真紅のダリアは闇夜に開く 〜本能のまま好きに生きてたら奇跡が起きた〜

琴音

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10 王宮の中庭

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 眩しさに目が慣れると素敵なお庭があった。

「すげえーッ」

 中庭はコの字に建物が囲むようにある。小さな噴水があり、足元は白い石が敷いてある。その近くに唐草をあしらった金属製の椅子とテーブルが置いてあり、お尻が痛くないようにかクッションもある。ゴブラン織りの生地に、花をモチーフにした金糸の刺しゅうでこちらも唐草文様。タッセルも同じく金糸でかわいい。

 ここは城の本棟と同じ真っ白な建物だ。南国らしいと評判の城、屋根や塔の先端は朱色。少し丸みのある塔の屋根は珍しく、それも観光客を喜ばせる。

 ここは乾いた風の吹く南国寄りで、本国とは違い冬でもコートなどいらない。植栽も低木が感じよく植えられ、木陰を作るこの島特有の細かい葉のつく木(名前は知らない)が植えられている。

「いい……落ち着く中庭だ」

 祭りは春の中頃に開催される。ちょっと前はシャツだけでは肌寒い日もあったけど今は丁度いい。日差しもジリジリと焼け付くような感じでもなく……この季節はみんな好き。

 柔らかい風が頬を撫でる。ふふっ久しぶりだな。

「お茶をお持ちしました」
「ありがとう存じます」
「いいえ」

 このメイドさん、俺に敬語なのが気になるけど……今までここにお召になってもここまでではなかった。まあ、お相手が催しの時の貴族だったからかもだけど。

「あの、あなたも貴族の方でしょう?俺に敬語はいりませんよ」
「ふふっ癖ですから気にせずに。それとあなたのお店ここは似ていますでしょう?」
「え?ご存じでしたか」

 メイドさんはもちろんとニッコリ。番が見つかる前は時々使わせてもらいましたからって。そっか。

「あなたのおうちは、元々この国の貴族からなのですよ」
「は?」

 ジルベールや俺んちとか、少し残る国の創設の頃からの四つの老舗。この国の四大貴族の身内からだそう。知らなかった。

「この国に併合された頃はそれこそ気分が乗ればそこら中でいたしてましてね。本土の人が目に余るとクレームが出ましてね」
「まあそうか。俺たちには違和感はありませんが」
「そうですね。でもよそでは違う」

 男女の秘め事は人に見せるものでもないし、ムラムラしたからとその場でってのはない。ウンウンそうね。

「我らにはそういった羞恥心はない。動物的だし……この島は危険な動物も魔物もいない。我らが島の生態系の頂点でしたから、そのせいでしょうね」
「同意します」

 昔はズボンだけで生活していたと記録にはある。女みたいに乳ないしね。でも併合されて他国との交流が増えると変わっていったと習った。

「古い血の民族です。もう我らと同じ血や近しい種族はいませんしね」
「はい……」

 彼も椅子に座り、少しお話しましょうかと微笑む。ありがたいです。

「民と貴族は習う歴史も他も違う。読み書きと愛国心が持てる程度の歴史ではすまず、習うことは多岐に渡ります」
「聞いております」

 少し昔話をしましょう。知識は邪魔になりませんよって。ウンウンと彼の話を聞くことにした。

 大昔からここに住む我が民族。大陸にも似たような民族が多数いた。まあ、本土のような、俗に言う「ベータ」と呼ばれる人たちが主流であることは変わらない。ここは俺も知ってる。

「ですが我らに近い民族は、争いが本当に嫌いな人たちが多かった」
「はい」

 少数民族であることが災いする。そんな人たちだから、ダンジョンも魔物も出ない山の盆地に国があったり、ここと同じ島や海沿いや内陸の安全なところに住まう人たちが多かった。まあそうだろう。

「穏やかに森の獣を狩り、田畑を耕して繁殖を楽しみとして生活する。賑やかに子どもたちが走り回り奴隷など存在しません」
「ええ」

 王様も貴族も民に近く一緒に国の繁栄を願う人々だった。確証はないが遠くの別の大陸には「獣人」なる人々がいる。我らはその亜種ではないかと言われているそうだ。初めて聞いたよ。

「動物の姿と人のハイブリッドのような見た目で、我らと同じように単種で国を作る。その動物のことわりで生きる人たちだそうです」
「へえ。似てますね」
「はい。だからそう言われてます」

 穏やかに話すこの方はさすが貴族って感じ。店に来る貴族はもうそのね。ちんこ勃起させて、もう我慢ならないって感じで駆け込んでくることが多い。お仕事のストレスかな?とか思ってた。普段はこんなに穏やかなんだな。

「わが国は鳥の仲間とかの一族では?なんて言われています。しなやかな体、美しい見た目の人も多い。でもゴリマッチョもいる。彼らは猛禽系の鳥の方かも?なんてね」
「ハハッ確かに」

 でもそんな方も精悍でもどこか他の男とは違う美しさがある。愛嬌というか「男臭い感じ」はないんだ。島民はどこかみんな美しくかっこいい。

「でも我らを残しみないなくなった。戦闘が嫌いで、交渉で何とかなるなんて甘い考えが根底にあるから」
「はい……」

 大多数の人々はそんな考えは持っていない。それは今も昔も。だから対策としてこの島は武力に特化して騎士も兵士も多い。当然街の中にも衛兵が多い。他国と渡り合うには防御に手を抜いてはならぬ。そう属国になった時に王は決断した。

「生き残ったのは攻め入られた時、相手の王が我らの気質の理解があったから。なかったら今頃我らもいなかったのです」
「ですね」

 そして大国の庇護のもと今がある。独立の機運があるが、属国であることを捨てないのはそのため。大国の庇護と……ふふっと彼は微笑んだ。

「我らが強いから逃がしたくないのが本土の本音。国の軍事の重要なポストはですね。我が島の貴族や戦士が役職に就くのです。ですからね」
「ええ。ふふっ」

 忠誠心に厚くめちゃくちゃ強い。魔法で体が治らないくらいになろうとも敵に襲いかかる、勇猛果敢な民族でもある。エッチくて繁殖力も高く、物理的に強い。もう最強だろ?と思うけど、優しさというか相手の状況を思いやる気持ちが強く、それが他の民族を滅びの道に進ませた。

「完璧な人などいないのです。隙など見る人から見ればどこにでもある。我らは特に」
「ええ」

 いつまでこうして生きられるかは神のみぞ知るって感じだよね。俺らはこの島と本土ににしかいない。本気で攻められたら数で勝てないのは明白だ。

「だから我らは作物をほぼ作っていない。本国に依存するようにされているんです。森も林も草原もある大きな島なのに」
「そっか……農夫が殆どいないし、国も畑作れとか言いませんね」
「本国に歯向かわせないためですね」

 歯向かえばすぐに飢える。確かに魚だけではなあ。現代人には厳しいな。野菜の種もないだろうしなあ。

「でしょう?うちは魚と砂糖と柑橘類だけ。畜産も本国から持ち込んだ鶏のみです。一気に食べちゃったらすぐにいなくなる。魚だけ……は考えたくないですね」
「ええ。俺肉好きだし」

 話が長くなりました。どうぞごゆっくり。扉は開いてますからねって。

「先ほどの扉の隣から、あなたのお部屋に入れますから」
「はい」

 夕食の頃お声がけいたしますねって彼は掃き出し窓の方に歩き出した。

「あー太陽気持ちいい。彼はオメガだから匂いにも反応せずで楽しかった」

 ここで緊張して過ごしてもなんにもならないからなあ。王子の相手をしながらゆっくり過ごすか。店は気になるけどシリルが上手くやるだろう。……いややってくれ。旦那たちはちんこの命令で役立たずかもしれんから。

 俺は長椅子の方に移動してクッションを枕に横になった。

「いやーいい。お日様いい!」

 目を閉じて風に当たる。そよそよと吹く風がなんと心地良いのやら。俺の発情はゆっくりと増している。毎年祭りの後半がピークで今はそうでもない。旦那様の強い香りが近くになければね。

 だけどピーク近くになると誰でよくなる。それこそ抑制剤飲まなきゃ仕事にもならないんだ。でもな旦那以外としても子は出来ない。これは不思議なんだけどな。人体とは分からんもんだ。

「あっ…んっ……なんだ?」

 寝てたのか目を開けると知らん人が俺にキスしてた。

「かわいい……やっぱりかわいい」
「へ?」

 いきなりごめんねって誰か。俺は訳分からずほんやりとその人を見つめた。





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