公爵令嬢エイプリルは嘘がお嫌い〜断罪を告げてきた王太子様の嘘を暴いて差し上げましょう〜

星井ゆの花(星里有乃)

文字の大きさ
3 / 11

03

しおりを挟む
 フェナス王太子影武者入れ替え事件の鍵を握るエイプリル嬢への聴き取りは、王宮警察の特別室で行われた。

「すべては小さな嘘が積み重なって、やがて大きな虚言になっていったのですわ。まずは異母妹のイミテが、どのように虚言症になったのか聴いてくださいな」


 * * *


 公爵令嬢エイプリルが異母妹イミテと家族になったのは、エイプリルが十二歳になる誕生日の日だった。

「お誕生日おめでとうエイプリル。今日から新年度が始まり、みんな新生活を迎える。それでだな……実は父さんも新たな生活をしようと思うんだよ。今日からエイプリルにも、妹と新しいお母様が出来るんだよ」
「妹? 新しいお母様? それが今年のお父様からの誕生日プレゼントなの」
「うん、うん。そうだよ……良い子だね、エイプリル。イザベラ、イミテ……入って来なさい」

 エイプリルの誕生日パーティーのために美しく飾られた部屋だったが、イミテは部屋に入ってくるや否や、『私とママのために、こんな綺麗な飾りをしてくれてありがとうパパ!』と、部屋中に響くような大きな声ではしゃいだ。
 イミテの気持ちを父親が汲み取り、いつの間にかエイプリルの誕生日パーティーは、後妻イザベラと異母妹イミテの歓迎パーティーに変更されていた。


「えぇと……初めましてイミテ。随分と、お父様に懐くのが早いのね。まるでもう本当の家族みたい」
「はぁ? 何言ってるのよ、元々私とパパは実の親子だもん。なつく懐かないの問題じゃないわ」
「元々、実の親子……?」

 イミテとエイプリルの年齢差はたったの一歳で、イミテは長いこと愛人イザベラの子というポジションだった。が、エイプリルの母親が不可解な事故で帰らぬ人となり、後妻としてイミテの母の公爵家入りが認められたため、屋敷で同居する羽目になったのだ。

 そのようなことの真相を知らぬはエイプリルだけで、家庭の事情をまったく聴かされていなかったエイプリルをイミテは心の奥底から馬鹿にした。

「ふぅん……なぁんにも知らないで、お姉様はぬくぬくとこのお屋敷で贅沢に暮らしていたのね。ふんっ……まぁいいわ。私が世間に知らずのお姉様に世間の厳しさを教えてあ・げ・る! はい、私からのプレゼントよ、可愛い襟巻きトカゲの赤ちゃん」

 小さなカゴに入れられたその生き物は、確かに襟巻きトカゲと言えばそのように見える。爬虫類をペットにするのは珍しいが、小さなドラゴンのようで可愛いと積極的に飼いたがる魔法使いもチラホラいる。
 エイプリルは特別襟巻きトカゲに憧れているわけではないが、嫌というわけでもなかったので思い切ってそのペットを受け取ることにした。

「トカゲさん? 初めて飼うけど可愛がるわね、ありがとう……。えっきゃあ! 何よこれ、魔物の幼生じゃない。危ないわ……早く、山に返さないと」
「キャハハ! 今時の子供は、襟巻きトカゲと魔物の幼生の区別くらい一瞬でつくわよ。意外とお姉様って魔力も知識も少ないのね」
「もうっ。まだ子どもの魔物だからいいものを、大きくなったら危険だわ。それをこんな悪戯に使うなんて……」

 エイプリルが注意をしても、イミテは聴く耳すら持たない。それどころか、公爵令嬢という地位の割に横柄さがなく真面目なエイプリルを、完全に下に見るようになった。

「だって、今日はエイプリル・フールだもん! せっかくエイプリル・フールの日に生まれているのに、そんなんじゃ騙されるだけの人生になっちゃうわよお姉様! キャハハッ」


 そして、イミテはエイプリルに対してたとえその日がエイプリル・フールではなくても、たわいもない嘘をついて揶揄うようになっていく。最初は、思春期特有の虚言の一種だと周囲の人間も受け流していたが、フェナス王太子の影武者との出会いがイミテを変えてしまう。


 * * *


「あれっ……フェナス王太子って、昨日あんなに高熱を出していたからの今日は学校お休みだと思っていたのに。ちゃんと出席しているのね。まぁ上級生は教室も違うし、見間違いかなぁ」

 きっかけは、些細なことだった。
 異母妹イミテが中学校に進学して来た年の春のことだ。一歳ずつ年齢が違うイミテ、エイプリル、フェナスがこの年だけは同じ中学校に通う。そのため、学校の後輩となるイミテをフェナス王太子にも頻繁に合わせるように周囲が仕向けていたのだ。
 この日……本物のフェナス王太子は前日に高熱を出していて、婚約者であるエイプリルとのお茶会をキャンセルしていた。招かれて、エイプリルにくっついて王宮に遊びにいったイミテは、話の流れで異母姉と共にフェナス王太子のお見舞いをしたはずだ。

『こんなに酷い高熱じゃ、明日の学校は休まねばなりませんな』
『けど、公務で出席日数だってギリギリなのにこれ以上休むのは……』
『仕方がないが、彼を呼んで……』


 フェナス王太子の教育係達が、ヒソヒソと何やら相談していたことをイミテは思い出した。フェナス王太子が高熱を出すと呼ばれる彼とは誰なのか、何となく気になってイミテは珍しくフェナス王太子に声をかけてみたいと考えた。

 運命の輪が、少しずつ廻り始めていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】その人が好きなんですね?なるほど。愚かな人、あなたには本当に何も見えていないんですね。

新川ねこ
恋愛
ざまぁありの令嬢もの短編集です。 1作品数話(5000文字程度)の予定です。

醜くなった私をあっさり捨てた王太子と彼と婚約するために一番美しくなろうとした双子の妹と頼りない両親に復讐します

珠宮さくら
恋愛
アデライン・マルティネスは、エイベル国でも、他の国でも美しい令嬢として有名になっていた。その噂には色々と尾ひれがついていたが、美しさを利用して、子息を誘惑しては婚約を台無しにするとある一定の人たちに思われていた。 でも、実際の彼女はそんな令嬢ではなかった。そのことを一番理解してくれていて、想いあっていると思っていた相手が、実は一番酷かったことを思い知ることになった。 それを知ることになったきっかけは、妹によって美しい顔を台無しにされたことから始まるとは思いもしなかった。

【完結】婚約者の誕生日パーティーで婚約破棄されました~2ヶ月早く産まれただけでババアと言う人なんて私だって御断りです~

山葵
恋愛
プライム伯爵令嬢のカレンには婚約者がいた。 ラングラン侯爵家の嫡男ガイラルト様だ。 ガイラルト様は、私との婚約に不服だった。 私の方が1学年上なのと、顔が好みではないらしい。 私だって、そんな不満を顔に出してくる婚約者なんて嫌だ。 相手が侯爵家でなければ、お父様に頼んで縁談を断って貰っていた。 そんな彼が誕生日パーティーで婚約破棄すると言ってきた。 勿論、大歓迎だ!!

婚約破棄を迫られました。私は利用されただけのようです。

マルローネ
恋愛
「君はもう必要ない。シルマ、私と別れてもらおうか」 婚約者のルギス侯爵令息はシルマ令嬢に婚約破棄を迫った。一方的なことで反対するシルマだったがルギスは聞く耳を持たずに……。

婚約破棄された令嬢は、それでも幸せな未来を描く

瑞紀
恋愛
伯爵の愛人の連れ子であるアイリスは、名ばかりの伯爵令嬢の地位を与えられていたが、長年冷遇され続けていた。ある日の夜会で身に覚えのない婚約破棄を受けた彼女。婚約者が横に連れているのは義妹のヒーリーヌだった。 しかし、物語はここから急速に動き始める……? ざまぁ有の婚約破棄もの。初挑戦ですが、お楽しみいただけると幸いです。 予定通り10/18に完結しました。 ※HOTランキング9位、恋愛15位、小説16位、24hポイント10万↑、お気に入り1000↑、感想などなどありがとうございます。初めて見る数字に戸惑いつつ喜んでおります。 ※続編?後日談?が完成しましたのでお知らせ致します。 婚約破棄された令嬢は、隣国の皇女になりました。(https://www.alphapolis.co.jp/novel/737101674/301558993)

婚約破棄ですか。ゲームみたいに上手くはいきませんよ?

ゆるり
恋愛
公爵令嬢スカーレットは婚約者を紹介された時に前世を思い出した。そして、この世界が前世での乙女ゲームの世界に似ていることに気付く。シナリオなんて気にせず生きていくことを決めたが、学園にヒロイン気取りの少女が入学してきたことで、スカーレットの運命が変わっていく。全6話予定

婚約破棄からの復讐~私を捨てたことを後悔してください

satomi
恋愛
私、公爵令嬢のフィオナ=バークレイはアールディクス王国の第2王子、ルード様と婚約をしていましたが、かなりの大規模な夜会で婚約破棄を宣言されました。ルード様の母君(ご実家?)が切望しての婚約だったはずですが?その夜会で、私はキョウディッシュ王国の王太子殿下から婚約を打診されました。 私としては、婚約を破棄された時点でキズモノとなったわけで、隣国王太子殿下からの婚約話は魅力的です。さらに、王太子殿下は私がルード殿下に復讐する手助けをしてくれるようで…

双子の片割れと母に酷いことを言われて傷つきましたが、理解してくれる人と婚約できたはずが、利用価値があったから優しくしてくれたようです

珠宮さくら
恋愛
ベルティーユ・バランドは、よく転ぶことで双子の片割れや母にドジな子供だと思われていた。 でも、それが病気のせいだとわかってから、両親が離婚して片割れとの縁も切れたことで、理解してくれる人と婚約して幸せになるはずだったのだが、そうはならなかった。 理解していると思っていたのにそうではなかったのだ。双子の片割れや母より、わかってくれていると思っていたのも、勘違いしていただけのようだ。

処理中です...