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前編 ユルバスカル王国編
58 狙っては難しかった
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屋敷に帰っても上向かない気持ち。優しい旦那様は黙って抱いてくれている。話したくなったらでいいって。それに甘えて抱かれていた。
まだ私には早い気がする。体ではなく心が。仕事とは違うのよね。ある意味仕事だけど、そうじゃない。王族だから本当に産みっぱなしもあり。でもそんなことをする自分が嫌いなの。私自身がかわいがられた子どもだから。だから自分の子も大切に慈しみたい。こんなことお母様のロッティにも言えない。ため息しか出ない。
「サイラス」
「なに?」
「自分が嫌いなの」
「へ?」
こんなの話せる人はいなくて、でも親になるのは私たち。ならば気持ちを話すのは旦那様になる。嫌われても話さなくてはなにも変わらない。つらつらと思ってることを話した。
「嫌いになってもいいです。心が育ってないのです」
「うん。俺も似たようなもんだ。だからふたりで頑張ろうと前に言ったんだよ」
ふたりでいるのが幸せで俺はそれいいと今でも思っている。だが、王族として領地を守る責任もあるし、俺たちがある意味荒らした領地を他の王族が管理できると思う?と聞く。それ無理でしょ。前に戻そうとする領主なら反旗を翻しかねない。それほどまでに他とうちは別の国のようになってしまった。
「ある意味やり方だけならライラの国みたいになってしまった。それをこの国の人が管理出来るか不安だろ。だから絶対ひとりは産まないとマズい」
「うん」
子どもはその地の領主となり直轄地の主となる。男の子なら近衛騎士になり国や王を支え、領地の管理業務になる。この国は近隣に比べ若い国。荒れ地も多く開拓の余地も多い。隣ももらったから直轄地は増えているけどねって。
「世代が変わるとその子どもたちが運営する国になるからさ」
「うん」
「前王の弟の子など立場は弱くなるもの。だからこそ良い土地を子に残したいし、民に苦労はさせたくないんだ」
サイラスは急に大人になったみたいな口ぶりね。なのに私は何一つ育ってない。どうしよ。
「父上が子が出来れば自ずと親になる。産めば分かるさと言ってた。やってみてダメなら乳母が育てるしなあって」
「無責任すぎない?」
「アハハッ王族に限らずそんな貴族は多いんだよ。理由は様々だけど。お金出してれば誰かが育てるんだ。俺みたいにな」
それが嫌なの。あなた簡単に言うけど辛かったでしょう?そんな子どもにしたくないの!と彼の頰を両手で挟んだ。
「その気持ちがあれば俺たちは上手くやれる。きちんと親になれるさ」
「そう?」
「うん。俺も頑張るから」
うんと手を離し抱きついた。俺たちは出来るさって。気持ちが幼くてもやれることはある。まだお腹にいる訳でもないのにこんなに心配して、いもしない子を愛そうと頑張るんだ。大丈夫って。
「ペットじゃないのよ?」
「うん。分かってる」
愛してるよティナ。そんな真面目な君が好き。未来を心配して悩む君が愛おしいと。
「いつ作ってもいい。君がいなくても回るようにするから」
「その言い方は寂しい」
「仕方ないだろ?なら最大限君が活躍出来る頃に種付けしよう?」
「うっその言い方なんかイヤだわ」
「ふふっごめん」
どこで生まれても仕事の迷惑にはなる。ならいつでもいいのかな?冬は仕事は少なめだけどない訳でもない。鉱山は雪も降らないからずっと稼働してるし、ダチョウは元気。売れるようになったらお茶を作るとか言ってるしなあ。
「なら今から?」
「ざんねーん。今からはムリ。月のものがもうすぐです」
「してみなきゃ分かんないだろ?」
「それ抱きたいだけでしょ?」
「うん」
いつもその頃はしないようにしていた。なら来月ねって約束した。そして、
「うっ……」
「聞こえるティナ」
「あっ…ンッ……ハアッ」
「すごく中熱くてトロトロ。俺が欲しくて咥え込んでるようだ」
気持ちよくてなにもわからない。いつもより気持ちいいの。
「ティナ……なんて美しいんだ」
乗ってと跨られてくる。ハアッアアッ
「深いといいだろ?」
「うんッ」
「俺の全部入ってる。気持ちいい」
腰掴んで動かされるともうッーッ
「当分君を抱けないのが辛いな。だから楽しもう」
うっ……フラッとして胸に倒れた。座ってることすら辛い。気持ちよくて力が……
「ティナ大好きだよ」
「うん……ッ」
何度でも果てなと。もうふらふらするの。これなに?ってくらい気持ちよくて。
「ーーッ」
「気持ちいいね」
腰がッ勝手にーッんっうっあっ……ああ……ぁ…そのままグチョグチョされてドンッと奥に刺さり、うグッとサイラスは喉を鳴らす。深く押し込みお腹を強く押す。ドクンと暖かいものを中に感じて……んふぅ……
「いいっ今日の君はッ」
強く抱かれているとスッと力が抜けてハァハァと喘いでいる。赤ちゃん出来るといいなあ。などと出来やすいと噂のあたりに頑張った。で、結果。
「うわーんサイラス!月のものがぁ!あんなにかんばったのにいーッ」
「泣くなよ。今月も頑張ろ?」
「うん」
抱きついて本気で泣いた。覚悟して挑んだ子作り。何度も中に出してもらってこれならと信じてたのに。よしよしと撫でられているとロッティが、そんなに戦に行くみたいな気分では出来るものも出来ませんよ。心穏やかに夜を楽しむ。心の機微が影響しますからって。
「そうなの?グスッ」
「ええ。母体は繊細なのです。気にしてない時の方が出来ますから」
「そっか……」
ならリラックスして挑もうねって。なんてしてる間に冬。一向に出来る気配はなかったんだけど、窓に霜が降りるくらい冬の寒いある日の朝。
「ロッティ……だるいの。なんかおかしい風引いたかな」
だるいなあと部屋に戻って支度しようとソファに座ったんだけど、余計だるい。お熱かな?と額に触ってもねつはなさそう。ロッティも熱はないみたいですねって。するとロッティがなにか気付いたように微笑み、今日は出勤したら医務室に行けって。
「なんで?」
「赤ちゃんかもしれません」
「へ?マジで?」
「ええ。つわりの始まりかも。月のものは来てますか?」
「そういや今月は遅れて……ハッ出来た?」
「はい!」
サイラスぅーって彼の部屋に戻って出来たかも!と報告した。だるくて月のものが遅れてると。
「ほんと?ほんとに?」
「うん!だから後で医務室行く」
「いや。君はもう出勤しなくていい」
「へ?」
「先生をこちらに呼ぶから」
「ああはい。明日は?」
「来なくていい」
「え?」
「え?」
なに言ってんの?なぜ働こうとするの?と。つわりは辛いと姉妹が言ってた。無理しなくていいよって。いやでも……呆然と立ち尽くしているとほら座ってとベッドに座る。
「妊娠初期は大切にしなきゃなんだろ?なら大人しくしててくれ」
「でも書類の仕事くらいは出来ます。みんなしてたし」
「やめてくれ。本気でやめて」
「なんで?」
「俺が怖いから。君になにかあったら俺は生きていけないから」
大袈裟よ?やだなあと笑ったらキッと睨まれた。
「言葉は悪いが子どもはまた作ればいい。でも君の代わりはいない。そこを考えて」
「はい……」
そう言うと布団を剥いで寝かせてくる。なんで?
「安静にして先生を待て」
「いえご飯……」
「ああそうか。食べられそう?」
「うん」
なら静かにゆっくりな。食べたら寝てろって。いやいやあのね?と慌てたらダメだから動くなって。はい。リーノがクスクスと笑う。殿下そこまでではありませんよって。
「そんなに制限したらティナ様が可哀想です。お家の中でゆっくり過ごして、つわりが収まった頃少し仕事をされるのもありですよ」
「そうなの?」
「ええ。流産の時期を過ぎれば動いた方が安産になると言われていますから」
「ならその間は出勤停止な」
さすがお子様のいらっしゃるお父様。言うことが違う。リーノありがとう。
「いいえ。俺も楽しみにしてますから。ロッティとティナ様のお世話させていただきますよ」
「うん」
そしてサイラスは朝食後渋々城に向かい、私はお部屋で先生を待った。そして、
「確かに。赤ちゃんいますね」
お腹に手を当て無詠唱で術を展開。ほわ~っと光るといるって。
「よしっ」
「よしっではありません。この姫はもう」
父の友だちショルツ先生は相変わらずですねえって苦笑い。
「ティナ様。これからもっとつわりは強くなります。これからひと月くらいですかね。無理すると赤ちゃん死んじゃいますから大人しく。走るのはダメ。飛び降りるのもね!」
「はい。すみません」
重いもの持ったりもダメ。つわりが終わるまで視察の旅は不可。長時間の馬車もダメ。食事は食べられるだけ食べる。どうせ食べられないからねって。今日はおいしく食べましたが?
「大体の人が気持ち悪くて食べられなくなりますから。食べられるものを食べてね」
「はい」
「出来れば仕事はつわりが終わるまでお休みを。そして臨月間際まで働かないように」
「はい……」
細かいな。そんなに注意事項ってあるの?なんて聞いていた。
「それと術者の仕事は不可。魂の根源に負荷が掛かるから。術者の姫には全員使わせていません」
「フグっマジか……ダチョウのえさは……」
本気で父上にくれと言わなくちゃかも。うおーどうしよ。
「先生あのね?ダチョウのエサ代は私の術者としてのわずかな報酬で飼ってるの。まだお肉になれる子があんまりいなくてね?」
「無理すると赤ちゃんどころかあなたが死にます」
「はい。すみません……」
黒の賢者でない方ですら危険なのに、最高位の術者が雨降らせてどうなるかなど、言わなくても分かりそうなもの。姫、考えが甘いと叱られた。
「昔の文献にあるのです。産む頃は見た目元気だったんだけど、産気ついたら死んじゃったってのが。学校でやるくらいのへなちょこなら構いませんが、あなたのは違うでしょう?」
「はい……」
魔法省に在籍するような術者や近衛騎士や衛兵。そのような方々は危険なのですよって。なにか魂の力が削れるそうだ。だから!と人差し指を立てて私の目の前。
「姫は目先のことに無鉄砲になる。ダチョウより自分と赤ちゃんです」
「はい」
その後もクドクド叱られた。あなたは子供の頃から無鉄砲で、考えてるふりして転んだりする。なんて昔のことまで言われてしまった。
「我慢強いは妊婦には不要です。静かに大人しく。つわりが終わるまではね!」
「うん……」
ふうとため息をついて頭を撫でてくれる。
「姫おめでとう。嬉しいからこその小言なの。かわいい赤ちゃんを産もうね」
「はい。先生」
じゃあつわりが終わった頃また来くるねって。間に具合悪かったら呼んでねと先生は帰って行った。やっぱり昔からの知り合いは厳しく、でも安心出来る。あの優しげな微笑みは落ち着くことが出来たの。
まだ私には早い気がする。体ではなく心が。仕事とは違うのよね。ある意味仕事だけど、そうじゃない。王族だから本当に産みっぱなしもあり。でもそんなことをする自分が嫌いなの。私自身がかわいがられた子どもだから。だから自分の子も大切に慈しみたい。こんなことお母様のロッティにも言えない。ため息しか出ない。
「サイラス」
「なに?」
「自分が嫌いなの」
「へ?」
こんなの話せる人はいなくて、でも親になるのは私たち。ならば気持ちを話すのは旦那様になる。嫌われても話さなくてはなにも変わらない。つらつらと思ってることを話した。
「嫌いになってもいいです。心が育ってないのです」
「うん。俺も似たようなもんだ。だからふたりで頑張ろうと前に言ったんだよ」
ふたりでいるのが幸せで俺はそれいいと今でも思っている。だが、王族として領地を守る責任もあるし、俺たちがある意味荒らした領地を他の王族が管理できると思う?と聞く。それ無理でしょ。前に戻そうとする領主なら反旗を翻しかねない。それほどまでに他とうちは別の国のようになってしまった。
「ある意味やり方だけならライラの国みたいになってしまった。それをこの国の人が管理出来るか不安だろ。だから絶対ひとりは産まないとマズい」
「うん」
子どもはその地の領主となり直轄地の主となる。男の子なら近衛騎士になり国や王を支え、領地の管理業務になる。この国は近隣に比べ若い国。荒れ地も多く開拓の余地も多い。隣ももらったから直轄地は増えているけどねって。
「世代が変わるとその子どもたちが運営する国になるからさ」
「うん」
「前王の弟の子など立場は弱くなるもの。だからこそ良い土地を子に残したいし、民に苦労はさせたくないんだ」
サイラスは急に大人になったみたいな口ぶりね。なのに私は何一つ育ってない。どうしよ。
「父上が子が出来れば自ずと親になる。産めば分かるさと言ってた。やってみてダメなら乳母が育てるしなあって」
「無責任すぎない?」
「アハハッ王族に限らずそんな貴族は多いんだよ。理由は様々だけど。お金出してれば誰かが育てるんだ。俺みたいにな」
それが嫌なの。あなた簡単に言うけど辛かったでしょう?そんな子どもにしたくないの!と彼の頰を両手で挟んだ。
「その気持ちがあれば俺たちは上手くやれる。きちんと親になれるさ」
「そう?」
「うん。俺も頑張るから」
うんと手を離し抱きついた。俺たちは出来るさって。気持ちが幼くてもやれることはある。まだお腹にいる訳でもないのにこんなに心配して、いもしない子を愛そうと頑張るんだ。大丈夫って。
「ペットじゃないのよ?」
「うん。分かってる」
愛してるよティナ。そんな真面目な君が好き。未来を心配して悩む君が愛おしいと。
「いつ作ってもいい。君がいなくても回るようにするから」
「その言い方は寂しい」
「仕方ないだろ?なら最大限君が活躍出来る頃に種付けしよう?」
「うっその言い方なんかイヤだわ」
「ふふっごめん」
どこで生まれても仕事の迷惑にはなる。ならいつでもいいのかな?冬は仕事は少なめだけどない訳でもない。鉱山は雪も降らないからずっと稼働してるし、ダチョウは元気。売れるようになったらお茶を作るとか言ってるしなあ。
「なら今から?」
「ざんねーん。今からはムリ。月のものがもうすぐです」
「してみなきゃ分かんないだろ?」
「それ抱きたいだけでしょ?」
「うん」
いつもその頃はしないようにしていた。なら来月ねって約束した。そして、
「うっ……」
「聞こえるティナ」
「あっ…ンッ……ハアッ」
「すごく中熱くてトロトロ。俺が欲しくて咥え込んでるようだ」
気持ちよくてなにもわからない。いつもより気持ちいいの。
「ティナ……なんて美しいんだ」
乗ってと跨られてくる。ハアッアアッ
「深いといいだろ?」
「うんッ」
「俺の全部入ってる。気持ちいい」
腰掴んで動かされるともうッーッ
「当分君を抱けないのが辛いな。だから楽しもう」
うっ……フラッとして胸に倒れた。座ってることすら辛い。気持ちよくて力が……
「ティナ大好きだよ」
「うん……ッ」
何度でも果てなと。もうふらふらするの。これなに?ってくらい気持ちよくて。
「ーーッ」
「気持ちいいね」
腰がッ勝手にーッんっうっあっ……ああ……ぁ…そのままグチョグチョされてドンッと奥に刺さり、うグッとサイラスは喉を鳴らす。深く押し込みお腹を強く押す。ドクンと暖かいものを中に感じて……んふぅ……
「いいっ今日の君はッ」
強く抱かれているとスッと力が抜けてハァハァと喘いでいる。赤ちゃん出来るといいなあ。などと出来やすいと噂のあたりに頑張った。で、結果。
「うわーんサイラス!月のものがぁ!あんなにかんばったのにいーッ」
「泣くなよ。今月も頑張ろ?」
「うん」
抱きついて本気で泣いた。覚悟して挑んだ子作り。何度も中に出してもらってこれならと信じてたのに。よしよしと撫でられているとロッティが、そんなに戦に行くみたいな気分では出来るものも出来ませんよ。心穏やかに夜を楽しむ。心の機微が影響しますからって。
「そうなの?グスッ」
「ええ。母体は繊細なのです。気にしてない時の方が出来ますから」
「そっか……」
ならリラックスして挑もうねって。なんてしてる間に冬。一向に出来る気配はなかったんだけど、窓に霜が降りるくらい冬の寒いある日の朝。
「ロッティ……だるいの。なんかおかしい風引いたかな」
だるいなあと部屋に戻って支度しようとソファに座ったんだけど、余計だるい。お熱かな?と額に触ってもねつはなさそう。ロッティも熱はないみたいですねって。するとロッティがなにか気付いたように微笑み、今日は出勤したら医務室に行けって。
「なんで?」
「赤ちゃんかもしれません」
「へ?マジで?」
「ええ。つわりの始まりかも。月のものは来てますか?」
「そういや今月は遅れて……ハッ出来た?」
「はい!」
サイラスぅーって彼の部屋に戻って出来たかも!と報告した。だるくて月のものが遅れてると。
「ほんと?ほんとに?」
「うん!だから後で医務室行く」
「いや。君はもう出勤しなくていい」
「へ?」
「先生をこちらに呼ぶから」
「ああはい。明日は?」
「来なくていい」
「え?」
「え?」
なに言ってんの?なぜ働こうとするの?と。つわりは辛いと姉妹が言ってた。無理しなくていいよって。いやでも……呆然と立ち尽くしているとほら座ってとベッドに座る。
「妊娠初期は大切にしなきゃなんだろ?なら大人しくしててくれ」
「でも書類の仕事くらいは出来ます。みんなしてたし」
「やめてくれ。本気でやめて」
「なんで?」
「俺が怖いから。君になにかあったら俺は生きていけないから」
大袈裟よ?やだなあと笑ったらキッと睨まれた。
「言葉は悪いが子どもはまた作ればいい。でも君の代わりはいない。そこを考えて」
「はい……」
そう言うと布団を剥いで寝かせてくる。なんで?
「安静にして先生を待て」
「いえご飯……」
「ああそうか。食べられそう?」
「うん」
なら静かにゆっくりな。食べたら寝てろって。いやいやあのね?と慌てたらダメだから動くなって。はい。リーノがクスクスと笑う。殿下そこまでではありませんよって。
「そんなに制限したらティナ様が可哀想です。お家の中でゆっくり過ごして、つわりが収まった頃少し仕事をされるのもありですよ」
「そうなの?」
「ええ。流産の時期を過ぎれば動いた方が安産になると言われていますから」
「ならその間は出勤停止な」
さすがお子様のいらっしゃるお父様。言うことが違う。リーノありがとう。
「いいえ。俺も楽しみにしてますから。ロッティとティナ様のお世話させていただきますよ」
「うん」
そしてサイラスは朝食後渋々城に向かい、私はお部屋で先生を待った。そして、
「確かに。赤ちゃんいますね」
お腹に手を当て無詠唱で術を展開。ほわ~っと光るといるって。
「よしっ」
「よしっではありません。この姫はもう」
父の友だちショルツ先生は相変わらずですねえって苦笑い。
「ティナ様。これからもっとつわりは強くなります。これからひと月くらいですかね。無理すると赤ちゃん死んじゃいますから大人しく。走るのはダメ。飛び降りるのもね!」
「はい。すみません」
重いもの持ったりもダメ。つわりが終わるまで視察の旅は不可。長時間の馬車もダメ。食事は食べられるだけ食べる。どうせ食べられないからねって。今日はおいしく食べましたが?
「大体の人が気持ち悪くて食べられなくなりますから。食べられるものを食べてね」
「はい」
「出来れば仕事はつわりが終わるまでお休みを。そして臨月間際まで働かないように」
「はい……」
細かいな。そんなに注意事項ってあるの?なんて聞いていた。
「それと術者の仕事は不可。魂の根源に負荷が掛かるから。術者の姫には全員使わせていません」
「フグっマジか……ダチョウのえさは……」
本気で父上にくれと言わなくちゃかも。うおーどうしよ。
「先生あのね?ダチョウのエサ代は私の術者としてのわずかな報酬で飼ってるの。まだお肉になれる子があんまりいなくてね?」
「無理すると赤ちゃんどころかあなたが死にます」
「はい。すみません……」
黒の賢者でない方ですら危険なのに、最高位の術者が雨降らせてどうなるかなど、言わなくても分かりそうなもの。姫、考えが甘いと叱られた。
「昔の文献にあるのです。産む頃は見た目元気だったんだけど、産気ついたら死んじゃったってのが。学校でやるくらいのへなちょこなら構いませんが、あなたのは違うでしょう?」
「はい……」
魔法省に在籍するような術者や近衛騎士や衛兵。そのような方々は危険なのですよって。なにか魂の力が削れるそうだ。だから!と人差し指を立てて私の目の前。
「姫は目先のことに無鉄砲になる。ダチョウより自分と赤ちゃんです」
「はい」
その後もクドクド叱られた。あなたは子供の頃から無鉄砲で、考えてるふりして転んだりする。なんて昔のことまで言われてしまった。
「我慢強いは妊婦には不要です。静かに大人しく。つわりが終わるまではね!」
「うん……」
ふうとため息をついて頭を撫でてくれる。
「姫おめでとう。嬉しいからこその小言なの。かわいい赤ちゃんを産もうね」
「はい。先生」
じゃあつわりが終わった頃また来くるねって。間に具合悪かったら呼んでねと先生は帰って行った。やっぱり昔からの知り合いは厳しく、でも安心出来る。あの優しげな微笑みは落ち着くことが出来たの。
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