エリート上司に完全に落とされるまで

琴音

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一章 お、おれ?

9 仲直り

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 食べ終わる頃にはなんとか涙は止まったけどひどい顔のはずで、道行く人に見られたくなくて下向いて歩いていた。

「とーも」
「はい」
「手を繋ごうよ」
「え?」

 道路を見ていたらスッと手が差し出された。えっと?と顔を上げた。

「この辺は会社の人も飲みに来てたりするよ?バレちゃうよ?」
「別にいいさ」
「ええ?」

 どういう風の吹き回し?和樹はバレたくなかったんじゃないの?

「なんで?」
「ん~?僕は会社では恋の話とかにはのらないで来たんだ。バレたくないのもあるけど、恋の話は恋人と二人だけのものと考えてた。だけど、それが智に不安にさせる原因かなと思ってさ」
「いやいや……あなたの評価や評判に関わるんじゃないの?」

 あははと大笑い。

「セクシャリティで出世に響くなら、会社がおかしい。評判はどうでもいい」
「はあ……」

 まあ、ゲイだからどうこうなってるなんて聞いたことはないけどさ。ゲイカップルの方で部長もいることはいる、うちの部長だ。ほらって言われれて眺めた。ならと手を取ったらギュッと指を絡めて握ってくれた。

「あはは。僕の智がこの手に帰って来たね」
「あ、うん」

「僕の智」なんて……また涙が零れた。ダメだな一度泣くと涙腺がガバガバだ。

「泣くなよ」

 そう言って指で涙を拭ってくれた。
 俺今までこの人のどこを見てたんだろう。スペックとか、絶倫しか見てなかったのかな?こんな優しげな眼差しを俺に向けてたのか……俺はぼーっと見惚れてしまった。

「智、煽るのやめて」
「へ?」
「その欲しそうな顔は外では毒だよ」
「そ、そんな顔してないよ!」
「してる。勃つの我慢するの辛い」
「ふえ?」

 あははと手を引かれて歩き出した。彼の部屋は会社から近くて歩ける距離だ。……あれ?そういえば、うちの課長クラスの人の給料でこんな場所に住めるって?あれれ?まあ後で聞くか。
 俺この一年近く、彼のどこを見てたんだろうな。なにも知らないじゃないか。恋してる自分に酔ってたのか?それじゃ子供じゃねえかよ!情けなさすぎだ。
 ブツブツ考えながら部屋に着くと水のペットボトルをくれた。まあ俺は大して飲んでないけどね。ソファに座る俺を眺めて、

「うん。智が部屋にいる。いいね」
「あ…ごめん」
「いや、もう済んだことだ」

 まあ風呂入って着替えようと言われて入った。たまに一緒に入るんだけど、さすがに今日は一緒には入らなかった。

「さて、なにから話すかな。僕がこのひと月苛ついてたことからかな」
「……はい」

 隣に座ると、まずお前は僕の膝に座れってポンポン。俺はゴソゴソと膝に乗った。

「んふふっ智だあ……やっぱり智の定位置はここだな」

 その嬉しそうな声に、俺は腕を回して抱きついた。そうこの……気持ちいい体が好き。俺の大好きな和樹の……自分で手放したけど、戻ってみれば、これほど居心地のいい場所はないと感じた。

「智……愛してる」

 真面目な声がした。

「ごめんなさい。図々しいけど俺も愛してます」
「うん」

 そのまま聞けって言われた。
 和樹はこの期間、なんとか俺と会って話をしたかったそうだ。なにか誤解があるんじゃないかと感じてて、ずっと考えていたけど分かんない。分からないことに苛ついたり、怒ったり。でもさっき分かったけどねって俺の背中を撫でた。

「僕は智がそんなこと考えてるなんて思いもしなかった。現状維持タイプかと思ってたからね」
「それは今でもそうだよ?でも理想ってあるじゃない。かっこいい和樹みたいになりたいってさ」
「まあ……そうか」

 俺が地方の支店の時は憧れるような上司も先輩もいなくて元彼も違う。彼は同じくらいの考え方で、それでいいよねって感じ。
 私生活も同じくらいの生活パターンで、苦にはならなかった。でも彼は俺が育つに従って変わっていった。同じでいいなんて思ってなかったんだ。
 常に俺より一歩先にいたかったんたろうと今は思う。仕事も生活もね。だからあんなになった。

「彼がそんな考えでも、俺は先輩は先輩だし歳もずっと上で追いつくはずもないのに。だから俺が上になることなんてないのにってずっと思ってた」
「そうだね。でも彼は育ってひとりで自分より成績を上げる智が許せなかった」
「うん」
 
 多分そうだ、だからあれだけキレたんだと思う。下に見ていた俺が隣に立とうと迫ってくる気がして憎く感じたんだろう。うちは上がつかえてて、課長以上は簡単にはなれないなら。

「和樹とはそんなこと考えたこともなかった。比べる場所に俺は立ってなかったからね」

 俺は深呼吸して続けた。

「だけどさ。ここまで違うと今度は俺の見劣りが半端なくて、追い付きたくなったんだ。ちょびっとでもね。俺隣りにいてもいいよねって自分に言いたくて」

 バカだなあって首にチュッて。

「八年は決して短い時間じゃない。僕も智くらいの頃は同じようなもんさ」
「あ?それは嘘だろ。和樹はきっと優秀だったはずだ」

 やだなあ嘘じゃないよ。入社数年なんてそんなに差なんてないもんだよと撫でてくれる。

「俺は同じことしてれば成長するかなって。仕事の仕方も見てたけど、無理としか感じなかった。でも足掻いてはいたんだ」
「僕のためにか……」

 それもあるけど……

「自分ためでもあったけどね。和樹にがっかりされたくなかったんだ」

 ん?……お腹に硬いものが。ええ?今勃つような話しあった?あったかあ?

「和樹」
「うん?」
「硬い」
「うん。僕のためにって言うから嬉しくて」
「そこ?」

 改めて言われるとかわいくて堪んない。僕タチだけど普段は弟のせいか、受け身な資質たちなんだそう。いつもは相手が強くてついていくような感じだったらしい。
 でも智には僕を求めて欲しいし、身も心も受け入れて欲しいと思ってる。僕に夢中になって逃げられなくしたいって強い感情があるんだってさ。

「なんで?」
「ふふっ僕の男としての本能を刺激するんだよ。お前がかわいいのが悪い」
「何言ってんの?」

 そのまんまだよ。素直な智はかわいくて愛しくてねって。俺は嬉しいけどかわいくはないだろ?

「かわいいよ。だから振られても追いかけたんだ。失いたくなかったんだよ。これも初めてだ」
「うそ……」

 俺を起こして頬を両手で包んでにっこり。こんなに好きになったのはお前だけだよって。

「ほら、こんなにかわいい」

 そう?そうかあ?俺は不審な目で彼を見つめた。

「智は僕の言葉を信じて僕を美化しすぎず感じてくれ」
「うん……?」

 納得してないね?ってチュッ

「僕は智が言うほどきちんとしてない。あのね、僕は知らないことを知るのが趣味なんだ。なにかってことじゃないんだよ。その時に気になったことを知りたいだけ」
「そうなの?」

 きちんと話したことはなかったよねって。僕はスキルアップのためにやってるんじゃない。興味を持ったことをやってるだけ。それに対してお金は惜しまないし、時間もね。寝て過ごすのが嫌なのはそのチャンスが減るかもって思うから。寝て過ごすことに意味があれば全然気にしないんだそうだ。

「智が寝てたいって日は僕も付き合うよ。疲れてないわけじゃないからね」
「うん。なら言う」

 俺の目をじーっと見て、

「それとさ。気分が乗らない日は言ってよ。僕だけで出かけるのは苦にならないから」
「あ、うん。でもそれだと俺は寂しいかも……」

 和樹は俺の頬を撫でて話してたのに、ヤダよこの子はって本気でキスしてきた。あん……

「かず……あふっ待って」
「勃ってるのに煽んな」
「煽ってなんか……んぅ……っ」

 俺も勃って……気持ちいい。和樹がやっぱり好きだ……気持ちよくて震える。和樹好きだよ、大好きだ。俺は腕を首に回してもっと欲しいってねだった。あこがれの先の妬みも、和樹の言葉でどうでもよくなった。

「話はこれからも出来る。なあ、しゃぶって欲しいんだ。智を見ながら射精したい」
「ハァハァ……うん」

 膝から床に降りて和樹のを出した。我慢してたんだね、けっこう漏れてる。
 ネロンと舐めるとウッと聞こえた。咥えて舌を動かすと先から漏れて……すげえ硬くてパンパンだ。たまから舐め上げるともう全部硬くてね。

「智気持ちいい……ふっ」
「すぐ出したい?」

 ネロネロと先を舐め回わして彼の好きなところを重点的に吸ったり舐めたり。

「うっ…楽しませて」

 俺の頭を掴んでハァハァと息遣いが聞こえる。この息遣いが好きゾクゾクするんだ。舐めるだけで興奮して味わっていた。

「なあ、咥えてくれ」
「うん」

 咥えると腰を振ってきた。我慢出来ないんだね。口いっぱいで苦しいのに気持ちいい。

「クッ…ウッ……ッ口を離すなよ」
「うっ…ん……」

 奥に押し込まれ…あっ…ダメ上手く飲め…な……ゲホッと咳込み口から溢れてしまった。

「ハァハァ……ごめん。僕のでデロデロ。やばいな」
「ハァハァ上手くいかなかった」

 和樹は近くのティッシュを取って口を拭いてくれた。

「いいよ、飲んで欲しいわけじゃない。でもお尻疼くよね。ゴソゴソしてたろ」

 仕方ないだろ。興奮すると疼くもん。

「和樹の久しぶりで美味しかった」
「だろ?今度はここな」

 俺を抱き上げて膝に座らせると下着に手を入れて穴を撫でた。俺はそれだけで気持ちよくて「あうっ」と声が。

「ここは正直だね。ベッドでゆっくり智を味あわせてよ」
「うん」

 移動してベッドに押し倒されるとすぐに解してくれた。やっぱりしてないから硬くなってて簡単に解れはしないが、でも気持ちいい。

「智は恋人いないと後ろはいじらなくなるの?」
「あっうっ……うん。朝立ちでもしなけれ…ああっ前もしごきもしなっ…出ちゃうぅ」
「出しな」

 オナニー好きな人はバイブとかプラグとかかな、ひとりでも楽しむらしいけど、俺は恋人のちんこだけでいい。ここは俺の聖域で……おもちゃとか嫌なんだ。彼が入れたいなら入れてくれて構わないけど、自分ではない。

「ねえ」
「なに?ハァハァ」

 俺が出して喘いでいると和樹がまさぐりながら、

「おもちゃは嫌いかな?」
「え?あなたが使いたいなら構わないけど」
「よかった」

 サイドテーブルから細めの……おおっいつの間に買ってんの?

「智のエッチな姿堪能させて」
「ふえ?」
「見せてよ」

 そう言うとローションを尻にもおもちゃにもたっぷり塗ってぶすり。

「うっ…」
「どう?」
「俺おもちゃ初めてで…ああっ」

 腰を持ち上げてグチュグチュとこね回して……はうっ

「エロ……僕セックス好きなんだ」
「ハァハァ知ってる」
「このひと月どれだけ我慢してたかわかる?」
「ごめ……ああ!なに!」

 ブーッと音が!これ動くやつだ!振動してうねうねと中をかき回すタイプ!ヤバッこれくぅッ!

「指では出来ない快感があるだろ?」
「うぐぅ……コレすぐ出ちゃうぅヤバい!」
「出して僕をここに入れさせて」
「待って!ホントに!」

 我慢出来なくてあーーっ!

「いいよ。ゾクゾクする」

 俺の射精をガン見してニヤニヤ。すっげえ悪い顔してる。すぐに抜いて指を入れてグリグリ。

「解れたね。僕早く智の中に入りたくてごめん。今晩は寝かさないから覚悟してくれ」
「ハァハァ……うん」

 そう言うと脚広げてずぶり。あん……ちんこの方がいい。あったかいし太くていい。もう痛くもないし。

「口もいいが中は格別だね」
「はあっ…んっかずきぃ」

 獣みたいになってる和樹が堪んない。時々こんな感情むき出しの乱暴なセックスが実は俺は好き。ゴンゴンと突きまくって気遣わず、自分の快感におかしくなってる顔見るの……あうっ…好き。

「突くたびに出てるな」
「うっあっ…ふっひっ……気持ち…いんだ」
「僕もだ」

 乱暴なキスも、つねるようにつまむ乳首も何もかも気持ちいい……

「もっとしてぇ」
「ああ」

 キスもねだって自分から上に乗って腰を振った。奥に欲しくて……

「智もこんなふうになるんだな」
「うん…ハァハァ……和樹とのセックスは楽しいし気持ちいいんだ。優しいのも好きだけどこんな乱暴なのもね。上は深くて入って俺好きなんだ」
「そうか」

 俺は腰を振りながらそういや前の彼とは早々にマンネリ化してたなって思った。まあ、安定の気持ちよさもあったし、悪くはなかったけどさ。自分で奥の気持ちいいところに当ててあんあん喘いでいたら、カハッ!強く押し込まれた。

「なにすんの!」
「僕のこと以外を考えただろ?違うか?」
「ハァハァ……う、うん。あんまり気持ちよくてそういやって」
「他のことなんか考えるな。僕だけを感じろ」
「ごめん」

 そう言うと俺をうつ伏せにしてドンドンと突く。

「以前の彼でも思い出してたのか?」
「……何で分かるの?」
「なんとなく感じた」

 コワッ!これだけ興奮してても冷静なんだ……

「智は僕のものだ。誰も見るな。過去も忘れろ」
「んあっうん」

 和樹はこのひと月を埋めるように俺を抱いた。いくらイッても足りないと抱いていた。僕の智と何度も言いながらね。俺はそのたびに嬉しくて涙が零れた。
「僕の智」なんていい響きなんだ。その言葉は何度聞いても俺を絶頂させた。

「愛してる和樹」
「当たり前だ。僕はきっとお前より愛してるはずだ」
「うん」

 朝日が差し込むくらいになってやっと和樹は落ち着いた。

「あ~さすがに疲れた」
「俺はとっくに疲れてたよ」
「そうか」

 和樹は途中でゴムつけるの面倒臭くなったのか生でしたらしく、ベッドは精液とローションで所々冷たくなっていた。俺も和樹もドロドロにまみれて抱き合ってたからね。

「シャワー……はいいや。寝るぞ智」
「あ、うん」

 こんな激しいセックス初めてだ。シャワー入らないで寝ようなんてのもね。朝までしてるなんてのはいつもだけど、シーツ変えないで寝るとかはない。あはは、和樹らしくはないね。

「ほら来いよ」
「うん」

 俺は胸に収まった。もう疲れて眠いから気にならないからいいかと目を閉じると、すぐに和樹の寝息が聞こえる。
 かわいい……俺はもう一度目を開けて頬を撫でた。俺はこの人をもっと知りたい。表面しか見てなかった彼をもっともっとね。

「愛してます和樹」

 俺は彼の胸に擦りついた。んふふっ大好きだ。俺は彼がなにかする時どう思っているか、なにを考えているかとか、そんな内側が知りたいと強く思ったんだ。
 それは今まで俺が見ているつもりになっていた部分。それを感じたいと強く思った。もっと好きになれると感じるから。



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