクロウ扱いじゃないか。しかも、あんまり相手にされていない?)

 フクロウ呼びされるのに慣れているのか、説明を諦めたのか。しぶしぶカウンターから専用席に移動するポックル君についていき、アッシュも大人しく呼ばれるのを待つ。
 しばらくすると、正真正銘、本物のフクロウ精霊がやって来た。

「フォフォフォ、似たような鳥型の精霊に頼まれては、このジジイもひと羽根脱がなくては。キミがアッシュ君だね? ここのギルドマスター、フクロウ精霊のフォロロウじゃ」

 フォロロウはおそらく結構なお年寄りだろう。ゆっくりとした喋りで、老眼なのかメガネをかけている。

「フォロロウさん、初めましてアッシュと言います。甦りの試練を受けに来ました」
「クルックー! これはこれは、お初にお目にかかります。フォロロウ様。ワタクシ、精霊鳩のポックルと申します。精霊鳩の伝書係を長年務めておりまして、アスガイア神殿勤務からペルキセウスに転勤して。流れに流れて、冥府までお使いに来ました」

 初対面の割に親しげで饒舌なポックル君だが、あまり他人とのコミュニケーションが得意でないアッシュからすると、お喋りなポックル君は頼もしい存在だ。鳥同士、会話が弾みやすいのだろう。

「おぉ! ポックルどのは、随分と遠くまで来たんですなぁ。ならば話しは早い。甦りの試練はアスガイア冥府にいる輪廻の蝶々を手に入れること。アッシュどのの奥方が生まれた場所じゃな!」
「アスガイアって、アメリアの故郷の。その冥府に……オレが?」
「うむ。蝶々は単純に蝶々ではなく、輪廻の元になる貴重な素材の比喩表現じゃ。蝶々の正体を考えることから、クエストじゃな。ちと難しいが、やれそうかな」

(それでも、オレは試練を越えてもう一度甦りたい。愛する妻、アメリアに会いたい……!)
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