緑の竜と赤い竜 〜僕が動くと問題ばっかり なんでだよ!〜

琴音

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四章 どうしてこなるんだ

4 問題はどうにか解決かな

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 精霊城から帰宅して二ヶ月。だるさも抜け元気ハツラツ。でも簡単には太れなかった。まあ、食欲もあるからもう少しかな。
 そんなある日なぜか夜明け前に目が覚めた。東の空がうっすらと明るくなり始めているのをベッドから抜け出し、カーテンを少し開けて眺める。紫と紺のコントラストが美しく、この時間の静寂は好きなんだ。生き物の気配はなく、張り詰めたような静寂とほんのりと色付く空。ヒンヤリとした空気になぜか意味なく孤独を感じる。

「リシャール眠れないのか?」
「ご、ごめん。起こした?」

 振り返るとロベールが眠そうに起き上がっている。

「いやそれはいい。まだ体調がすぐれないのかと思って」
「違うの。お酒も飲めるようになってだいぶいいんだ。もう体重以外は元気だよ」
「なら、なぜこんな時間に……くは~っ」

 ロベールは大きなあくびをしている。ごめんね疲れてるのにと言いながら、僕はベッドに戻った。

「うーんとね。……ロベール帰ってから抱いてくれないなって思っただけ。なんだか寂しくてね」

 ロベールはビクッとして目が泳いだ。そして表情がなくなり、僕に触れていた手を引っ込めてしまう。

「……ごめん。辛いかと思って。それと、俺が……小さいんだが、わだかまりがある」

 やっぱりか。誰かに抱かれた跡を消しても、精霊王に抱かれた体の跡をハイネに消してもらっても、それでも……僕汚くなったと思われてるんだよね。結婚前のお付き合いとは違うんだ。うん、分かる。

「ごめん。僕が望みすぎてるんだ。あなたがなにも言わず迎えてくれたのが嬉しくて、この失態を許してくれたと勝手に思ってた」

 ちがっそれは違う!とロベールは焦って否定する。無理しなくていいのにと僕は微笑んだ。当然の気持ちなんだよ。結婚前のことはお互い様。そんなものは気にもならない。だけど結婚後のことは……うん。僕も嫌だもの当然だ。

「俺がお前を守れなかったのが、その、許せないだけなんだ。守れなかったくせに抱いていいのかって。他意はないんだ。ただ自分が情けなくて……その」

 本音を言えば毎晩悩んでいた。元気になった頃から誘おうとは思うんだけど、なんか言えなくて発情期まで待つかとか……情けないけど、もうすぐだろ?だから……ごめんって。

「僕ね、子ども産んでからまだ発情期来てないはずなんだ。弱ったからかもしれないね。だから、前と同じ日では来ないかも」
「そう……どんぐりだけじゃ弱るか」
「ふふっうん」

 ハイネがごめん、人と食事の違いに意識が行かなかったんだ。これは本当に申し訳なかったと思ってるよって。魔素だけで生きるのが精霊で食べ物は遊びのようなもの。だから牛のミルクがあれば大丈夫かと思ってて、精霊としては頑張って動物性の物を口にしていたそうだ。僕はいいよって答えた。そりゃあそうかとも思うからね。ハイネは今から意識を切り離すから、必要な時に呼んでって、見ないから安心してって消えた。

「抱かせてくれるのか?俺に失望してないのか?」
「してないよ。僕を信じて待っててくれたんだもの。父上さえ戻らないと思ってたのにね」

 僕を横にして頬を手の甲で優しく撫でる。愛しそうに見つめてスリスリと撫でてくれる。

「いつでも俺はお前を抱いていたかった。帰って来て落ち着いたら、俺の匂いをつけるんだって……なのに自分の至らなさで胸がいっぱいになって、手を下げていた」
「うん」

 精霊との力の差はこんなところにあるんだと愕然としたそうだ。火竜と得意分野が違う。物理防御、魔法防御も精霊王なら意味がないなんて考えてもいなかったんだと、眉を下げて苦しそうに笑う。

「僕も知らなかったよ」
「ああ、繊細な術が多いんだよな。草木と対話して、動物や魔獣を味方につける。そして気まぐれに人とも仲良くしてくれる」
「うん」

「リシャール……」

 僕を抱き寄せて首筋に唇を当て舌が這う。鎖骨から顎とチュッチュッと上がり、唇が重なる。

「リシャール……俺を求めて…欲しいと言って」
「うっ…ロベール…愛してるよ。ごめんね」

 ごめんねなんていらない。ロベール愛してるだけでいいと僕の手を取り、自分のを握らせる。

「硬いだろ?ほとんど抜きもしなかったんだ。お前を思ってたまにひとりでしてたくらいでな」
「ロベール……辛かったでしょ?」
「いいや、朝立ちとか生理現象の時くらいだからな」

 恥ずかしいけどお前には知っててもらいたいと、本当に恥ずかしそうに頰を染めた。それと一度出したい。入れても持たなさそうだから手で擦ってって。俺はお前のを解すよって。抱き合ってお互いを愛撫するように優しく……んんっ…ああっ……っ

「ロベール……ソコ…ロベールの指の動き気持ちいい…」
「うん。お前の手は気持ちいいよ」

 慣れた手つきの指の動きにヒクヒクが止まらない。自分の股間が硬くなって先から漏れてるのも感じる。すごく……あうっすごく気持ちいい。

「ロベール……も…持たな……あっ……」
「入れてもいい?」
「うん…欲しい」

 すぐ出ちゃうと思うけど、お前の中でイキたいと頬を赤らめる。あんまりかわいく微笑むからドキンッと胸が高鳴ったら……

「ハァハァ……出ちゃ……ハァハァ……」
「そうだな。少し待つか?」
「いい、入れて」

 イッた後すぐは確かに刺激が強くてきついけど、今は入れたい。それすらもきつくないと思えた。ロベールは穴に先を軽く押し込み、

「ふふっヒクヒクする」
「欲しくてだよ」
「うん」

 痛かったら言えよと僕の脚を広げ、腰にグッと力を入れる。先が奥を目指し入ってくる。

「ロ、ロベール……ッ」
「痛い?」
「痛くてもいい。熱い……あなたが熱くて……ロベール……ンっ」
「うん」

 先が奥に届くと、お腹が熱くて圧迫感もすごくて……彼の体温も触れ合う肌も気持ちよくて、嬉しくてまぶたが熱くなった。ずっとこうしたかったと思った。抱き合うだけじゃ足りなくて、キスだけでも足りなくて……僕に入って欲しかったんだ。

「締めるな。出るだろ」
「出して。僕をロベールの……ンっ匂いをつけて」
「その言い方は煽られるだろ」

 そう言うと腰を振り出した。擦れるのが痛いけど気持ちいい……毎晩求められていたあの頃の……でももうすごく硬い。ゴツゴツしてるのを感じる。

「ごめっ……イクッ」

 奥にドンッと押し込み僕を強く抱きしめて、リシャールと震える声で呼ぶ。ビクビクと吐き出して落ち着くと、ハァハァと喘ぎ僕の口を塞ぐ。

「愛してる。誰に抱かれようが俺のものに違いない。お前を守れなくて辛い思いをさせた。ごめんな」
「僕が……あっ危機感が足りなかったの……もっとロベールもっと触ってよ」
「ああ」

 ロベールは我慢してた分欲は抑えられず、僕も抱き合っていたくて中にいて欲しくて彼を離さなかった。何度果てた頃だろうか部屋が明るくなった頃、クオールがオズオズと食事の時間です。仕事はどうでもいいですが、リシャール様は食事が仕事になってます。そろそろ……と、扉を少し開けて声を掛けてくる。

「すまない。起きる」
「そうして下さいませ。お風呂の支度は出来ております」

 ぐちゅりと湿った音を立ててロベールのが僕から抜けると、彼の生暖かいモノが漏れた。ほら起きろって起こされると、漏らしたように流れ出る。

「なんだかこの光景が遠い昔のように感じるな。俺にまみれてるのはな」
「ふふっそうだね」

 股間からロベールの桃の香りがする。桃の香り?僕発情するかも。そっか、相手の発情を感じるということは、体が元に戻ったんだ。

「俺は分からないが、そうか香りが分かるか」
「うん。また毒のお世話になるよ」
「いや、体調が整った頃耐えてくれないか?俺にというか、アルフォンスに子をな」
「あ?」

 兄様は今の子が竜にならなくてもいい。その子の子孫が精霊王に願い竜になれればいいから、くれとロベールに願い出てたそうだ。マジか。

「アルフォンスはお前を諦めてなかった。父上はもう精霊がお前を手放さないから無理かもと言ってたが、アルフォンスはリシャールはロベール様が好きだからと、俺をずっと励ましてくれてたんだ」
「そう、兄様が」

 以前のハイネの言葉を思い出していた。アルフォンス兄様は僕をとても愛してるって。養子にするなら僕の子以外は嫌って。そっか……跡継ぎに必要なら……僕は強く死ににくくなってるしな。産めるだけ産んでみるか?でも竜にはなれないけど、それでも欲しいのかとも思うけど。

「いや、ひとりでいい。モーリッツの子もあちこち生まれるし」
「そっか。えへへ」

 そのままお風呂に入って食事して、ロベールは遅くなったけど仕事に行った。僕は自室の執務机で覚書のように、ハイネに聞いた話や自分の変化などを記録していった。まあ、日記だね。毎日のことって覚えてるつもりでも忘れるからさ。

「リシャール。エッチな話ばっかだぞ?」
「うっさい!ロベールの僕への気持ちを書いてんの!大切な愛の言葉なの!」
「ふーん。生々しいな」
「いいの!ちんこの具合も書いとくの!」

 ミレーユはクスクスと笑う。トリム、愛し合うふたりにしか分からない機微があるのですよ。そこは触れてはなりません。番とはそういうものなのですからって。このふたりは困難がたくさんあってもこれだけ愛し合える、素敵なカップルです。前東の王もそうでした。とてもいいことなのですよって。

「あー……前の王か。あれも王妃大好きだって分かる人だったよね。この城にはみんなには見えてないけど精霊が多くてね。毎晩愛し合ってたって、みんな楽しそうに話してたよ」
「「へえ……」」

 ミレーユと目を合わせ、だろうねって。子どもはふたりだけど仲良かったからなあ。そういや叔父様たち今なにしてんの?全く顔出さないけど。待ってろとトリム。

「ああ、ウィリアムは……うんうん……ほうほう……それで?」

 トリムは誰かと話してるようだ。精霊はどんなに遠くにいても会話が成立するのに僕には出来ない。出来るんだろうけど、遠くに精霊の知り合いがいないから話す相手がいないだけなんだけどね。

「リシャール。今ウィリアムたちは獣人の国にいて、これから魔族の国に向かうんだってさ」
「「え?魔族?」」
「うん」

 ミレーユと驚いた声が重なった。そんな遠くまで行ってたのか。なら見かけないはずだ。

「ふたりでゆっくり何年も掛けて旅行するってさ。魔族の国はリーリュシュ共和国連合とは大きさがまるっきり違ってデカい。その先にも行ってみたいと話してるってさ」
「「その先?」」

 またふたりで声が重なった。その先って未開の地だろ。それこそ訳わからんサイズの大きな森があるだけで、それもどこまでかも分からない。一応そこのどこかに、エルフやドワーフたちがいるとは言われてるけど。

「うん。人族や獣人は確かにいないね。人族では住めないんだよ」
「なんで?」

 トリムは僕の肩にふわっと飛んできて座る。リシャールは特に住めないんだよって。

「あー……魔素がおかしいんだ。魔族ならいいだろうけど、他の生き物は無理かな。俺たちもちょっと厳しい。瘴気溜まりも多くて、闇の森っていうのかな。重苦しい空気で精霊すら息苦しい場所なんだ」
「そう。なら開発したら住めそう?」

 こめかみに人差し指を当てて、目を閉じ友だちからの映像を受け取ってるから待ってと。そしてうーんと唸る。

「ダメじゃないかな。あの魔族を強化する黒い魔石あるだろ。あれが地下にびっちり埋まってるらしい。エルフたちはそのない場所を見つけて暮らしてる」
「あ……だからあの森の近くに魔族の国か」
「そうらしいぞ。あの魔石は魔族を強くする。暴力的にもだけど……そうだな。体力強化の魔石で疲れ知らずにして……あんまりいい使い方じゃないけど、あの国は奴隷制度っての?鉱山とかの人に使ってるっぽい」
「そっか」

 トリムの話では魔族はその魔石に耐える力があるんだけど、使い続けて亡くなる人も多いそうだ。そうだろうとしか思えないが、魔族らしいと言えばそうだね。なら叔父様たち危なくないのかな?トリムは平気さって。

「大きな街中だったら平気。他国の人も多いしね。小さな村や町は分からんかな。昔ながらの魔族も多いから乱暴な人も多いと思うね」
「ふーん。帰って来たらお話聞きたいなあ」
「ですね。我らが行けるようになるには、同じくらいのお年か公務でですから。それも難しいかな」

 そうだねえ。公式のはアーダルベルト様か、アルフレッド様だろうし。僕らにその役目は回ってこないもの。こちらは本当に別の国って感じで、他国の行事には余程のことがない限り行かないからなあ。

「いつか機会がありましたら。そうですねえ……この間読んでいた本に転移術なるものが書いてありました。一瞬で移動出来る術で、魔法省の錬金術士が取り組んでるようですね。あったらいいですよね」
「へえ……すごいね。そんなの知らなかったけど、出来るといいね」

 とか、盛り上がっていたらトリムとミュイが揉めてた。

「何年生きてても精霊は子どもっぽいよね」
「ああ?純真なだけだよ。清い心で生きてんだ。この子どもっぽさがなくなったら精霊じゃねえんだよ」
「へえー。ミュイも再生するけどどんどん賢くなってるになあ」
「ああ?俺も賢いさ。それをひけらかさないのも精霊なの!」

 何の話だよ。訳わからんとミレーユと言い争いを聞いていた。結論、どちらも子供っぽいだけ。たぶん生きた時は違うけど、精神年齢は同じくらいだなって。

「ふたりとも賢いから、僕らと仲良くして下さい。期待してます」
「あ!リシャールウソくさいぞ!」
「ミュイの方が賢いもーん」

 どっちでもいいよ正直。そのまんまの君らでいいんだ。かわいいまま僕の傍にいて下さいとしか思わん。

「ほらふたりともミレーユがケーキはどう?ってお皿に用意してるよ」
「おっ食べる!」

 ふたりともテーブルに向かってミレーユの手元に近くに座り、早くと急かしている。うん、どっちも変わらんな。







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