朱の緊縛

𝓐.女装きつね

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パラドックス

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 雑居ビルの六階、一番奥の黒地の看板。会員制と書かれている黒い扉。その装飾された朱色のドアハンドルに手をかける。

 ここか……さて、拝見といこうか。

 夏稀と優のノートを読む限り疑惑はやはりここだ、私は早速脚を向けた。

 扉を引くと同時に飛び込んだ朱い照明に一瞬目眩を覚える、まるで異世界へ入ったようだ。カウンターの中から篝さんは私の顔を不思議そうに見ている。他店からの紹介だと告げるとようやくカウンターに案内された。夏稀達から会員制と聞いているのだからその位の言葉は用意してきたさ。

 店内に脚を入れカウンターテーブルに置かれたオシボリの前に腰を下ろす。よし、とりあえず入れたか……げっ、

「聞いてくれよぉ篝さぁんっ、エクセル出来ないんだぜ俺の部下。ったくよぉー、亀山ぁ今度教えてやってくれよぉ」

「おっ、じゃぁじゃあ今日は伊丹さんのオゴりですか?」

「うぉほん……さ、さぁ飲むかぁ」

 な、夏稀のやろぅ……だぁからノートに全部書けって言ったじゃねーかよぉもぉ

「あららっ、こちら綺麗なお姉さんっ、初めましてぇ」

 カウンターで隣りに座っていた伊丹さんが話掛けてきた。やべぇ、絶っ対今の笑顔ひきつったぞ私ぃ。んっ、ていうか覚えていないのか? ラッキー。

「お飲み物はいかがなさいましょうか?」

 いつもならウイスキーのロックなんだがな、今日は可愛いく上品にって感じにしておくかぁ。私は素人っぽく軽めで甘めのヤツとリクエストをした。

「お姉さんはココ初めて? お名前は? ひっくっ」

 か、完璧に酔ってるな伊丹さん。名前かぁ、夏稀の話しに乗るのなら篝さんに本名は言わない方がいいのだろうな。しっかし、言霊ねぇ……まるで私の受け売りじゃねーかよ夏稀のヤツっ。あぁ、んで端に座っているのが亀山さん、隣の女性がピコさんか、きっと。

「あぁ、えぇぇーっと工藤くどうです」

「えぇーと工藤。さぁえっくどーっ……ぷっ」

主様ぬしさま、今のはあまりおもしろくないですわよ」

「いっ、言いたくなるじゃんっ、だってさぁ」

 駄洒落らしい事を呟いた亀山さんをピコさんが冷たく一喝した。い、いかんっ、吹き出す所だったぞぉ。たしかに面白い店だな、これは。そんな雰囲気を堪能していると目の前のコースターに篝さんが朱いお酒を差し出した。店内の照明にそれは朱とも漆黒とも取れる輝きを反射させている。

 レッド・アイか。まぁ、夏らしい感じだな。

 しかし口元に寄せた時、するりとグラスは手元から離れた。いや、わざとグラスを滑らしテーブルに落としたのだ、それは朱い照明に光りながら砕け散った。

「あぁっ、す、すみませんっ……少し酔っているようで私」

「いえいえ、おケガとかはありませんでしたか?」

 渡されたおしぼりでカウンターのアルコールを拭いながら口内に残っている味覚を確かめた……ん……これって。

「は、はい。本当にごめんなさいっ……あのぉ、やっぱりウイスキーのロックでお願いします」

 そうか、最初っからやってくれるじゃねーかっ。これは遊んでいられないな……しかし随分な結界……パラドックスだな、気を抜くと持っていかれそうだ。篝とやら……覗かせてもらうぞ、お前の地獄の淵を。見ていろよ、その余裕顔剥がしてやる。
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