男娼からの成り上がり 〜溺愛されて流されて それでも僕は前を向く〜

琴音

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六章 そして行き着いた

2 三貴族の訪問

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 客間に入るとドナト、ガビノ、セベリノのおじさん三人がニコニコと微笑み立ち上がった。

「キャル様、こんな朝早くにお時間を頂き恐悦至極にございます」
「いや構わない。それで何用だ?」

 僕は三人の向かいに座り、手元の書類を手に取った。代表で私がとドナトが説明する。

「本日はその書類の内容をお願いに参上いたしました。まずはお読み下さいませ」
「うん」

 内容は……うーん。うーん??父様なにしてるんだかなあ。

「ふーん父上がやりたい放題だな」
「ええ。ですが辺境の貧乏領地は潤いました。災害対策、奴隷商の暗躍をいち早く止めてくださった。感謝しきれません」
「うん」

 灌漑工事かんがいこうじを始め、農地の開拓、改良に新たな作物、医療の向上、街の整備……おいおい全部じゃねえか。

「あの……これ土地の歴史を壊してない?」
「あはは。そこはあちらの魔法使いは考慮してくれてますよ。雰囲気はそのまま真新しく洗練されたといいますか」
「ふーんならいいけど」

 文化の破壊は違うと僕も思う。ここはモンタネール王国で、彼らの先祖が大切に育んできた土地なのだから。

「それでですね。その書類は報告ですので、後でゆっくりとご覧下さいませ」
「うん。これが本題ではないと?」

 それに関わると言えばそうなんですがと、三人はゴニョゴニョ。

「あの……あはは……お前が言えよ」
「え?俺がか」
「セビリノでもいい」
「私?いやいや……ここはあなたが言うって決めただろ」
「いや、誰が言ってもいいじゃないか!」

 ガゼノとセビリノはビクッとしてもじもじ。おじさんのもじもじはかわいくないぞ。

「言ってくれないと分からないけど?」
「はあ……では」

 ドナトは咳払いして僕をみると……ポッと赤くなった。はあ?

「キャル様は美男ですよね。惚れ惚れする美しいお方だ」
「はあ、それはありがとう」
「それでですね……」

 彼の話によると、サーマリクの者が出入りするようになって民は浮足立ち、彼ら見たさに工事現場に詰め寄るようになったそうだ。

「彼らの美しい青い目と金色の髪。洗練された言動に……領内は獲物を狙うような者たちで溢れてます」
「それはまた……」

 サーマリクはナロス王国由来の外見が強く出ている国民性で、民は農民すら美しいのは確かだ。うちは多国籍の雑多な民族が混じり合って今に至るため、見た目も多様だ。目も髪も顔立ちすら違うし、肌の色はサーマリクより少し濃い。当然浅黒い民もいる。

「色白の美男が手際よく動いている姿は我らですら見惚れる始末」
「ふんふん」

 言いにくそうにしながら、額には大粒の汗を浮かべ、ドナトは続ける。

「それでですね。民の中にはあちらの職人と結婚する者が出てきました。あちらにお嫁や婿に行って幸せに暮らしてて、仕送りまでしてくる」
「うん。よかったね」

 それでですねともじもじ。早く言え!お前らのところの息子どもも惚れたんだろ!面倒臭えな。

「あなた方の息子、貴族の子弟が嫁や婿に行きたいと言い出したのか?」

 三人は深いため息を吐いた。困ったもんですとドナトは額の汗を拭いながら、

「……はい。民と貴族は違いますから、ナムリス様に、いえ、貴族があちらの民になるにはどうしたらと思いましてね」

 国交がなくなり記録がドナトの領地には残っておらず、城にも問い合わせたが、時が経って変わってるかもだから、逆に自分であちらに問い合わせろと門前払い。国を出るなら、その書式に合わせて手続きはしてやると言われたそうだ。

「あー……貴族同士はな。家の問題もあるから」
「ですよね。あちらから見れば小国の僻地の貴族の子どもたちです。我らはあちらとの繋がりが出来て取引も増えるし、息子たちが幸せであればと考えております」
「うん。城からさせるよ。分かったらそちらに連絡させる」

 よかったと三人は喜んだ。こんな領地運営とは関係ないことを願い出るのはどうかと思ったが、安堵したと幸せそうに笑う。ふふっこいつらこんな顔で笑うのか。親の顔そのものじゃないか。

「それであなたたちの息子全部?」
「ええ、一人ずつですね。仕事に同行するうちに恋仲になりまして」
「へえ……」

 我らはこの国では「アセベド一派」と嫌われております。ですが民を、家族を守りたかったから仕方なくなのです。本来我らは小心者で、領地からもあまり出たくもないと考える田舎の領主でした。彼らがなぜアセベドにくみしたかを改めて説明してくれた。

 彼らの土地が僕が生まれて少しした頃、嵐に見舞われた。作物は軒並みダメになり、売り物の小麦、米、野菜は水に浸り収穫不能。土砂崩れもあちこちで、道も塞がり孤立した。
 このままでは冬が越せない備蓄量まで追い詰められたそうだ。そこに城の晩餐会があり、なけなしの金で参加した。その嵐の被害は辺境のみで、大多数には関係ないことだった。
 そのため、被害に合った家同士で広間の隅で対策の話をしていた。そこへアセベドが現れて、自分を手伝ってくれれば金を出すとそそのかされたそうだ。さすがアセベド、チャンスは見逃さない。

「我らは自力で民を全員救うことは無理だと話していて、話の輪にいた他の領地は国の援助でなんとか立て直せると、アセベド様が現れた時に話の輪から離れた。我ら三人は暗澹あんたんとした気持ちでいたところでしたので、光が差したと思いました。悪いこととは分かっていたのです」

 困った領地を手駒にする為とはいえ……人の弱みに漬け込むのはやはり……気分のいい話ではなく、アセベドの腹黒さを強く感じるな。

「父がすまなかった……」
「いいえ、その金で民を救い、領地を立て直せたのは本当なんです。アセベド様の手伝いは心が痛かったのですが、悲しいけど日常になれば慣れるんです。当たり前になるのです」

 三人ともよく見れば、ユグノーが亡くなった頃とは顔つきが変わっていた。優しげな……ほのぼの地方領主という風貌だ。衣服も以前より洗練され、よく似合っている物に変わっている。豪華とかではなく、自分の好みも反映してるんだろう。パリッとアイロンされたシャツ、フリルの多い華やかなシャツ、縁取りのされた自分に似合ういろの上着。見違えるほどだ。

「我らは悪事に慣れて当たり前になり、領地が潤うことに何をためらうことがあるのだと、信じておりました」
「うん……」

 そこでアセベドが死にモートン家が取り潰し。僕は彼らをユグノーごと拒絶し、ユグノーは自らあの世に旅立った。

「あの頃の絶望はなかったですが、ユグノー様不在があなたの心を動かした」

 いやあ……父様が何かを感じたのか、苛ついたのかは分からん。だけど動くと言ったんだ。

「あの時のあなた方の説明に嘘がなくて、父上がならばと手を貸したまでだよ」

 三人は滅相もない。あの場での嘘などなんの得にもなりませぬと。

「あの場ではユグノー様のことを責めて、こちらの言い分をまず聞いてもらおうと計画しておりました。その後窮地の助力を願う。そう計画しておりました。話を聞くテーブルにキャル様を着けなくてはと」

 セビリノもうんうんと頷き、

「もう誰も我らを助けてくれる者はいませんでした。ユグノー様が亡くなり、孤立した我らにゆかりがあるのはあなただけでしたから」
「あれは……ふふっ驚いてむかつきもしました」

 申し訳なかったと頭を下げる。正攻法では話も聞いてもらえない、領地にも入れてもらえないと考えたのですと、三人は苦笑い。

「アセベド様、ユグノー様が全部悪いとは考えていません。我らの弱さ、災害なとは起きる物で仕方ないと対策を講じず、援助を王に願い出る努力すらしなかった。そんな頭の悪さが招いたことなのですよ」
「そこまで卑下しなくとも。民を愛してたからでしょう?」
「ええ、ですが、行為が矛盾してることさえ気が付いてもいませんでしたからね」

 そんな我らにナムリス様は魔法使いを派遣してくれて、彼らに食事と宿舎を用意してくれればお金もいらないと太っ腹。領地運営のノウハウも伝授してくれて、文官たちの指導までしてくれたそう。

「魔力は使うけど、我らの多少の準備費用だけで魔法使いは施策を次々にしてくれました」
「そういえば……私はそちらに初期の頃しか視察に行ってないよね」

 三人はぜひ!変わった我らの領地を見てくださいって前のめり。

「ええ、そちらの都合のよい時に誘ってくれ。喜んて行かせてもらうよ」
「はい!では早速、おい!」

 自分の側近にヘラルドと調整をと声を荒げて詰めより楽しそうだ。本来はこれが彼らなのだろう。つくづくアセベドは外では毒だったなと僕は苦笑した。








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