ゆるゆる王様生活〜双子の溺愛でおかしくなりそう〜

琴音

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三章 イアサント王国の王として

12.王として僕は

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「エドガルド……何でセシリオはまだ生きている?」
「……申し訳ございません。アベラルド様」

 セシリオが生きているのもムカつくし、恐怖に震えているエドガルドの姿にもイライラが収まらず、執務机の上の物をザッと薙ぎ払った。ビクッとして萎縮しるならさっさと始末しろよ。隙なんぞそこら中だろ、クソが。

「まあいい。アルマニアとブリオニスの方はどうなっている?」
「は、はい、イスマエルとライムンドが暫定領主として赴任しました。両国の王は見せしめに斬首したと」
「フン、そっちは予定通りか」
「はい……」

 おずおずと報告ですとエドガルドは話し始めた。

「二国は取り敢えず予定通りに我が国に完全に吸収致しました。現在デメテリオ団長率いる王国軍がカベサス王国を攻めておりますが戦況は芳しくありません」
「で?なんと言っているデメテリオは」

 手を震わせ手元の紙を読む。

「あちらの戦力、魔力共に高くこちらの兵士の被害が甚大にて立て直しを提案して来ています」

 俺は鼻で笑い、

「ほほう、自分の能力不足を向こうのせいか。そのまま果てろと伝えろ」
「は?見捨てるので?」
「言い訳するやつなど要らぬ」

 俺はドサッと椅子に座り睨んだ。

「あそこを取らねば先の侵攻は出来ぬだろう?二国の騎士団連れて攻め落とせと国に残っている騎士団長に伝えろ」
「はい」

 こいつ見てると本当にイライラする。

「もう!いい下がれ!」
「はい」

 私は第二皇子アベラルドの部屋を出た。もうこの国は終わる。ドナシアンは既に国の体裁をしてはいないんだ。民は飢え略奪、暴力何でも有りで殺害され放置の者の死臭と汚物のすえた臭いに溢れ無法者が跋扈ばっこしている。

 隣国も侵略して手には入れたが同じようなものだ。王の斬首で二国とも反乱が起き収集がつかない。行った貴族は見ないふりで市井で攫った者を犯し面白半分に殺害、窓から捨てるなんてしているらしい。もうこの国はこの世の地獄だ。何故この様な……

 いや、分かっていたんだ。先代が二月前に身罷った。それ以降酷くなっていったが元々先代の王は国民なんて見ていなくて気に入らなければ片っ端から粛清を繰り返す蛮族だった。お陰で貴族は少なくなり土地は管理しきれず、当然戦と侵略で人は減り続けている。仕方なく近隣から獣人すら攫っても人は足りず……その上近衛騎士団すら見捨てた次期王予定のアベラルド様、セシリオ様はそれ以上のクズだ。

 もう私は耐えられない………

「ルチアーノ様!」
「あれ?サミュエル珍しいね。なに?」
「申し訳ございませんが三人で来て頂けますか?」
「なんで?」

 来てくれとしか言わないサミュエルにまぁと三人で騎士団の鍛錬場に来た。変な所に呼び出すなあと思いながら向かった。鍛錬場には騎士に囲まれた見た事ない服の三人で一人は子供。魔法で縛られていた。

「なんなの?誰?」

 二人を見上げると険しい顔。

「ドナシアンの貴族だ」

 ジュスランは吐き捨てるように言った。ではとサミュエルが僕に説明してくれた。彼らはドナシアンの第二皇子の側近エドガルドと妻、子供だそうで、騎獣でここまで逃げて来たそう。

 話によると国は崩壊していると言って差し支えないくらい荒廃。隣国も侵略はしたけど反乱により同じ様になっているそうだ。現在侵攻中のカベサス王国も騎士団を見捨てたので全滅でしょうと。追加もこれからするけど無駄に終わるはずと。

 こちらを見たドナシアン貴族は話しかけて来た。

「その赤い髪……ルチアーノ陛下か!」
「ああ」
「我らをこの国で保護を!私はあなた方と同じ王族縁の一族です!どうか!」

 ジュスランとステファヌが見た事ない苦々しく見下すような顔をした。

「どの口が言っている?自分たちが好きにやった結果だろう?」
「グッ……はい。確かに言い訳は出来ません。間違いだったのです……怖くて何も言えず従った。ですがもう私たち家臣の力ではどうにも……」

 フンと鼻を鳴らしステファヌは、

「国がそんなになるまで放置したのはお前らだろ?知らねえよ」
「ですが!あの様な強権政治の王に何が言えるのですか?言ったらその場で切り捨てられます!」
「だから放置か、フン、いい服着て艶もいいな?民は飢えて死にかけてるのにさ?」
「グッ……」

 父上……とエドガルドに妻と子供が抱きついた。

「言い訳は致しません!どうかこの国に置いて下さいませ!貴族でなくていいのです!どうか!」

 頭を床に擦り付けて懇願する。二人も一緒に頭を擦り付けた。僕は数歩歩み出て目の前に立ち冷たい目で見下ろした。

「出来ないよ。君たちがここに来た事でイアサントは更に危険が増した。分かってる?」
「それは……」

 僕はオーブの中の二人を思った。自分の血が憎い、この身体が汚らわしくて嫌だとイアサントとアデラールの哀しそうな顔が浮び奥歯を噛み締めた。

「君たちに危害は加えない。付き合いのある第三国に行ってもらう。出国手続きが済んだら送っていくからそこで暮らして。ここには置けないよ」

 顔を上げ不思議そうに問う。

「何故?同じ王族由来の……」
「だからだよ。ここにいてもらう事でドナシアンからより敵視され危険は増える。それに僕たちはイアサントたちにした仕打ちは忘れていない」

 いや……そんな過去を言われてもと。

「君たちには過去かもしれない。だけどこの国の者にとって過去ではないんだ。彼らはこの国の英雄で神として祀られるくらい慕われている国なんだよ」

 そんな彼らの意思を継いで穏やかな国を作ってきたのがこの国の王族だ。君たちは招かざる客でしかない。ドナシアンなど知らない国に送るから安心してと言う。

「嫌だ!陛下ここに!この国に是非!」

 その言葉を無視して、

「サミュエル手続きをお願いね。乱暴とかしちゃだめだからね?」
「はい、分かっております。客人としてね」
「それと、ベトナージュの王に感謝をしっかり伝えてね!贈り物も!」

 はいと微笑む騎士に連れて行けと声を掛けると騎士たちが引きずるように連れて行った。その間喚いて何故だ!ここまで来たのに!ルチアーノ陛下ああ!と三人は口々に保護してくれと叫んだ。二人は知らんがなと吐き捨てた。

「ありがとうございました。これでよろしいので?」
「うん。ここには置けないよ」

 何だか辛そうだねサミュエル。

「子供が可哀想になった?」
「あはは……同じ年頃の子がおりましてな……」
「僕も親だから分かるよ。だけど無理だ。僕はあの国の人を許せない」

 存じております私が軽率でした、申し訳ございませんと胸に手を置き頭を下げた。

「うん。じゃあお願いね」

 僕はそう言うと双子と鍛錬場を後にした。すると側近たちはもう仕事はいいから部屋に戻れと。三人とも顔が悪すぎるからいらないと言われてしまった。ごめん……

 部屋に戻るとイレールがお茶と僕の好きなお菓子を用意して待っていた。何も言わずお茶を出して下がりますと控室に。僕らはお茶を飲みながら無言。

「大丈夫だ。心配するなよ」
「そうだぞ?今回お願い予定のベドナージュ王国は魔力多めの穏やかでなおかつ厳しい規律の国だ。殺しはしないが法を破ると過酷な肉体労働などの厳罰がある」
「見た目はベルンハルト見たいなきれいな王だけどねユーリウス王は。だけど怖いんだよ。合理主義で損が嫌いと有名だ」
「うん……」

 確かに習ったよ。エヴァリス王国の奥の黒い森を抜け山脈を超えたとても遠い南側の国。騎獣でも数日掛かる遠く大きな国で共和国制を取る帝国だ。獣人の国だけど何故かあそこの獣人は魔法が使える。僕らの魔法とは違う系統の魔法なのかよくわからないんだ。人族とは余り付き合いたくないというのを感じるけどイアサントとは仲良くしてるそうだ。

 今のユーリウス王は黒ヒョウ。黒髪に茶の瞳手足の長い優美な方なんだって。いつか落ち着いたら会ってみたいね。

「お前は本当に王になったなぁ……」
「確かにな。あんな場面で怯えもせず言い切ってさ」
「そう?いつもと変わらないでしょ?」

 ふふっと二人にギュッと抱き締められた。

「そう、いつも通り。王様だ」
「もう誰が見ても王様だよ。あの小さなオーブ貰ってからお前は変わったよ」

 そうかな?あのオーブは僕の寝室の棚に防壁張って置いている。僕以外は触ることも出来ないように。貰った時はふ~んと思ってたんだよ。だけど毎日見てる内に重みは増して行った。大勢の人を一気に殲滅、殺せる宝玉なんだよ。人の命の重さに身震いがしたんだ。クソみたいな人でも命なんだよ……

「ほらお前の好きなクッキーだ。食え」
「うん」

 もぐもぐ……木の実がたくさんで香ばしい……

「美味いか?」
「うん」
「コレも好きだろ?」
「うん」

 ぶどうの乗ってる小さなタルト。緑のと紫のが切ってある……もぐもぐ……飲み込むと口に入れようとする。

「自分で食べるよ」
「ふふっやっと顔が戻った」

 え?ごめん。

「あ~ん!入れて!」
「おう!飯食えるか?」
「ん~……やめとくか」
「後一個ね。ほらいちごのケーキだ」

 もぐもぐ……お茶を……ゴクゴク。

「俺たちがいつでも側にいる」
「頼ってくれ。俺たちはお前の力になるから」
「ありがとう。ジュスラン、ステファヌ」

 二人に抱かれながらこの先の不安を考えないようにした。無理だけど温かな胸は気持ちよかった。



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