クラスでカースト最上位のお嬢様が突然僕の妹になってお兄様と呼ばれた。

新名天生

文字の大きさ
29 / 99

嘘がわかるの……

しおりを挟む

「じゃあとりあえず何かに乗ろう、えっと……」
 ジェットコースターは怖いし、二人とはぐれるにはちょっと無理だよね。
 やっぱり観覧車かな? 乗る手前でこけて二人だけ乗せるってのが今回の作戦なんだよね、完璧でしょ?

「えっとじゃあ、かん」

「ジェットコースターだよね、やっぱり、ここのジェットコースターなんか変で前から乗りたかったんだよね~~」

 くっ! また愛真がシャシャリ出てきた、ここは僕の要望を聞く所だろ! 空気読めよ!

「そうね、私も乗ってみたい、お兄様いいかしら?」

「いいよいいよ、僕も乗ってみたかったんだ! あははははは」
 泉にそう言われれば断れるわけもなく……僕のバカぁ……

「あ、じゃあ私チケット買ってくる! 待ってて!」
 そう言って愛真がチケットセンターに走っていく……結構高いヒールを履いてるのでちょっと心配……こけるなよ……この後僕がこけにくくなるだろ。

 愛真が戻って来ると皆でジェットコースター乗り場に移動する。多少の混雑あるものの10分くらいの待ち時間で乗れた。
 係員に誘導されジェットコースターの席に向かう。

「私~~真ちゃんのとーなりーー」
 相変わらず空気読めない愛真だが、ここは上手いぞ! 

「ちょっと愛真さん、お兄様の隣はいつも私なんですが!」
 ええええええええええええええええ!
 ちょっとちょっと、泉さん? 何言っちゃってるの? 貴女が空気読めなくてどうするの? 凛ちゃんが隣に座るんだよ? キャーーとかいってしがみついてくれるんだよ? チャンスなんだよ?

「えーーーー、まあいいか、ここは妹さんに譲るか」
 おいおいおいおい、ちょっと愛真、いつもの強引な愛真はどこに行った?
 あの小学校の時に強引だった愛真はどこへ? ああ、あの時の愛真はもう死んだ。

「早くお兄様!」
 何でそんなに楽しそうなの? 泉さん、本当にカースト最上位なの? そんなに遠慮していて、何であんなに友達出来るの?
 周りからの早くしろ的な視線に僕は仕方なく泉の隣に、後ろからはしゃぐ愛真の声が聞こえる。隣ではワクワク顔の泉……そう言えばなんだか凛ちゃんの機嫌が悪そうな気がするんだけど……
 
 そんな事を思っていると、不意に振動が……ジェットコースターが動き出すと僕はある事を思い出す。

「あ……僕ジェットコースター初めて……」

「お兄様?」

 そうだった、そもそもジェットコースターどころか、遊園地に来ること自体初めてだ。ヤバイヤバイヤバイヤバイ……怖いいいいいいい!

「泉……」

「お兄様? 大丈夫ですか?」
 僕の不安を察知したのか泉がそう言って声を掛けてくれる。ううう情けないけど、そんな事を考える余裕もない……怖いうわうわ高い!
 そうだった、あまり出掛けたりしないから気が付かなかったけど……僕多分……高所恐怖症だ……めちゃくちゃ怖い……足がすくむ。

 どんどん高度を上げて行くジェットコースター、ああああああ、もうダメ目も開けられない……

「お兄様大丈夫ですか? お兄様? おにい……」
 泉の声が止まった瞬間に突然重力を失い、内蔵が持ち上げられるような感覚が襲う。

「きゃああああああああああああああああああああ」
 後ろから愛真の悲鳴が、怖い怖いいいいいいいいい!
 目をつむっていても襲って来るスピード感覚、そしてごーーーーっという激しい音、空気を切り裂くような風。
 なんで、なんでこんなものに皆乗るの? 高いお金出して? バカなの?
 上下左右に激しく揺さぶられる。目をつむっているので何処をどう言う風に走っているかわからない。
 あとどれくらい? どれくらいこれを我慢していれば終わるの、やばい…吐きそう……
 そう思っていたら、不意に僕の手に温もりが……前の手すりを掴んでいる手の甲に誰かが触れている。

「おかあさん?」
 天国の母さんが僕の手を握っている。僕は思わず目を開けた。
 泉が隣から手を? 僕は思わず泉の方を見る!
「お兄様、私が居ますから」
 僕の手を優しく握り、僕の方を向いて優しく微笑む泉が……

「うん」
 僕がそういうと、泉は再び前を見る。風が泉の髪を巻き上げその美しい黒髪は光を帯びてキラキラと輝いて見えた。ああ天使だ、やっぱり泉は天使なんだ。
 天使が横にいる。こんなに心強い事はない。
 僕の体の力が抜ける。恐怖から楽しさに変わる。
 
 泉……


####


「うううう、私ちょっとトイレに……」
 ジェットコースターから降りると愛真が口を押えフラフラとトイレに向かう。僕は最初あれだけ怖かったのに今は全然平気だ、初めてのジェットコースター、最後はまた乗りたいなんて思っていた。

 僕より愛真の方がダメージは大きい、ずっと叫び続け最後は放心状態になっていた。

「私ちょっと一緒に行ってきますね」
 泉が愛真に付き添いトイレに向かった。さすがはクラスカースト最上位、こういう気遣いが人気の秘訣なのか?

 残された僕と凛ちゃんは近くのベンチに座って二人を待つことにした。


「ねえ……佐々井君、今日は一体なにが目的なの?」

「え?」
 座った直後凛ちゃんからそう話し掛けられる。
 えっと……まだ早い僕から言えない、こういうのは当人が、泉が直接言わなければ。
 そう思い僕は白を切ろうとした、しかし……

「あのさ、私ね……人を見る仕事、人から見られる仕事をしているの……自慢じゃないけどお店のナンバーワンだし、コンテストでも優勝してるの……今の佐々井君はいつもの佐々井君じゃない」

「え?」
 いつもの僕じゃない?

「佐々井君……なにか嘘ついてるでしょ?」

「な、なんの事かな?」

「ほら目を逸らした、私分かるのそういうの」

「いや、僕は」

「あのね、私、佐々井君から友達になってくれって言われて、嬉しかったの……佐々井君て凄く大人しいってイメージだったからちょっとびっくりしたけど……私ね……嘘がわかるの……友達が嘘を付くのがわかっちゃうの……だからあまり友達を、親しい友達を作らなかったの……学校でも……皆を避けてた」

「凛ちゃん」

「でも……まあ、私自体が嘘つきだからね、正体を隠して、内緒で働いて……でも……だからこそ佐々井君には嘘をついて欲しくない……」
 凛ちゃんはそう言って僕を見る、見つめる。 その悲しい顔、寂しそうな瞳から今度は目を逸らせなかった。


 





しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

【完結】好きって言ってないのに、なぜか学園中にバレてる件。

東野あさひ
恋愛
「好きって言ってないのに、なんでバレてるんだよ!?」 ──平凡な男子高校生・真嶋蒼汰の一言から、すべての誤解が始まった。 購買で「好きなパンは?」と聞かれ、「好きです!」と答えただけ。 それなのにStarChat(学園SNS)では“告白事件”として炎上、 いつの間にか“七瀬ひよりと両想い”扱いに!? 否定しても、弁解しても、誤解はどんどん拡散。 気づけば――“誤解”が、少しずつ“恋”に変わっていく。 ツンデレ男子×天然ヒロインが織りなす、SNS時代の爆笑すれ違いラブコメ! 最後は笑って、ちょっと泣ける。 #誤解が本当の恋になる瞬間、あなたもきっとトレンド入り。

隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり

鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。 でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

処理中です...