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後編 ヴァルキア王国編
94 わがままの終わり
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「えーっと……なにこれ」
なんで泣いてんの?ミリガンはカールに抱かれて泣いていた。訳わからずジーッと見つめていると、ごめんなさいって顔を上げた。
「ミリガンは君を神かなんかと思っててさ。君に触たかったんだ。お傍にいられる実感?実在するの?てのかな。感じたかったんだって」
「はあ。なんですかそれ」
呆れて二人を見ていると、ミリガンは起き上がり、
「わたくし王妃をお慕い申しておりますの。それこそ死ねと命ぜられれば、この場で死ぬくらいには」
「え?ええ?」
触れたいからって女が好きとかではない。カールのちんこ大好き。そういった性的ななにかじゃないのと言い訳する。お股がとか叫んでましたので、不審ですが。
「うふふ。あなたに触れてぇ……出来れば体液に触れたくてぇ……ふふっ」
「え?」
うっとりとする。王族など高貴な方はお風呂もメイドがお手伝い。それは当たり前。メイドが夜の楽しみを教えるのも仕事(公爵家で初めて知ったそうだ)そのお手伝いがしたかったらしい。いらない。
「い、いえ……間に合ってますが……」
「その確認もしたかったの。愛しいティナ様がサイラス様で満足出来るようにしたかったの」
「いや……してます……」
でもねって。自分が喜びを知らなかったということは、元の身分が同じティナ様は知らない可能性がある。不安で仕方なかったそうだ。迷惑な心配です。
「それ以前に、お一人でお風呂とはどういうことですの?」
「あ……それに関しては私のわがままでぇおほほっ」
そこに関しては言い訳は出来ない。自分で出来るのもあるけど、人に触られるの嫌なのよね。うちは優しい?父親が好きにしろって放置したの(母が病でバレなかったとも言う)それに男爵の娘が伯爵以上にお嫁に行ける確率は戦関係なくないに等しい。戦後ですら玉の輿?なんか、あまり聞かなかった。
「あのね。サイラスも嫌がるのよ。そんでね?」
「そうか。そうだな。サイラス様はつけてなかったな」
「でしょ?」
カールは納得はしたけどでもなあって。俺も殿下時代からの側近だけど、貴族のおうちでは下位の家でもつけられてたよ?見られても触られてもなんにも思わんしなあって。王様夫婦がおかしいよって。そのとおりでございますが。確かに私だけだったし。
「……面目ない。私はどこに行っても全部内緒って辞退してた」
「マジで?」
「うん」
カールはムッとした。それ君らがダメだろとカールに叱られた。全く言い逃れが出来ず、うつむいてしまった。メイドさんが差し出すお水をゴクリ。グラスを掴んでカールの目は見ない。
「今は王様だからわがままは通るよ?でもな。風呂場は危ないんだよ。滑って転んで死んじゃうこともある。若いとか関係ないのよ」
「……はい」
私は脱衣所にいつもいます。音を聞いてますし、中も確認してますってメイドさん。たぶんお城もそうのはずですよと、助け舟。なのにカールの顔は怖い。妊娠中はお願いしてたもん。
「それは当たり前!あのなあティナ。そればっかじゃないのよ。触られることによって自分では気が付かない病気とか怪我とかの確認もあるの。君勝手に術を使うだろ。怪我もメイドに確認させてからやるべきなんだ」
「ごめんなさい」
王様は替えが効かない。君は特になって。カールは完全に臣下の顔である。
「慣れろ」
「へ?」
「ミリガンが嫌ならメイドでも誰でもいいから。城ではロッティに頼め」
「いや……あの…」
「わたくしがします!ぜひ!」
君は黙ってなさい。まずはティナに承諾させないとだろ?と。はいってミリガンは楽しそうに黙った。
「今日も泊まるんだから」
「は…い……」
てことで夜。ミリガンは無理やり入って来て、支度してさあ!と。有無を言わせずお風呂に連れ込まれた。
「ティナ様かわいい。ちんまりのお胸が特に」
「……うん」
おかしなこともなく洗ってもらった。お股ああ!とか叫んでたけど、足りてるならいいやって。
「若いっていいなあ。肌に張りがあるもの」
「お肌に関してはそんなに違いはある?」
あんまり違いはなさそうである。それに私の倍はあろうかというお胸。だからドレス姿が美しいんだと、少し卑屈になった。
「いえいえ。姫様は特にスベスベ。サイラス様はかわいくてしょうがないでしょうね」
なんも答えず苦笑い。私が殿方なら押し倒すのになあ。残念ですわと背中を丁寧に洗ってくれる。
「わたくしにとって姫様は特別なの。敵の貴族に涙を流せるなんてありえませんから」
「だーから。あの戦は女にとってはどちらも大変だったのよ。聞けばこちらはもっとだったし」
そうねえってお湯で泡を流してくれて一緒に浴槽に向かう。ほら抱っこされてって。え?両手広げてあお待ちになる。なにこれ。
「それくらいいいでしょ?」
「まあ」
ミリガンの足の間に入ると、まるでサイラスのように抱く。
「かわいい。こんな日が来るなんてねえ」
ミリガンはとても幸せそうな声色。明るく華やかな声色だ。彼女はたくさんの友だちが死体の山にいた。苦しくてみんな泣き崩れたそうだ。するとすぐに怒鳴られ城の文官にムチでに殴られた。早くって。みんなで荷車に乗せて裏山に掘ってある穴に埋めた。今はちゃんとした合同のお墓が造られ、祈りも捧げられている。
だけどあれは一生忘れない。自業自得だろと街に出ればユルバスカルや他国からの民の声がした。私もそうねと納得していた。そのとおりだもの。私の肩に頭を乗せて、ため息ともつかない息を漏らす。
「こんな小さな体でこの国を背負うとは、なんと気の毒やらと思ってました。ですが、今は嬉しい。あなた方でよかった」
貧しいのは今もだけど、それでも残った民は元気になって来ている。衣服も食事も良くなって、魔物みたいな見た目の人はもういない。王が代わるとこんなにも違うんだと驚いたそうだ。でもたまに悪夢を見て涙する。そんな時はカールに慰めてもらってるそうだ。
「お父様や仲間を殺したわたくしのために涙する。可哀想にと思ってくれた。それが嬉しかったのです」
「うん」
直接殺してはいないにしろ、私はその一員である。一族も死にましたがざまあみろだ。我が一族は元々どうしょうもなかった。父は王とともに女で遊んでたから。貴族も自暴自棄で、敵が城になだれ込んでくるのを待っていたように見えたそう。
「ミリガン。私はあなたになにか出来ることある?」
「いいえ。こうしてお顔を見せてくれて、わたくしに抱かれて下さいませ。それで十分。不感症ならお手伝いします」
「いや……それはいらない」
「そう?」
カールはさすが遊び人だなあって感心もした。とても気持ちいいのよって。わたくしはその手練れた理由は気にしないと。さようで。
「試す?」
「殺されるわよ。私が旦那様に」
「そっか。でもカールはわたくしと同じくあなたを愛してる。ティナ様は特別な存在です。嫉妬もない」
気が向いたら受けてあげてって。二人まとめて愛人にしてくれるのがベストなのよねえって。
「だからあ」
「いいの。分かってます」
あなたは特別。ユルバスカルの女神、フランシス様の再来のよう。博愛が強いって褒めてくれる。その言葉に私は違和感があった。私は彼女のようではないはずだ。
「それは違う。私は民は大切と考えてるけど、貴族としての責任と考える。今は王様でしょ?ならば最大限彼らの生活のために頑張る。国の人々は私の大切な人たちなの。それが元ラセイネイの人であっても、ヴァルキアの大切な人なの」
「ふーん。でもこちらの貴族はその矜持すらなかったわ。だからやっぱりあなたは特別」
あなたのために働くわ。いかようにも使ってくれって。私の主はあなた。サイラス様じゃない。自分はあなたの臣下。あなた以外の誰の命令も聞かないと。
「ありがと」
「いいえ。それと私は逢瀬が好きになりましたの。女の抱き方に必要なものは揃えましたわ」
「いや……え?」
「女に興味持ったのあなただけ。私を好きにして。もしくはする」
「は?」
ふふっ気が向いたら声かけて。待ってるって。待たなくていい。いいのゆっくり待つわって。コワッ
なんてことがあった視察でしたとサイラスに報告。夜落ち着いた時間にこの部分を話すと、あー……ごめんって。君にはいつからロッティにさせるか考えてたんだと言われた。妊娠中だけじゃなくてなあって。
「ミリガンたちは君を狙ってるからおかしいけど、カールの話に間違いはない」
「はい」
俺たちは城ではいつもふたりで入るだろ?だから許されているところがある。でも、外ではさすがになあって。そろそろ君に慣れてもらう時が来たかと考えていたそうだ。外交がユルバスカル以外もぼちぼち出てきたから。そうだろ?って。
「はい」
「身分が下からの闇の賢者で、国に取り立てられたんだろ?王妃なのに貴族の矜持もないのかと悪い噂が立つ。それは君に、ひいてはヴァルキアにとってよくない。言葉は悪いが他国はそう取るかもな」
「うん」
ささいな問題で足を引っ張る輩など、どこにでもいる。どんなことでも悪口にする。王族はきちんとしないとならない。城では好きにすればいいけど、俺がいない時はロッティにさせる。嫌は通らないぞって。
「妃殿下のままではいられないんだ」
「うん慣れるよう努力します。でもねえ……あなた以外に触られるの嫌なのよね。なんでだろ」
「俺だけか。フフッ俺を喜ばせてもなんも出ないぞ」
嬉しそうに胸に入れてくれる。私は胸に収まり、
「そうじゃないの。なんだろうなあ。愛した人しか触らせたくないのかな。体の隅々になるから」
「まあな。育ちもあるだろう。そこんところの羞恥心が違いかな。王族も貴族もさ。裸見られても触られてもなんも思わんように育てられるから」
「うん」
俺は時間かかるのが嫌なだけ。あれこれ聞かれたりするのもなって。すると、たまに姫は知らん人にいきなり触られるとビクッとするのを感じる時がある。身近な者しか気が付かないくらいのものだけどってリーノ。
「そう?」
「ええ。家臣や近くの臣下以外はね」
「君……」
「おほほっ無意識よ。仕方ないでしょ」
「直せよ」
「うん」
夜は寂しかったとサイラスにかわいがられ、少し早い朝。ロッティがバタンとノックもなく勢いよく扉を開けた。眠い目を擦りなに?と。慌てているとロッティは、
「あ、あの!ユルバスカルの貴族派の人たちが、外の城門を今通ってこちらに向かってるそうです!」
「「ああ。来たのか」」
二人で見合ってニヤッとした。やっと来る気になったのかな?と。
「話しを聞こうじゃないか。ここは俺たちの国だ。ごねるならなら追い返そうぜ」
「はーい」
ええ?驚かないの?とロッティ。まあねえ。そろそろかなって王太子から連絡は来てたから。
「そうなのですか」
「うん。ユルバスカルは王党派ばかり景気が良くなってるのよね。こちらの鉱石や宝石を安く買い取って、加工してみんな儲けてるの。それに混ざりたいんでしょ」
「ご存知だったのですね」
そっかと気が抜けたようになった。ごめんなさい。言っておけばよかったわね。そうですよと、安心したのか少し怒ったようになった。
「心配しましたよ。攻めてきたのかと思っちゃった」
「たぶん違うから大丈夫だ」
サイラスの言葉にならお風呂どうぞと。ティナ様は体に癒しをおかけ下さいねって。首回りがドレスから見えるからって。体を見ると、
「あらそうね。サイラス加減を知らないわね。ごめんって。君いないと本気で寂しい。バカなのは分かってるけどどうにもならないと。やだやだこの夫婦はとロッティ。
「朝抱くつもりだったが仕方ない」
「また?」
「うん。赤ちゃん欲しいし、俺が触れてたいから」
「フフッ」
いいからお風呂入れって。待たすのはいいけど、程度ものでしょと。はーい。
「どんな顔してくるかな」
「王党派はずるい!って叫ぶかもな。あれはこちらに領地を持ってる人割引で、卸値が安いだけだからな。土地を耕す気のない者は正規の金額にする。それでも安いけどな」
「そうね。ちょっとでもいいからやれって感じだわ」
そうそう。な~んもしてくれない貴族に安く売る理由などないからなと笑う。ふたりでニヤニヤ準備して食事して執務室で待った。
「楽しみね」
「ああ。ワクワクする」
フレッドとセフィロトは来てくれて、私たちをバカだと笑う。うちの王様二人は楽観的で困ったもんだとため息。同じくこちらで採用した文官も。これでいいの?このノリで?と不安げだ。
「お前らも知ってるだろ。ユルバスカルは一枚岩じゃない。貴族派っておかしな連中がいるんだ。そうだ部屋に来るか。お前たちも」
全員首を横に振る。セフィロト様やフレッド様だけでお願いって。
「人相も悪いんだ。見ものだぞ?」
「いえ、人相の悪い人は見飽きました……我らは見続けましたから」
「そっか」
すると城の筆頭執事のジェームスが入って来た。
「王、今応接にお通ししました。側近が一名から二名ともなっています。貴族は五名でございます」
「そうか。ティナ行くぞ。お前らもな」
「王様たち煽んなよ」
「分かんない」
「やめろティナ」
なーんて会話をしながら応接室に向かった。
なんで泣いてんの?ミリガンはカールに抱かれて泣いていた。訳わからずジーッと見つめていると、ごめんなさいって顔を上げた。
「ミリガンは君を神かなんかと思っててさ。君に触たかったんだ。お傍にいられる実感?実在するの?てのかな。感じたかったんだって」
「はあ。なんですかそれ」
呆れて二人を見ていると、ミリガンは起き上がり、
「わたくし王妃をお慕い申しておりますの。それこそ死ねと命ぜられれば、この場で死ぬくらいには」
「え?ええ?」
触れたいからって女が好きとかではない。カールのちんこ大好き。そういった性的ななにかじゃないのと言い訳する。お股がとか叫んでましたので、不審ですが。
「うふふ。あなたに触れてぇ……出来れば体液に触れたくてぇ……ふふっ」
「え?」
うっとりとする。王族など高貴な方はお風呂もメイドがお手伝い。それは当たり前。メイドが夜の楽しみを教えるのも仕事(公爵家で初めて知ったそうだ)そのお手伝いがしたかったらしい。いらない。
「い、いえ……間に合ってますが……」
「その確認もしたかったの。愛しいティナ様がサイラス様で満足出来るようにしたかったの」
「いや……してます……」
でもねって。自分が喜びを知らなかったということは、元の身分が同じティナ様は知らない可能性がある。不安で仕方なかったそうだ。迷惑な心配です。
「それ以前に、お一人でお風呂とはどういうことですの?」
「あ……それに関しては私のわがままでぇおほほっ」
そこに関しては言い訳は出来ない。自分で出来るのもあるけど、人に触られるの嫌なのよね。うちは優しい?父親が好きにしろって放置したの(母が病でバレなかったとも言う)それに男爵の娘が伯爵以上にお嫁に行ける確率は戦関係なくないに等しい。戦後ですら玉の輿?なんか、あまり聞かなかった。
「あのね。サイラスも嫌がるのよ。そんでね?」
「そうか。そうだな。サイラス様はつけてなかったな」
「でしょ?」
カールは納得はしたけどでもなあって。俺も殿下時代からの側近だけど、貴族のおうちでは下位の家でもつけられてたよ?見られても触られてもなんにも思わんしなあって。王様夫婦がおかしいよって。そのとおりでございますが。確かに私だけだったし。
「……面目ない。私はどこに行っても全部内緒って辞退してた」
「マジで?」
「うん」
カールはムッとした。それ君らがダメだろとカールに叱られた。全く言い逃れが出来ず、うつむいてしまった。メイドさんが差し出すお水をゴクリ。グラスを掴んでカールの目は見ない。
「今は王様だからわがままは通るよ?でもな。風呂場は危ないんだよ。滑って転んで死んじゃうこともある。若いとか関係ないのよ」
「……はい」
私は脱衣所にいつもいます。音を聞いてますし、中も確認してますってメイドさん。たぶんお城もそうのはずですよと、助け舟。なのにカールの顔は怖い。妊娠中はお願いしてたもん。
「それは当たり前!あのなあティナ。そればっかじゃないのよ。触られることによって自分では気が付かない病気とか怪我とかの確認もあるの。君勝手に術を使うだろ。怪我もメイドに確認させてからやるべきなんだ」
「ごめんなさい」
王様は替えが効かない。君は特になって。カールは完全に臣下の顔である。
「慣れろ」
「へ?」
「ミリガンが嫌ならメイドでも誰でもいいから。城ではロッティに頼め」
「いや……あの…」
「わたくしがします!ぜひ!」
君は黙ってなさい。まずはティナに承諾させないとだろ?と。はいってミリガンは楽しそうに黙った。
「今日も泊まるんだから」
「は…い……」
てことで夜。ミリガンは無理やり入って来て、支度してさあ!と。有無を言わせずお風呂に連れ込まれた。
「ティナ様かわいい。ちんまりのお胸が特に」
「……うん」
おかしなこともなく洗ってもらった。お股ああ!とか叫んでたけど、足りてるならいいやって。
「若いっていいなあ。肌に張りがあるもの」
「お肌に関してはそんなに違いはある?」
あんまり違いはなさそうである。それに私の倍はあろうかというお胸。だからドレス姿が美しいんだと、少し卑屈になった。
「いえいえ。姫様は特にスベスベ。サイラス様はかわいくてしょうがないでしょうね」
なんも答えず苦笑い。私が殿方なら押し倒すのになあ。残念ですわと背中を丁寧に洗ってくれる。
「わたくしにとって姫様は特別なの。敵の貴族に涙を流せるなんてありえませんから」
「だーから。あの戦は女にとってはどちらも大変だったのよ。聞けばこちらはもっとだったし」
そうねえってお湯で泡を流してくれて一緒に浴槽に向かう。ほら抱っこされてって。え?両手広げてあお待ちになる。なにこれ。
「それくらいいいでしょ?」
「まあ」
ミリガンの足の間に入ると、まるでサイラスのように抱く。
「かわいい。こんな日が来るなんてねえ」
ミリガンはとても幸せそうな声色。明るく華やかな声色だ。彼女はたくさんの友だちが死体の山にいた。苦しくてみんな泣き崩れたそうだ。するとすぐに怒鳴られ城の文官にムチでに殴られた。早くって。みんなで荷車に乗せて裏山に掘ってある穴に埋めた。今はちゃんとした合同のお墓が造られ、祈りも捧げられている。
だけどあれは一生忘れない。自業自得だろと街に出ればユルバスカルや他国からの民の声がした。私もそうねと納得していた。そのとおりだもの。私の肩に頭を乗せて、ため息ともつかない息を漏らす。
「こんな小さな体でこの国を背負うとは、なんと気の毒やらと思ってました。ですが、今は嬉しい。あなた方でよかった」
貧しいのは今もだけど、それでも残った民は元気になって来ている。衣服も食事も良くなって、魔物みたいな見た目の人はもういない。王が代わるとこんなにも違うんだと驚いたそうだ。でもたまに悪夢を見て涙する。そんな時はカールに慰めてもらってるそうだ。
「お父様や仲間を殺したわたくしのために涙する。可哀想にと思ってくれた。それが嬉しかったのです」
「うん」
直接殺してはいないにしろ、私はその一員である。一族も死にましたがざまあみろだ。我が一族は元々どうしょうもなかった。父は王とともに女で遊んでたから。貴族も自暴自棄で、敵が城になだれ込んでくるのを待っていたように見えたそう。
「ミリガン。私はあなたになにか出来ることある?」
「いいえ。こうしてお顔を見せてくれて、わたくしに抱かれて下さいませ。それで十分。不感症ならお手伝いします」
「いや……それはいらない」
「そう?」
カールはさすが遊び人だなあって感心もした。とても気持ちいいのよって。わたくしはその手練れた理由は気にしないと。さようで。
「試す?」
「殺されるわよ。私が旦那様に」
「そっか。でもカールはわたくしと同じくあなたを愛してる。ティナ様は特別な存在です。嫉妬もない」
気が向いたら受けてあげてって。二人まとめて愛人にしてくれるのがベストなのよねえって。
「だからあ」
「いいの。分かってます」
あなたは特別。ユルバスカルの女神、フランシス様の再来のよう。博愛が強いって褒めてくれる。その言葉に私は違和感があった。私は彼女のようではないはずだ。
「それは違う。私は民は大切と考えてるけど、貴族としての責任と考える。今は王様でしょ?ならば最大限彼らの生活のために頑張る。国の人々は私の大切な人たちなの。それが元ラセイネイの人であっても、ヴァルキアの大切な人なの」
「ふーん。でもこちらの貴族はその矜持すらなかったわ。だからやっぱりあなたは特別」
あなたのために働くわ。いかようにも使ってくれって。私の主はあなた。サイラス様じゃない。自分はあなたの臣下。あなた以外の誰の命令も聞かないと。
「ありがと」
「いいえ。それと私は逢瀬が好きになりましたの。女の抱き方に必要なものは揃えましたわ」
「いや……え?」
「女に興味持ったのあなただけ。私を好きにして。もしくはする」
「は?」
ふふっ気が向いたら声かけて。待ってるって。待たなくていい。いいのゆっくり待つわって。コワッ
なんてことがあった視察でしたとサイラスに報告。夜落ち着いた時間にこの部分を話すと、あー……ごめんって。君にはいつからロッティにさせるか考えてたんだと言われた。妊娠中だけじゃなくてなあって。
「ミリガンたちは君を狙ってるからおかしいけど、カールの話に間違いはない」
「はい」
俺たちは城ではいつもふたりで入るだろ?だから許されているところがある。でも、外ではさすがになあって。そろそろ君に慣れてもらう時が来たかと考えていたそうだ。外交がユルバスカル以外もぼちぼち出てきたから。そうだろ?って。
「はい」
「身分が下からの闇の賢者で、国に取り立てられたんだろ?王妃なのに貴族の矜持もないのかと悪い噂が立つ。それは君に、ひいてはヴァルキアにとってよくない。言葉は悪いが他国はそう取るかもな」
「うん」
ささいな問題で足を引っ張る輩など、どこにでもいる。どんなことでも悪口にする。王族はきちんとしないとならない。城では好きにすればいいけど、俺がいない時はロッティにさせる。嫌は通らないぞって。
「妃殿下のままではいられないんだ」
「うん慣れるよう努力します。でもねえ……あなた以外に触られるの嫌なのよね。なんでだろ」
「俺だけか。フフッ俺を喜ばせてもなんも出ないぞ」
嬉しそうに胸に入れてくれる。私は胸に収まり、
「そうじゃないの。なんだろうなあ。愛した人しか触らせたくないのかな。体の隅々になるから」
「まあな。育ちもあるだろう。そこんところの羞恥心が違いかな。王族も貴族もさ。裸見られても触られてもなんも思わんように育てられるから」
「うん」
俺は時間かかるのが嫌なだけ。あれこれ聞かれたりするのもなって。すると、たまに姫は知らん人にいきなり触られるとビクッとするのを感じる時がある。身近な者しか気が付かないくらいのものだけどってリーノ。
「そう?」
「ええ。家臣や近くの臣下以外はね」
「君……」
「おほほっ無意識よ。仕方ないでしょ」
「直せよ」
「うん」
夜は寂しかったとサイラスにかわいがられ、少し早い朝。ロッティがバタンとノックもなく勢いよく扉を開けた。眠い目を擦りなに?と。慌てているとロッティは、
「あ、あの!ユルバスカルの貴族派の人たちが、外の城門を今通ってこちらに向かってるそうです!」
「「ああ。来たのか」」
二人で見合ってニヤッとした。やっと来る気になったのかな?と。
「話しを聞こうじゃないか。ここは俺たちの国だ。ごねるならなら追い返そうぜ」
「はーい」
ええ?驚かないの?とロッティ。まあねえ。そろそろかなって王太子から連絡は来てたから。
「そうなのですか」
「うん。ユルバスカルは王党派ばかり景気が良くなってるのよね。こちらの鉱石や宝石を安く買い取って、加工してみんな儲けてるの。それに混ざりたいんでしょ」
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そっかと気が抜けたようになった。ごめんなさい。言っておけばよかったわね。そうですよと、安心したのか少し怒ったようになった。
「心配しましたよ。攻めてきたのかと思っちゃった」
「たぶん違うから大丈夫だ」
サイラスの言葉にならお風呂どうぞと。ティナ様は体に癒しをおかけ下さいねって。首回りがドレスから見えるからって。体を見ると、
「あらそうね。サイラス加減を知らないわね。ごめんって。君いないと本気で寂しい。バカなのは分かってるけどどうにもならないと。やだやだこの夫婦はとロッティ。
「朝抱くつもりだったが仕方ない」
「また?」
「うん。赤ちゃん欲しいし、俺が触れてたいから」
「フフッ」
いいからお風呂入れって。待たすのはいいけど、程度ものでしょと。はーい。
「どんな顔してくるかな」
「王党派はずるい!って叫ぶかもな。あれはこちらに領地を持ってる人割引で、卸値が安いだけだからな。土地を耕す気のない者は正規の金額にする。それでも安いけどな」
「そうね。ちょっとでもいいからやれって感じだわ」
そうそう。な~んもしてくれない貴族に安く売る理由などないからなと笑う。ふたりでニヤニヤ準備して食事して執務室で待った。
「楽しみね」
「ああ。ワクワクする」
フレッドとセフィロトは来てくれて、私たちをバカだと笑う。うちの王様二人は楽観的で困ったもんだとため息。同じくこちらで採用した文官も。これでいいの?このノリで?と不安げだ。
「お前らも知ってるだろ。ユルバスカルは一枚岩じゃない。貴族派っておかしな連中がいるんだ。そうだ部屋に来るか。お前たちも」
全員首を横に振る。セフィロト様やフレッド様だけでお願いって。
「人相も悪いんだ。見ものだぞ?」
「いえ、人相の悪い人は見飽きました……我らは見続けましたから」
「そっか」
すると城の筆頭執事のジェームスが入って来た。
「王、今応接にお通ししました。側近が一名から二名ともなっています。貴族は五名でございます」
「そうか。ティナ行くぞ。お前らもな」
「王様たち煽んなよ」
「分かんない」
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なーんて会話をしながら応接室に向かった。
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