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妹成分補充中
しおりを挟むキャンプから帰ってきて、ようやくゴールデンウィークが始まった気がする。
のんびりと本を読み、惰眠を貪る。
元々引きこもりだった俺、その引きこもっていた時、家にいること事態に、俺は特にストレスを感じなかった。
精神的なストレスや、将来の不安なんかは勿論あったが、それも妹を育てるという大義名分があった為に、軽減されていった。
つまり何が言いたいかと言うと……基本家にいるのが楽しいのだ。
ただ、今はその楽しさが半減している。
理由は二つ、一つは旅行やキャンプが楽しかったから。
そしてもう一つは、妹の様子が気になってしまっているから。
家での妹は、ほぼいつも通り過ごしている。俺の目を見てちゃんと挨拶もしてくれるし、雑談にも応じてくれる。
ただ食事をしている時、リビングに二人で寛いでいる時等、俺と長く一緒にいると、時折思い詰めた様な表情で俺をじっと見ている事がある。
一体なんなんだろうか?
春先から様子がおかしい、反抗期にしては、反抗する様子もない……。
一体妹に何があったのか? 5月病? いや様子がおかしくなったのは、高校入学あたり……まさか……いじめ?
でも、旅行に行ったのは入学前だし……。
既にあの頃から様子が変だった……。
彼氏でも出来たとか? そして別れ話でも切り出されたとか?
えっと……包丁磨ぎはどこだったっけか? いや切れ味悪い方が痛いらしいし……。
とにかく、このままってわけにはいかない、俺は親代わりなのだから。
ちょうどお昼を食べ終わり俺と妹はだらだらと二人リビングで寛いでいた。
今がチャンスだ。
「雪、ちょっといいかな?」
「ん? なーーに?」
「いや、えっと……」
Tシャツ、ショートパンツ姿でソファーに寝転び、スマホを弄っている妹、うーーんこういう姿を見ると、悩みなんてなさそうなんだけど……。
「あのさ……えっと……その……何か悩んでる事とか……ないのか?」
「は? なにそれ?」
「いや……最近ちょっと様子がおかしい……感じがしたりなんかしたりして……」
「意味わかんないけど?」
「いや、なければいいんだけど」
ああ、どう言えばいいのか、わからない……。
「……そうだなあ、あるって言えばあるのかなあ?」
妹は困っている俺を見て、クスクスと笑いながらそう言った。
「あるのか! な、なんだ? お、お兄ちゃんに言ってごらん」
よ、ようやく俺に心を開いてくれた……やっと妹の悩みが聞ける。
俺がきちんと座り直し、妹に向かってそう言った。
妹はソファーから立ち上がると、わざとらしく服の埃を払う振りをして、俺の目の前に歩いてくる。
「ん? なにかな?」
ソファーに座っている俺の目の前に立つと、妹はニヤリと不敵に笑った。そして……。
「最近ね~~お兄ちゃん成分が足りない気がするの」
「お兄ちゃん成分?」
「あとね、お兄ちゃんもなんか妹成分が足りないから、そんな変な事言ってるのかも?」
なんだ? お兄ちゃん成分って? なんだ? 妹成分って?
「えっと、そうじゃなくて、何か悩みがって」
「おにいちゃ~~~ん」
妹はそう言うと俺に抱きついてくるって、えええええ?!
「ちょ、ちょっとまて、えええ?」
そう言えば、妹が小学生の時、よくこうやって抱きついて来た。
数年振りに妹に抱き付かれてしまったって、な、なんで?
「そうか~~お兄ちゃんは私に構って欲しいんだ~~~~」
「いや、違う、俺は、悩みをって、おい、こら! 何処触ってる!」
「ほれ~~妹成分注入~~」
妹は俺を抱き枕の様にして、ぎゅうぎゅうと抱き付く。
「ちょ、ちょっと、おっぱいが当たってるって、おい!」
「うわああ、お兄ちゃん顔真っ赤、妹の裸になんか興味ないって言ってるんだから、妹の胸になんて興味ないんじゃないの~~」
「や、やめ! 駄目だって」
「なんで~~? 前は暇な時こうやって二人で遊んでたでしょう~~こちょこちょ~~って」
「う、うははは、や、やめて」
「お兄ちゃんの弱点はすべてお見通しだよ、こちょこちょ」
「だ、だめえ、そこはヤバい、そこはBANされる~~~~!」
以前と変わらない妹の姿だ。やっぱり気のせい? いや、違う……これは誤魔化してるんだ。
わざとこうやって誤魔化して、ごま、ご、だ、だめ、だめだ、やめてくれええええええ!
そしてそのまま妹に散々くっつかれ、くすぐられ、抱き付かれ、俺はぐったりしてしまう。
妹はケラケラと笑いながら勝ち誇った様な顔で、部屋に戻って行った。
結局妹の悩みは今日も聞けなかった。
でも、やはりおかしい、こんな事してくることが、なにかあるって証拠だ。
どうにかして、妹の悩みを聞かなければ……。
でも、どうやったら、妹の悩みを聞けるのだろうか? どうやったら俺に打ち明けてくれるのだろうか?
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