60 / 63
四章 どうしてこなるんだ
9 毛皮の販路と新しい魔石
しおりを挟む
春が来た。
高い山の上しか雪は見当たらず、平地は草木に新芽が芽吹き命の輝きが増す。空気も暖かく、畑は農夫の方が野良仕事に精を出す。町外れに多い鍛冶屋の小気味いい槌の音も軽やかに聞こえ、天空のピーヒョロロとトンビの声すら爽やか。土の香りもいいね。
「リシャール」
「なんですか」
「麦わらばかりは飽きたんだよ。さつまいもよこせ」
「種イモが余ったらね」
「ならキャベツとかにんじんとか」
「あげてるでしょ」
「足りない」
僕の唯一のお仕事、ヌーマリムの管理。
「あったかくなったら緑の豆だろ。豆くれ」
「まだ早いんだよ」
「エエッ俺たち毛が抜けて夏毛になるんだよ。食べないとなの!」
「知ってるけど、ないものはない」
僕の前にはたくさんのヌーマリム。口を開けば文句しか出ない。
「春になったら作物が出来てるはずないでしょ。そんなのお前らが一番知ってるでしょう」
「人が家に隠してるのも知ってる」
「隠してんじゃないの。あれは僕らの食べ物だよ。僕らも食べないと死ぬの」
「けち」
「どこで覚えたその言葉!」
「そこらの精霊」
ノルンの成獣は冬の発情期が終わり、我に返ったらお腹空くらしく食べ物の話しかしない。アンの子たちは甲斐甲斐しく子どもを育てている。
「リシャール様、なに言ってますか?」
「新鮮なエサをよこせ。豆をよこせ、備蓄のイモを出せと……ムカつく!」
「アハハッ相変わらずですね」
毛皮は思いのほか需要があったこの冬。でも初期投資の回収には、何年もかかる見込みなんだ。こいつら見た目より食う!本当によく食べるんだ。丸くてふかふかで……これの維持は、相当食べてるからなのだと分かった。時々土を掘ってミミズとか虫も食べるから、お肉も食べると分かった。だから廃棄のお肉や骨も持ち込んでる。
「今年から売り物にならない野菜や果物もこちらが買い取る計画になってますから、昨年よりいい思いがこいつらも出来ますよ」
「うん。だから待てと言ったんだけどさあ。聞きやしねえ」
牧場の柵越しにヌーマリムと話すんだ。この柵大事。ないと彼らは僕によじ登って訴えてくるから、泥だらけになるんだ。
「リシャール見て」
一匹のヌーマリムが、赤ちゃんを口にくわえて見せに来た。
「うん?ああ、かわいいね」
「でしょ?リンゴくれ。甘いのが欲しい」
「ぐふぅ……もうすぐいちごの季節だから……」
「そう?待ってるから」
「うん……」
隣の人に話したらアハハッと笑う。リシャール様そんなの聞いてたらキリがありません。こちらでお茶をと事務所に戻った。
「こちらが先月の収支です。今月からは間引きの野菜などが増えますから、餌代は冬手前まではこの半分になる予定です」
「うん。ならなんとか数年で収支は増に出来そうだね」
「ええ。雑食ですからね」
初期投資と管理の人たちのお給金もあるから、そう簡単にはプラスにはならない。でもね、彼らは本来簡単に捕まらないんだ、ヌーマリムはね。たくさんの群れで生活してる訳じゃなく、春と秋に繁殖のために一時的に群れる。その時を狙わないとなんだ。でも春は毛皮は必要ない。秋は獣ばかりか人も付け狙うのを知ってるから警戒心も強く、畑でしか捕まらない。
「なんと言っても畑のヌーマリムは毛並みが悪い」
「うん。力の弱い個体とは思わなかった」
森できちんと繁殖しているヌーマリムは強いんだ。他を蹴散らし餌場確保。そして自分の群れ以外は攻撃して排除する弱肉強食だ。弱い個体は森をさまよう。どんぐりや美味しい木の実、野生の果物の場所はぽつんとあってそれを探して食べる。とても手間がかかるそうだ。そのうち仕方なくなんでも食べて生き延びる。当然痩せて毛もバサバサ。
「わかる気はしますよ。俺がもしヌーマリムなら、畑襲いますもん」
「うん、僕もね」
彼らは食べ物と繁殖しか考えてない。この冬話しててそれしか分からなかったんだ。この牧場の責任者ユリアスは、動物とはそういうものでしょう?と。
「人がおかしいと思ってますよ。私はね」
「そう?」
「ええ。でも致し方ない進化とも考えてます」
人に近い者も含め、木の葉で栄養も取れず身を守る爪もない。魔族ですら木の皮を食べて生きることは不可能。動物としては弱いんですよって。家もなく裸で放り出されたら、毛皮のない我らはあっという間に凍死するし、暖かい所は猛獣が多くかなり厳しい。食べられる獲物でしかなくなる。だからこのように進化した。
「学校で習ったね」
「ええ。なんだかんだないものを用意して強さを手に入れた。彼らは初めから生きる手段を持ってて、これだけ人に捕まってもたくさん増える。そういうことですよ」
「うん」
でも、あなたのおかげで新たな産業がこの地に作られました。きっと毛皮の産地となって領地が潤うでしょうって。なったらいいなあ。
「そのための規制を今作ってますからね。他国や他領が真似する頃には、我が領地は有名になってるはずですから」
「うん」
お茶を飲みながらこれからのことを詰める。やることはたくさんで販路も開拓中。品質のよい毛皮はきっと売れるはず。庶民に毛皮を売りつけるのさ。うはは。
「毛皮は暖かいですが庶民には高嶺の花。色んな色にも染められますからきっと売れます」
「うん。僕がんばる」
こんな感じで仕事が忙しくなり、僕は森に遊びには行けなくなってて、トリムやミュイには適当に遊んでとお願いしている。ロベールは鉱山の開拓を公爵のふたりとせっせとしてるし、東は今とても忙しいんだ。ふたりでゆっくり話すのは寝る前くらい。
「鉱山はなんとか村は出来て掘削も始まった。だが、領地にはまだほど遠い」
「そう。人が来ない?」
「うん。給金はいいが危険も多い。簡単には集まらんなあ」
「そっか」
「長い目で見てだな。リーンハルトが公爵になる頃完成すればいいくらいだ」
「そうだね」
街だけ作るとか農地を作るだけならすぐ出来る。でもそこに住む人は簡単にはね。人がいない街なんて意味はないんだ。
「お前はどうなんだ?ヌーマリム」
「ゔっ美味いエサくれ……は置いといて。毛皮の販路だね。春の子供たちもアンに二~三匹くらいずつ生まれてて、ノルンたちは一年後には売れる。今季で二年目のアンも毛皮になる予定で総数は変わらんか微増。冬前の毛皮を見本に今から服飾関係に売り込まないとかな」
「なんとかなるのか?」
「服飾ギルドにお願いしてるけど、僕やあなた、公爵二人に夏でも身につけてもらって、家臣にどうですかあ~って売り込む予定」
夏に毛皮?と嫌そうなお顔。まあ、分かる。
「防寒着にいいよってね。それとね、なんか毛長のもいるんだよ。あれは他のキツネとかと張り合えるはず。別にして繁殖をお願いしてる」
「ふーん。年いってる毛皮は庶民に、高級そうなのは貴族にか」
「うん」
始めたばかりだから売り込んでも騎士にとなるかもだが、野生の物との差別化が重要だ。高いだけの理由もだが、こういったことは他が真似るのも早い。全て先手をとロベール。
「うん。この東の地が本家で最高品質を保てると売り込むんだ。なんたってヌーマリムとお話できるのは我らだけ。これは強みよ」
「おう。頼むな」
まあ、珍しい精霊使いを雇われたらこの差はなくなる。先手必勝だ。
「リシャール」
「はい?」
「これどうぞ」
「なに?」
小さな箱をもらった。なんだろうと開けると……不思議な色だなあ。魔石の紫より赤みが強くて、とても美しい。
「これ魔石?」
「うん。調べたらピジョンブラッドと魔石の中間くらいらしい。鉱山で出た」
「うそっすごい。純粋に宝石でもいいくらい透明度も高くて……うわあ」
僕は天井の明かりにかざした。原石だからカットが悪いけど、それでもキラキラと美しい。気泡もほとんどないしクラックも少ない。なんて品質のいい。魔石に使うのがもったいないくらいだ。
「宝石より付与を強く多く出来る魔石として、貴金属扱いで一部の高品質は売ろうかなって」
「それがいい。これは普通の魔石と同等はないな」
ちなみにヌーマリムに似た魔獣、チークスという生き物がいる。あれの魔石は薄い紫というか優しいすみれ色で、魔石ではなく宝石として流通してる。魔石としてはクズすぎてね。あの色の宝石もなくはないけど、原石は高い。だからチークスの石は庶民に大人気。でも、庶民が自分で討伐に行くのはお勧めしない。
牙は長く爪は鋭くそして獰猛。群れは恐怖でしかない。むかし術士の頃、大群にパニックになった騎士が驚いて、チークスに火を付けたおバカさんがいた。想像を絶する山火事になったんだ。あいつら逃げるからね。見た目は怖いけど、ネズミみたいな動きをする魔獣でねえ。消しても消しても森に火の手が上がる。なんか思い出した。
「これどうするの?」
「魔石にも宝石にもおすすめと……名前はないから付けて売り込む」
「センスよさそうな……アンリ様?」
「うん。考えてる」
かなりありそうなんだけどまだ未知数。色も安定してなくて、これは一番キレイなところだそうだ。
「今魔法省と協議中なんだ。でもそれはお前に」
「え?くれるの?」
「うん。俺の愛の証に。ピジョンブラッドは王族でも高いからな」
「ありがとう。嬉しい」
まずお前が貴金属に加工して、夜会などに出て宣伝してくれ。貴族に売りつけると。
「付与もお前なら好きに出来るだろ?」
「商売ですか……喜んで損した」
「そんなこと言うなよ。愛してるから最初にあげたのにぃ」
「うん」
ちなみに公爵たちも持って帰ってて、奥方に付けさせるそうです。ほら見ろ!商売だろ!
「お前もだろ?毛皮を夏に着せようと企んでるんだから」
「まあ」
我が国はこうして大きくなったんだ。王族から商売人なんだよーんと開き直った。その通りなんだけれども。
「今流行りの魔族デザインの剣でも甲冑、貴金属にも映えそうだろ?」
「うん」
紅色っていうのかな。とても綺麗なのは本当なんだ。美しい紫がかった赤。まあ、ロベールの役に立つからいいか。
「ありがとう」
「うん」
そして、毛皮とこの魔石を携え、今度の西の夜会にレッツゴー。
高い山の上しか雪は見当たらず、平地は草木に新芽が芽吹き命の輝きが増す。空気も暖かく、畑は農夫の方が野良仕事に精を出す。町外れに多い鍛冶屋の小気味いい槌の音も軽やかに聞こえ、天空のピーヒョロロとトンビの声すら爽やか。土の香りもいいね。
「リシャール」
「なんですか」
「麦わらばかりは飽きたんだよ。さつまいもよこせ」
「種イモが余ったらね」
「ならキャベツとかにんじんとか」
「あげてるでしょ」
「足りない」
僕の唯一のお仕事、ヌーマリムの管理。
「あったかくなったら緑の豆だろ。豆くれ」
「まだ早いんだよ」
「エエッ俺たち毛が抜けて夏毛になるんだよ。食べないとなの!」
「知ってるけど、ないものはない」
僕の前にはたくさんのヌーマリム。口を開けば文句しか出ない。
「春になったら作物が出来てるはずないでしょ。そんなのお前らが一番知ってるでしょう」
「人が家に隠してるのも知ってる」
「隠してんじゃないの。あれは僕らの食べ物だよ。僕らも食べないと死ぬの」
「けち」
「どこで覚えたその言葉!」
「そこらの精霊」
ノルンの成獣は冬の発情期が終わり、我に返ったらお腹空くらしく食べ物の話しかしない。アンの子たちは甲斐甲斐しく子どもを育てている。
「リシャール様、なに言ってますか?」
「新鮮なエサをよこせ。豆をよこせ、備蓄のイモを出せと……ムカつく!」
「アハハッ相変わらずですね」
毛皮は思いのほか需要があったこの冬。でも初期投資の回収には、何年もかかる見込みなんだ。こいつら見た目より食う!本当によく食べるんだ。丸くてふかふかで……これの維持は、相当食べてるからなのだと分かった。時々土を掘ってミミズとか虫も食べるから、お肉も食べると分かった。だから廃棄のお肉や骨も持ち込んでる。
「今年から売り物にならない野菜や果物もこちらが買い取る計画になってますから、昨年よりいい思いがこいつらも出来ますよ」
「うん。だから待てと言ったんだけどさあ。聞きやしねえ」
牧場の柵越しにヌーマリムと話すんだ。この柵大事。ないと彼らは僕によじ登って訴えてくるから、泥だらけになるんだ。
「リシャール見て」
一匹のヌーマリムが、赤ちゃんを口にくわえて見せに来た。
「うん?ああ、かわいいね」
「でしょ?リンゴくれ。甘いのが欲しい」
「ぐふぅ……もうすぐいちごの季節だから……」
「そう?待ってるから」
「うん……」
隣の人に話したらアハハッと笑う。リシャール様そんなの聞いてたらキリがありません。こちらでお茶をと事務所に戻った。
「こちらが先月の収支です。今月からは間引きの野菜などが増えますから、餌代は冬手前まではこの半分になる予定です」
「うん。ならなんとか数年で収支は増に出来そうだね」
「ええ。雑食ですからね」
初期投資と管理の人たちのお給金もあるから、そう簡単にはプラスにはならない。でもね、彼らは本来簡単に捕まらないんだ、ヌーマリムはね。たくさんの群れで生活してる訳じゃなく、春と秋に繁殖のために一時的に群れる。その時を狙わないとなんだ。でも春は毛皮は必要ない。秋は獣ばかりか人も付け狙うのを知ってるから警戒心も強く、畑でしか捕まらない。
「なんと言っても畑のヌーマリムは毛並みが悪い」
「うん。力の弱い個体とは思わなかった」
森できちんと繁殖しているヌーマリムは強いんだ。他を蹴散らし餌場確保。そして自分の群れ以外は攻撃して排除する弱肉強食だ。弱い個体は森をさまよう。どんぐりや美味しい木の実、野生の果物の場所はぽつんとあってそれを探して食べる。とても手間がかかるそうだ。そのうち仕方なくなんでも食べて生き延びる。当然痩せて毛もバサバサ。
「わかる気はしますよ。俺がもしヌーマリムなら、畑襲いますもん」
「うん、僕もね」
彼らは食べ物と繁殖しか考えてない。この冬話しててそれしか分からなかったんだ。この牧場の責任者ユリアスは、動物とはそういうものでしょう?と。
「人がおかしいと思ってますよ。私はね」
「そう?」
「ええ。でも致し方ない進化とも考えてます」
人に近い者も含め、木の葉で栄養も取れず身を守る爪もない。魔族ですら木の皮を食べて生きることは不可能。動物としては弱いんですよって。家もなく裸で放り出されたら、毛皮のない我らはあっという間に凍死するし、暖かい所は猛獣が多くかなり厳しい。食べられる獲物でしかなくなる。だからこのように進化した。
「学校で習ったね」
「ええ。なんだかんだないものを用意して強さを手に入れた。彼らは初めから生きる手段を持ってて、これだけ人に捕まってもたくさん増える。そういうことですよ」
「うん」
でも、あなたのおかげで新たな産業がこの地に作られました。きっと毛皮の産地となって領地が潤うでしょうって。なったらいいなあ。
「そのための規制を今作ってますからね。他国や他領が真似する頃には、我が領地は有名になってるはずですから」
「うん」
お茶を飲みながらこれからのことを詰める。やることはたくさんで販路も開拓中。品質のよい毛皮はきっと売れるはず。庶民に毛皮を売りつけるのさ。うはは。
「毛皮は暖かいですが庶民には高嶺の花。色んな色にも染められますからきっと売れます」
「うん。僕がんばる」
こんな感じで仕事が忙しくなり、僕は森に遊びには行けなくなってて、トリムやミュイには適当に遊んでとお願いしている。ロベールは鉱山の開拓を公爵のふたりとせっせとしてるし、東は今とても忙しいんだ。ふたりでゆっくり話すのは寝る前くらい。
「鉱山はなんとか村は出来て掘削も始まった。だが、領地にはまだほど遠い」
「そう。人が来ない?」
「うん。給金はいいが危険も多い。簡単には集まらんなあ」
「そっか」
「長い目で見てだな。リーンハルトが公爵になる頃完成すればいいくらいだ」
「そうだね」
街だけ作るとか農地を作るだけならすぐ出来る。でもそこに住む人は簡単にはね。人がいない街なんて意味はないんだ。
「お前はどうなんだ?ヌーマリム」
「ゔっ美味いエサくれ……は置いといて。毛皮の販路だね。春の子供たちもアンに二~三匹くらいずつ生まれてて、ノルンたちは一年後には売れる。今季で二年目のアンも毛皮になる予定で総数は変わらんか微増。冬前の毛皮を見本に今から服飾関係に売り込まないとかな」
「なんとかなるのか?」
「服飾ギルドにお願いしてるけど、僕やあなた、公爵二人に夏でも身につけてもらって、家臣にどうですかあ~って売り込む予定」
夏に毛皮?と嫌そうなお顔。まあ、分かる。
「防寒着にいいよってね。それとね、なんか毛長のもいるんだよ。あれは他のキツネとかと張り合えるはず。別にして繁殖をお願いしてる」
「ふーん。年いってる毛皮は庶民に、高級そうなのは貴族にか」
「うん」
始めたばかりだから売り込んでも騎士にとなるかもだが、野生の物との差別化が重要だ。高いだけの理由もだが、こういったことは他が真似るのも早い。全て先手をとロベール。
「うん。この東の地が本家で最高品質を保てると売り込むんだ。なんたってヌーマリムとお話できるのは我らだけ。これは強みよ」
「おう。頼むな」
まあ、珍しい精霊使いを雇われたらこの差はなくなる。先手必勝だ。
「リシャール」
「はい?」
「これどうぞ」
「なに?」
小さな箱をもらった。なんだろうと開けると……不思議な色だなあ。魔石の紫より赤みが強くて、とても美しい。
「これ魔石?」
「うん。調べたらピジョンブラッドと魔石の中間くらいらしい。鉱山で出た」
「うそっすごい。純粋に宝石でもいいくらい透明度も高くて……うわあ」
僕は天井の明かりにかざした。原石だからカットが悪いけど、それでもキラキラと美しい。気泡もほとんどないしクラックも少ない。なんて品質のいい。魔石に使うのがもったいないくらいだ。
「宝石より付与を強く多く出来る魔石として、貴金属扱いで一部の高品質は売ろうかなって」
「それがいい。これは普通の魔石と同等はないな」
ちなみにヌーマリムに似た魔獣、チークスという生き物がいる。あれの魔石は薄い紫というか優しいすみれ色で、魔石ではなく宝石として流通してる。魔石としてはクズすぎてね。あの色の宝石もなくはないけど、原石は高い。だからチークスの石は庶民に大人気。でも、庶民が自分で討伐に行くのはお勧めしない。
牙は長く爪は鋭くそして獰猛。群れは恐怖でしかない。むかし術士の頃、大群にパニックになった騎士が驚いて、チークスに火を付けたおバカさんがいた。想像を絶する山火事になったんだ。あいつら逃げるからね。見た目は怖いけど、ネズミみたいな動きをする魔獣でねえ。消しても消しても森に火の手が上がる。なんか思い出した。
「これどうするの?」
「魔石にも宝石にもおすすめと……名前はないから付けて売り込む」
「センスよさそうな……アンリ様?」
「うん。考えてる」
かなりありそうなんだけどまだ未知数。色も安定してなくて、これは一番キレイなところだそうだ。
「今魔法省と協議中なんだ。でもそれはお前に」
「え?くれるの?」
「うん。俺の愛の証に。ピジョンブラッドは王族でも高いからな」
「ありがとう。嬉しい」
まずお前が貴金属に加工して、夜会などに出て宣伝してくれ。貴族に売りつけると。
「付与もお前なら好きに出来るだろ?」
「商売ですか……喜んで損した」
「そんなこと言うなよ。愛してるから最初にあげたのにぃ」
「うん」
ちなみに公爵たちも持って帰ってて、奥方に付けさせるそうです。ほら見ろ!商売だろ!
「お前もだろ?毛皮を夏に着せようと企んでるんだから」
「まあ」
我が国はこうして大きくなったんだ。王族から商売人なんだよーんと開き直った。その通りなんだけれども。
「今流行りの魔族デザインの剣でも甲冑、貴金属にも映えそうだろ?」
「うん」
紅色っていうのかな。とても綺麗なのは本当なんだ。美しい紫がかった赤。まあ、ロベールの役に立つからいいか。
「ありがとう」
「うん」
そして、毛皮とこの魔石を携え、今度の西の夜会にレッツゴー。
11
あなたにおすすめの小説
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
【本編完結】最強魔導騎士は、騎士団長に頭を撫でて欲しい【番外編あり】
ゆらり
BL
帝国の侵略から国境を守る、レゲムアーク皇国第一魔導騎士団の駐屯地に派遣された、新人の魔導騎士ネウクレア。
着任当日に勃発した砲撃防衛戦で、彼は敵の砲撃部隊を単独で壊滅に追いやった。
凄まじい能力を持つ彼を部下として迎え入れた騎士団長セディウスは、研究機関育ちであるネウクレアの独特な言動に戸惑いながらも、全身鎧の下に隠された……どこか歪ではあるが、純粋無垢であどけない姿に触れたことで、彼に対して強い庇護欲を抱いてしまう。
撫でて、抱きしめて、甘やかしたい。
帝国との全面戦争が迫るなか、ネウクレアへの深い想いと、皇国の守護者たる騎士としての責務の間で、セディウスは葛藤する。
独身なのに父性強めな騎士団長×不憫な生い立ちで情緒薄めな甘えたがり魔導騎士+仲が良すぎる副官コンビ。
甘いだけじゃない、骨太文体でお送りする軍記物BL小説です。番外は日常エピソード中心。ややダーク・ファンタジー寄り。
※ぼかしなし、本当の意味で全年齢向け。
★お気に入りやいいね、エールをありがとうございます! お気に召しましたらぜひポチリとお願いします。凄く励みになります!
異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!
めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈
社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。
もらった能力は“全言語理解”と“回復力”!
……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈
キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん!
出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。
最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈
攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉
--------------------
※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!
バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?
cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき)
ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。
「そうだ、バイトをしよう!」
一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。
教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった!
なんで元カレがここにいるんだよ!
俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。
「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」
「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」
なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ!
もう一度期待したら、また傷つく?
あの時、俺たちが別れた本当の理由は──?
「そろそろ我慢の限界かも」
冷酷無慈悲なラスボス王子はモブの従者を逃がさない
北川晶
BL
冷徹王子に殺されるモブ従者の子供時代に転生したので、死亡回避に奔走するけど、なんでか婚約者になって執着溺愛王子から逃げられない話。
ノワールは四歳のときに乙女ゲーム『花びらを恋の数だけ抱きしめて』の世界に転生したと気づいた。自分の役どころは冷酷無慈悲なラスボス王子ネロディアスの従者。従者になってしまうと十八歳でラスボス王子に殺される運命だ。
四歳である今はまだ従者ではない。
死亡回避のためネロディアスにみつからぬようにしていたが、なぜかうまくいかないし、その上婚約することにもなってしまった??
十八歳で死にたくないので、婚約も従者もごめんです。だけど家の事情で断れない。
こうなったら婚約も従者契約も撤回するよう王子を説得しよう!
そう思ったノワールはなんとか策を練るのだが、ネロディアスは撤回どころかもっと執着してきてーー!?
クールで理論派、ラスボスからなんとか逃げたいモブ従者のノワールと、そんな従者を絶対逃がさない冷酷無慈悲?なラスボス王子ネロディアスの恋愛頭脳戦。
【土壌改良】スキルで追放された俺、辺境で奇跡の野菜を作ってたら、聖剣の呪いに苦しむ伝説の英雄がやってきて胃袋と心を掴んでしまった
水凪しおん
BL
戦闘にも魔法にも役立たない【土壌改良】スキルを授かった伯爵家三男のフィンは、実家から追放され、痩せ果てた辺境の地へと送られる。しかし、彼は全くめげていなかった。「美味しい野菜が育てばそれでいいや」と、のんびり畑を耕し始める。
そんな彼の作る野菜は、文献にしか存在しない幻の品種だったり、食べた者の体調を回復させたりと、とんでもない奇跡の作物だった。
ある嵐の夜、フィンは一人の男と出会う。彼の名はアッシュ。魔王を倒した伝説の英雄だが、聖剣の呪いに蝕まれ、死を待つ身だった。
フィンの作る野菜スープを口にし、初めて呪いの痛みから解放されたアッシュは、フィンに宣言する。「君の作る野菜が毎日食べたい。……夫もできる」と。
ハズレスキルだと思っていた力は、実は世界を浄化する『創生の力』だった!?
無自覚な追放貴族と、彼に胃袋と心を掴まれた最強の元英雄。二人の甘くて美味しい辺境開拓スローライフが、今、始まる。
【完結】悪役令息の従者に転職しました
* ゆるゆ
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
透夜×ロロァのお話です。
本編完結、『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました!
時々おまけを更新するかもです。
『悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?』のカイの師匠も
『悪役令息の伴侶(予定)に転生しました』のトマの師匠も、このお話の主人公、透夜です!(笑)
大陸中に、かっこいー激つよ従僕たちを輸出して、悪役令息たちをたすける透夜(笑)
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる