38 / 63
三章 東の城
2 なんかモヤモヤ
しおりを挟む
叔父様が退位すると言っても、準備期間もあるから今すぐではなく、いつも通りの生活をしていた。
「落ち込んでますね。リシャール様」
「ええ。叔父様の退位の話ししてる時にロベールとケンカみたいになってしまって、それ以降なんだか気が晴れませんね」
「そう」
オリバー様が僕の様子伺いに来てくれたんだ。そういった話はラウリル様ではなく、オリバー様の方がいいでしょうと。私は割り切りましたからって。だから気を使って呼んでくれたんだ。そんで、お庭でお茶会をすることに。
「どんなことかしら?」
「お聞きになりますか?」
うんとオリバー様が頷くから簡単に説明した。そうしたらあー……それはねえって。
「王族には付きまといますね。夫にも大量に来ていますから」
「やはり」
うちの夫は多少王妃の肌の色が出ましたが、そんなの関係ないってくらい来ます。あれほど文句タラタラなくせに、それはそれこれはこれと言われてるようで腹が立ちますよって。
「王には相応しくない!その肌の色は我が国のノルンの色じゃない!そんなのが次の王になって、なおかつその子が王になるなど言語道断だと、面と向かって言われたこともあります」
「はい?絞めころ……いえ、殴ってもいいのでは?」
そうですねえってオリバー様は苦笑いした。したいのは山々だけど、
「ルーカスの迷惑にはなりたくなくて我慢したら、奥歯が欠けました。おほほほ」
おおう……我慢強いな。こんなのなんでもないですよと笑うオリバー様はすごい。
「王族の苦労などなんにも分からないんですよ。優雅に税金で生活してると思われてますから。身近にいればそんなことないって分かるはずなのですが、まあね」
「ええ。そうですね」
国に食べさせてもらってる分は働いてると思うね。絶対貴族の奥様より忙しく、城にいることは少ない。日帰りの慰問もあるし、それこそ祝いの席でいろんな貴族に呼ばれて、王の代理だなんだと参列するんだ。思ったより暇はない。当然夫婦同伴だし、視察にはついて行くし。
「それに、お茶会も遠くてもワイバーンでどこへでも行けと言われるしね。この間南の領地の男爵にお呼ばれしました。赤ちゃんのお祝いでね」
「ああ!お疲れ様です」
貴族に赤ちゃんが生まれると王族が夫婦で出向くんだ。抱っこして祝詞を唱え、火竜の加護がありますようにとね。優しく強い火竜にあやかれるようにと願うんだ。その儀式に立ち会う。貴族は多いから手分けして行くんだ。当然他の国の王子誕生の祝いは王や王太子夫婦が行く。
「赤ちゃんかわいかったですよ。生まれたばかりは本当にどの子もかわいい。僕はお手製のエプロンとかドレスをプレゼントしました。喜んでくれてよかったです」
「オリバー様のは本当に良い品ですから、喜ばない人はおかしいですよ」
ありがとううふふって。いやマジで高級品って感じなんだ。僕はもういらなくなったエプロンもドレスも全部取ってるもん。かわいいから記念にね。
「でもね。相手を信頼するって難しい。特に王族は、自分だけ愛してとは言いにくいのが実情でね」
「ええ」
今世代は王様が嫌がって側室を持たず奥様だけだから「嫌です」と言いやすいですが、アルフレッド様は頑張ってますし、我らもいつまでわがままが言えるか分かりませんねと、難しい顔をなさった。
「分かってるんです。自分がわがまま言ってるのは。それでもロベールを独り占めしたい気持ちが強くて、そうなると疑っちゃう」
「分かります。知らないうちにどこかで……とか、僕にバレなきゃいいのでは?と考えるかもと、思いを巡らせる時もありますね」
王族に嫁に来る覚悟が足りないと言われればそれまでなんでけど、でもね。一夫多妻の国も当然あるし……よく奥様たち仲良く出来るな。
「文化でしょうね。そういうものだと思っていれば拒否感も少ないのかも。ですが我らは違いますから……」
「うーん」
火竜の血筋は魔力が膨大で、この国の貴族の魔力維持に役立っている。魔素の多さでカバーできない部分をカバーする。そう、その家の上限を上げるんだ。だから側室は身分の下の人もいて、その人から生まれた子を男爵家などに嫁や婿に出す。そして、領地運営は元より、国に貢献させる。国全体の魔力強化の意味合いもあるんだ。さすがに民にあげるなどはないけど、お金持ちの姫を貴族が養子にして側室に上げるは、ある。身分違いなども上位の貴族の子として養子にし、婚姻とかね。魔力と才能があればある意味なんでもありだ。
「平民からの側室はある意味出世ですから、親も待遇が分かっていても差し出しますからね」
「うん……」
オリバー様もいつか「側室もらったから」と言ってくるんじゃないかと、不安はいつもあるそうだ。
「でもね。私は愛人の方が嫌です」
「あー……分かります」
子は望めないけどそれは建前で、子は本妻の子として育てる。妻を見限った証が愛人なんだよね。貴族も本宅には帰らなくて、催しの時にしか夫婦は一緒にいなくなる。普段は別々の生活なんだ。
「妻も夫もどちらにもいる場合ありですし……なら僕と離婚してからにして!って気持ちになったり」
「はい。僕も常々思ってます。なんで離婚なしなんだよって」
まあ分かるんだけどねと、ふたりで見合ってふふふっと笑う。宮中の内情を知りすぎてるんだ。外でなにか話されると不味いんだよねえ。僕らでは、その話の重要度がどのくらいなのか判断つかないものもある。それを外で口走ったら?
「そうなんですよね」
「だから、夫婦仲が悪くなったら、勝手に愛人持って死ぬまで別居となる」
「ええ」
これ自分がやったらと考えたことはお有り?とオリバー様は微笑んだ。直近で機会はありましたが、全くそんな気になれませんでしたと話した。
「でも、この先赤ちゃんが大きくなって子を産むことから開放された時、お母様としか見なくなる旦那様多いって聞くじゃないですか」
「うんうん」
その頃でも三十代半ばですよ?夜も誘われなくなって、かわいいとも言われなくなった時、果たして耐えられるのだろうかと考える時があります。彼の目に映らなくなった自分に、どうしようって。浮気とか愛人とか全く関係なく、そんなになったら寂しくないですか?と。自分の努力関係なく、心が離れたら?
「コワッ……家族としての気持ちもないってことですか?」
「それは多少あるでしょうけど、側仕えくらいに思われるようになったら?」
うおーっ恐怖しかない。そしたら寂しくて自ら……ありうる!僕ひとり無理!寂しくて死んじゃう!
「でしょう?僕もです。そしたらどっかに屋敷構えて逃げようかなって」
「僕もオリバー様の近くに屋敷作ります」
そしたら仲良く暮らしましょう、寂しくないものって笑い合ったら、ヒッとオリバー様が口に手を当てて引きつってなにかな?と思ったら、後頭部を軽くパシンと叩かれた。
「そんな日は来ないんだよ!」
「痛い。あ、ロベール。来るかもでしょ!人は分かんないんだよ!」
「おおう?言い返すのか。ちょっと来い」
「ヤダ!オリバー様せっかく来てくれたのに」
ごめんねオリバー様。リシャール借りるねって微笑み、目は笑ってない。
「どうぞ。おふたりできちんと話される方がいいですから。僕もそうします」
「ああ。だが、ルーカスも大丈夫、そんな奴じゃないから。俺が保証する」
「はい」
そのまま庭を引きずられてロベールの部屋に。
「まだ気にしてたのか」
「するでしょ!抱かれてもなにしても不安なんだもん!」
あのなあってソファに座ると、僕を膝に乗せた。バカだなあって目で見つめてるけど、信用ならないとは違うけど、人の心は移ろうものだ。長く幸せに過ごす方法など十人十色で、僕は分からない。
「俺はならないよ」
「なんで言い切れるの?」
「幼い頃からお前が好きだから」
「そんなの大人になったら出会いも増えるし、これからも他国の方にもたくさん会うし、そしたらさ」
「そんなこと言ったらいくらでもだろ?でも俺は他は見ないよ」
ムーッ大好きだから不安なの!分かってよ!僕はロベールの肩を強く掴んだ。
「分かってるけど証明なんて出来ないだろ?子どももお前もとても愛してる」
「うん……」
僕は手を離しロベールの胸に張り付いた。他の人を抱いちゃイヤ。あなたは僕のだから。だから……
「うん。お前のだよ。だが、これは何度話し合っても答えは出ない。お互いを尊重して愛し合うしかない。後は時の運だ」
側室は絶対に断るからそこは安心してくれ。お前より好きな人ができる可能性は……
「可能性は?」
「キスして」
「はい?」
「いいから」
まあと、首に腕を回しチュッとした。足りないよと頭をグイッとされてんんっ…はふっ……ッ
「こうして仲良くしてれば他の人など目に入らない」
「誤魔化してる?」
「違うさ。いくつになっても交わって愛を確かめよう。年取るとしなくなるなど言うが、俺はお前が相手ならシワシワになってもするから」
「ホント?若い人が……あんっよくなるんじゃ……」
「ならないよ。約束する」
うー……朝からこんな……ダメ。うくっ
「するならベッドへ」
「ああ、昨日してなくてな」
ヒョイと抱き上げるとスタスタ。いろんな会がないだけで仕事はあるのにもうって、クオールはげんなりした声を出した。
「すぐ終わるさ」
「嘘です」
「大目に見ろ」
そのまま……アアッキス気持ちいい…んふぅ…
「俺仕様になってるな。触るとすぐだ」
「ハァハァ…ロベールの触り方がエッチなの!」
「いいや、お前が感じ易いだけ」
体を這う舌と唇が……んんぅ…うっ気持ちよくてふわふわしてると、グアッ
「クッいきなり締めんな」
「ぎもぢいいぃ……おっきぃのぉ」
「だろ?」
そのまま楽しんで、クオールがイライラしてたから洗浄魔法のみでロベールは仕事に戻った。
「やっぱり時間かかった」
「ごめんなさい……」
「リシャール様のせいではありません。ロベール様がしたかっただけです」
ミレーユは、リシャール様の心配は取り越し苦労なだけな気がしますよと笑った。
「こーんな仕事の間まであなたの顔が見たくて抜け出て、あなたの話を聞いて不安をなんとかして上げたいと抱いてるんですよ?要らぬ心配です」
「そうかな?」
「ええ。あなたより好きな人なんか出来ませんよ」
えへへ。ならこの心配は一度棚上げだな。僕らが東の城に行ってからまた考えることにしよう。
そして、準備が整い僕らは引っ越した。クオールとミケーレだけを連れてね。不安しかない。
「ようこそロベール様、リシャール様。私はここの筆頭執事マルクルでございます。どうぞよろしくお願いいたします」
馬車を降りると四十半ばくらいのマルクルがお出迎え……つか、全員?メイドさんも文官もたくさんいる!
「初めましてだからな。出迎えてくれるんだよ」
「そうだね」
僕らが門の前の階段を登ると全員頭を下げた。
「ここに八割方出ています。城と言っても直轄地領主くらいですから、西よりは楽ですよ」
「ああ、この一年引き継ぎもしたからな」
「ええ。あのくらいです。リシャール様が働くこともほとんどないはず、ゆったりとお過ごしくださいませ」
僕は初めてではないけど、客間とホールしか知らんからなあ。数日は探索だね。
「あの、働かないとはどういうことですか?」
マルクルはふふっと笑い、ここでは貴族の奥様くらいの量しか働かないんですよと。お茶会や晩餐会は西の城に出かけるくらいで、僕が主催しなければないそう。
「初めはお披露目とかありますが落ち着けば、領内の視察くらい。お家を思い出して下さいませ。そのくらいですよ」
「ああ、そっか」
基本お暇な時は街に出て領民と触れ合って下さいませと言われた。叔父上の奥様もそんなだったそうだ。仕事はロベールが中心で、災害や土地の復旧でもなければ暇ですよって。
「はい」
「まあ初めは変な感じかもだが、慣れるさ」
「うん。頑張る」
「それと、ハリソン様とショーン様がお見えです」
「ああ、久しぶりだな」
そんなこんなで領民へのお披露目や、東が管轄する貴族との舞踏会など諸々終わったら、あっという間に半年過ぎてた。叔父様は西に行って屋敷を構えたら、外国に遊びに行って姿を見かけないそうだ。王子たちは公爵としてロベールのお手伝い。
「ねえミレーユ。僕これからどうしたらいい?」
「なにかご趣味は?」
「あったら聞かない」
さて、これからどうしよう。
「落ち込んでますね。リシャール様」
「ええ。叔父様の退位の話ししてる時にロベールとケンカみたいになってしまって、それ以降なんだか気が晴れませんね」
「そう」
オリバー様が僕の様子伺いに来てくれたんだ。そういった話はラウリル様ではなく、オリバー様の方がいいでしょうと。私は割り切りましたからって。だから気を使って呼んでくれたんだ。そんで、お庭でお茶会をすることに。
「どんなことかしら?」
「お聞きになりますか?」
うんとオリバー様が頷くから簡単に説明した。そうしたらあー……それはねえって。
「王族には付きまといますね。夫にも大量に来ていますから」
「やはり」
うちの夫は多少王妃の肌の色が出ましたが、そんなの関係ないってくらい来ます。あれほど文句タラタラなくせに、それはそれこれはこれと言われてるようで腹が立ちますよって。
「王には相応しくない!その肌の色は我が国のノルンの色じゃない!そんなのが次の王になって、なおかつその子が王になるなど言語道断だと、面と向かって言われたこともあります」
「はい?絞めころ……いえ、殴ってもいいのでは?」
そうですねえってオリバー様は苦笑いした。したいのは山々だけど、
「ルーカスの迷惑にはなりたくなくて我慢したら、奥歯が欠けました。おほほほ」
おおう……我慢強いな。こんなのなんでもないですよと笑うオリバー様はすごい。
「王族の苦労などなんにも分からないんですよ。優雅に税金で生活してると思われてますから。身近にいればそんなことないって分かるはずなのですが、まあね」
「ええ。そうですね」
国に食べさせてもらってる分は働いてると思うね。絶対貴族の奥様より忙しく、城にいることは少ない。日帰りの慰問もあるし、それこそ祝いの席でいろんな貴族に呼ばれて、王の代理だなんだと参列するんだ。思ったより暇はない。当然夫婦同伴だし、視察にはついて行くし。
「それに、お茶会も遠くてもワイバーンでどこへでも行けと言われるしね。この間南の領地の男爵にお呼ばれしました。赤ちゃんのお祝いでね」
「ああ!お疲れ様です」
貴族に赤ちゃんが生まれると王族が夫婦で出向くんだ。抱っこして祝詞を唱え、火竜の加護がありますようにとね。優しく強い火竜にあやかれるようにと願うんだ。その儀式に立ち会う。貴族は多いから手分けして行くんだ。当然他の国の王子誕生の祝いは王や王太子夫婦が行く。
「赤ちゃんかわいかったですよ。生まれたばかりは本当にどの子もかわいい。僕はお手製のエプロンとかドレスをプレゼントしました。喜んでくれてよかったです」
「オリバー様のは本当に良い品ですから、喜ばない人はおかしいですよ」
ありがとううふふって。いやマジで高級品って感じなんだ。僕はもういらなくなったエプロンもドレスも全部取ってるもん。かわいいから記念にね。
「でもね。相手を信頼するって難しい。特に王族は、自分だけ愛してとは言いにくいのが実情でね」
「ええ」
今世代は王様が嫌がって側室を持たず奥様だけだから「嫌です」と言いやすいですが、アルフレッド様は頑張ってますし、我らもいつまでわがままが言えるか分かりませんねと、難しい顔をなさった。
「分かってるんです。自分がわがまま言ってるのは。それでもロベールを独り占めしたい気持ちが強くて、そうなると疑っちゃう」
「分かります。知らないうちにどこかで……とか、僕にバレなきゃいいのでは?と考えるかもと、思いを巡らせる時もありますね」
王族に嫁に来る覚悟が足りないと言われればそれまでなんでけど、でもね。一夫多妻の国も当然あるし……よく奥様たち仲良く出来るな。
「文化でしょうね。そういうものだと思っていれば拒否感も少ないのかも。ですが我らは違いますから……」
「うーん」
火竜の血筋は魔力が膨大で、この国の貴族の魔力維持に役立っている。魔素の多さでカバーできない部分をカバーする。そう、その家の上限を上げるんだ。だから側室は身分の下の人もいて、その人から生まれた子を男爵家などに嫁や婿に出す。そして、領地運営は元より、国に貢献させる。国全体の魔力強化の意味合いもあるんだ。さすがに民にあげるなどはないけど、お金持ちの姫を貴族が養子にして側室に上げるは、ある。身分違いなども上位の貴族の子として養子にし、婚姻とかね。魔力と才能があればある意味なんでもありだ。
「平民からの側室はある意味出世ですから、親も待遇が分かっていても差し出しますからね」
「うん……」
オリバー様もいつか「側室もらったから」と言ってくるんじゃないかと、不安はいつもあるそうだ。
「でもね。私は愛人の方が嫌です」
「あー……分かります」
子は望めないけどそれは建前で、子は本妻の子として育てる。妻を見限った証が愛人なんだよね。貴族も本宅には帰らなくて、催しの時にしか夫婦は一緒にいなくなる。普段は別々の生活なんだ。
「妻も夫もどちらにもいる場合ありですし……なら僕と離婚してからにして!って気持ちになったり」
「はい。僕も常々思ってます。なんで離婚なしなんだよって」
まあ分かるんだけどねと、ふたりで見合ってふふふっと笑う。宮中の内情を知りすぎてるんだ。外でなにか話されると不味いんだよねえ。僕らでは、その話の重要度がどのくらいなのか判断つかないものもある。それを外で口走ったら?
「そうなんですよね」
「だから、夫婦仲が悪くなったら、勝手に愛人持って死ぬまで別居となる」
「ええ」
これ自分がやったらと考えたことはお有り?とオリバー様は微笑んだ。直近で機会はありましたが、全くそんな気になれませんでしたと話した。
「でも、この先赤ちゃんが大きくなって子を産むことから開放された時、お母様としか見なくなる旦那様多いって聞くじゃないですか」
「うんうん」
その頃でも三十代半ばですよ?夜も誘われなくなって、かわいいとも言われなくなった時、果たして耐えられるのだろうかと考える時があります。彼の目に映らなくなった自分に、どうしようって。浮気とか愛人とか全く関係なく、そんなになったら寂しくないですか?と。自分の努力関係なく、心が離れたら?
「コワッ……家族としての気持ちもないってことですか?」
「それは多少あるでしょうけど、側仕えくらいに思われるようになったら?」
うおーっ恐怖しかない。そしたら寂しくて自ら……ありうる!僕ひとり無理!寂しくて死んじゃう!
「でしょう?僕もです。そしたらどっかに屋敷構えて逃げようかなって」
「僕もオリバー様の近くに屋敷作ります」
そしたら仲良く暮らしましょう、寂しくないものって笑い合ったら、ヒッとオリバー様が口に手を当てて引きつってなにかな?と思ったら、後頭部を軽くパシンと叩かれた。
「そんな日は来ないんだよ!」
「痛い。あ、ロベール。来るかもでしょ!人は分かんないんだよ!」
「おおう?言い返すのか。ちょっと来い」
「ヤダ!オリバー様せっかく来てくれたのに」
ごめんねオリバー様。リシャール借りるねって微笑み、目は笑ってない。
「どうぞ。おふたりできちんと話される方がいいですから。僕もそうします」
「ああ。だが、ルーカスも大丈夫、そんな奴じゃないから。俺が保証する」
「はい」
そのまま庭を引きずられてロベールの部屋に。
「まだ気にしてたのか」
「するでしょ!抱かれてもなにしても不安なんだもん!」
あのなあってソファに座ると、僕を膝に乗せた。バカだなあって目で見つめてるけど、信用ならないとは違うけど、人の心は移ろうものだ。長く幸せに過ごす方法など十人十色で、僕は分からない。
「俺はならないよ」
「なんで言い切れるの?」
「幼い頃からお前が好きだから」
「そんなの大人になったら出会いも増えるし、これからも他国の方にもたくさん会うし、そしたらさ」
「そんなこと言ったらいくらでもだろ?でも俺は他は見ないよ」
ムーッ大好きだから不安なの!分かってよ!僕はロベールの肩を強く掴んだ。
「分かってるけど証明なんて出来ないだろ?子どももお前もとても愛してる」
「うん……」
僕は手を離しロベールの胸に張り付いた。他の人を抱いちゃイヤ。あなたは僕のだから。だから……
「うん。お前のだよ。だが、これは何度話し合っても答えは出ない。お互いを尊重して愛し合うしかない。後は時の運だ」
側室は絶対に断るからそこは安心してくれ。お前より好きな人ができる可能性は……
「可能性は?」
「キスして」
「はい?」
「いいから」
まあと、首に腕を回しチュッとした。足りないよと頭をグイッとされてんんっ…はふっ……ッ
「こうして仲良くしてれば他の人など目に入らない」
「誤魔化してる?」
「違うさ。いくつになっても交わって愛を確かめよう。年取るとしなくなるなど言うが、俺はお前が相手ならシワシワになってもするから」
「ホント?若い人が……あんっよくなるんじゃ……」
「ならないよ。約束する」
うー……朝からこんな……ダメ。うくっ
「するならベッドへ」
「ああ、昨日してなくてな」
ヒョイと抱き上げるとスタスタ。いろんな会がないだけで仕事はあるのにもうって、クオールはげんなりした声を出した。
「すぐ終わるさ」
「嘘です」
「大目に見ろ」
そのまま……アアッキス気持ちいい…んふぅ…
「俺仕様になってるな。触るとすぐだ」
「ハァハァ…ロベールの触り方がエッチなの!」
「いいや、お前が感じ易いだけ」
体を這う舌と唇が……んんぅ…うっ気持ちよくてふわふわしてると、グアッ
「クッいきなり締めんな」
「ぎもぢいいぃ……おっきぃのぉ」
「だろ?」
そのまま楽しんで、クオールがイライラしてたから洗浄魔法のみでロベールは仕事に戻った。
「やっぱり時間かかった」
「ごめんなさい……」
「リシャール様のせいではありません。ロベール様がしたかっただけです」
ミレーユは、リシャール様の心配は取り越し苦労なだけな気がしますよと笑った。
「こーんな仕事の間まであなたの顔が見たくて抜け出て、あなたの話を聞いて不安をなんとかして上げたいと抱いてるんですよ?要らぬ心配です」
「そうかな?」
「ええ。あなたより好きな人なんか出来ませんよ」
えへへ。ならこの心配は一度棚上げだな。僕らが東の城に行ってからまた考えることにしよう。
そして、準備が整い僕らは引っ越した。クオールとミケーレだけを連れてね。不安しかない。
「ようこそロベール様、リシャール様。私はここの筆頭執事マルクルでございます。どうぞよろしくお願いいたします」
馬車を降りると四十半ばくらいのマルクルがお出迎え……つか、全員?メイドさんも文官もたくさんいる!
「初めましてだからな。出迎えてくれるんだよ」
「そうだね」
僕らが門の前の階段を登ると全員頭を下げた。
「ここに八割方出ています。城と言っても直轄地領主くらいですから、西よりは楽ですよ」
「ああ、この一年引き継ぎもしたからな」
「ええ。あのくらいです。リシャール様が働くこともほとんどないはず、ゆったりとお過ごしくださいませ」
僕は初めてではないけど、客間とホールしか知らんからなあ。数日は探索だね。
「あの、働かないとはどういうことですか?」
マルクルはふふっと笑い、ここでは貴族の奥様くらいの量しか働かないんですよと。お茶会や晩餐会は西の城に出かけるくらいで、僕が主催しなければないそう。
「初めはお披露目とかありますが落ち着けば、領内の視察くらい。お家を思い出して下さいませ。そのくらいですよ」
「ああ、そっか」
基本お暇な時は街に出て領民と触れ合って下さいませと言われた。叔父上の奥様もそんなだったそうだ。仕事はロベールが中心で、災害や土地の復旧でもなければ暇ですよって。
「はい」
「まあ初めは変な感じかもだが、慣れるさ」
「うん。頑張る」
「それと、ハリソン様とショーン様がお見えです」
「ああ、久しぶりだな」
そんなこんなで領民へのお披露目や、東が管轄する貴族との舞踏会など諸々終わったら、あっという間に半年過ぎてた。叔父様は西に行って屋敷を構えたら、外国に遊びに行って姿を見かけないそうだ。王子たちは公爵としてロベールのお手伝い。
「ねえミレーユ。僕これからどうしたらいい?」
「なにかご趣味は?」
「あったら聞かない」
さて、これからどうしよう。
11
あなたにおすすめの小説
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
【本編完結】転生先で断罪された僕は冷酷な騎士団長に囚われる
ゆうきぼし/優輝星
BL
断罪された直後に前世の記憶がよみがえった主人公が、世界を無双するお話。
・冤罪で断罪された元侯爵子息のルーン・ヴァルトゼーレは、処刑直前に、前世が日本のゲームプログラマーだった相沢唯人(あいざわゆいと)だったことを思い出す。ルーンは魔力を持たない「ノンコード」として家族や貴族社会から虐げられてきた。実は彼の魔力は覚醒前の「コードゼロ」で、世界を書き換えるほどの潜在能力を持つが、転生前の記憶が封印されていたため発現してなかったのだ。
・間一髪のところで魔力を発動させ騎士団長に救い出される。実は騎士団長は呪われた第三王子だった。ルーンは冤罪を晴らし、騎士団長の呪いを解くために奮闘することを決める。
・惹かれあう二人。互いの魔力の相性が良いことがわかり、抱き合う事で魔力が循環し活性化されることがわかるが……。
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結、恋愛ルート、トマといっしょに里帰り編、完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!
めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈
社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。
もらった能力は“全言語理解”と“回復力”!
……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈
キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん!
出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。
最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈
攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉
--------------------
※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!
冷酷無慈悲なラスボス王子はモブの従者を逃がさない
北川晶
BL
冷徹王子に殺されるモブ従者の子供時代に転生したので、死亡回避に奔走するけど、なんでか婚約者になって執着溺愛王子から逃げられない話。
ノワールは四歳のときに乙女ゲーム『花びらを恋の数だけ抱きしめて』の世界に転生したと気づいた。自分の役どころは冷酷無慈悲なラスボス王子ネロディアスの従者。従者になってしまうと十八歳でラスボス王子に殺される運命だ。
四歳である今はまだ従者ではない。
死亡回避のためネロディアスにみつからぬようにしていたが、なぜかうまくいかないし、その上婚約することにもなってしまった??
十八歳で死にたくないので、婚約も従者もごめんです。だけど家の事情で断れない。
こうなったら婚約も従者契約も撤回するよう王子を説得しよう!
そう思ったノワールはなんとか策を練るのだが、ネロディアスは撤回どころかもっと執着してきてーー!?
クールで理論派、ラスボスからなんとか逃げたいモブ従者のノワールと、そんな従者を絶対逃がさない冷酷無慈悲?なラスボス王子ネロディアスの恋愛頭脳戦。
【土壌改良】スキルで追放された俺、辺境で奇跡の野菜を作ってたら、聖剣の呪いに苦しむ伝説の英雄がやってきて胃袋と心を掴んでしまった
水凪しおん
BL
戦闘にも魔法にも役立たない【土壌改良】スキルを授かった伯爵家三男のフィンは、実家から追放され、痩せ果てた辺境の地へと送られる。しかし、彼は全くめげていなかった。「美味しい野菜が育てばそれでいいや」と、のんびり畑を耕し始める。
そんな彼の作る野菜は、文献にしか存在しない幻の品種だったり、食べた者の体調を回復させたりと、とんでもない奇跡の作物だった。
ある嵐の夜、フィンは一人の男と出会う。彼の名はアッシュ。魔王を倒した伝説の英雄だが、聖剣の呪いに蝕まれ、死を待つ身だった。
フィンの作る野菜スープを口にし、初めて呪いの痛みから解放されたアッシュは、フィンに宣言する。「君の作る野菜が毎日食べたい。……夫もできる」と。
ハズレスキルだと思っていた力は、実は世界を浄化する『創生の力』だった!?
無自覚な追放貴族と、彼に胃袋と心を掴まれた最強の元英雄。二人の甘くて美味しい辺境開拓スローライフが、今、始まる。
【完結】悪役令息の従者に転職しました
* ゆるゆ
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
透夜×ロロァのお話です。
本編完結、『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました!
時々おまけを更新するかもです。
『悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?』のカイの師匠も
『悪役令息の伴侶(予定)に転生しました』のトマの師匠も、このお話の主人公、透夜です!(笑)
大陸中に、かっこいー激つよ従僕たちを輸出して、悪役令息たちをたすける透夜(笑)
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる