31 / 99
お兄様は前から好きだったんですか?
しおりを挟む自宅で夕飯を食べながら僕は今日の余韻に浸っていた。
楽しかった、本当に楽しかった。
あの後はみんなで食事をしたり買い物をしたり乗り物に乗ったりした。
今日は僕の人生での中で一番楽しい出来事だったのかも知れない。
友達皆で遊ぶのって、こんなに楽しかったんだ。
そして……良かった、僕の勘違いだった。
泉と凛ちゃん……良かった、本当に良かった……
ん? あれ? 今、僕……泉と……凛ちゃんって……あれ? 僕はどっちに対して良かったって思ってるんだ?
しかも良かったって、何が良かったんだ? あの二人が相思相愛じゃなかった事が? 泉の思い人が凛ちゃんじゃなかった事が? 凛ちゃんが泉とくっつかなかった事が?
妹であり、中学の時からの僕の思い人、泉に対して?
高校に入って初めての友達であり、僕の憧れの人ミカンちゃんこと一萬田凛ちゃんに対して?
当然……泉だよね……あれ? でも僕と泉は兄妹になったんだから……僕はもう諦めて、え? あれ?
僕はどっちに対してホッとしたんだろう? あれ?
「お兄様? どうかなされました?」
「え? な、何でもないよ!」
「でも、あまり食事が進んでいらっしゃらないので……お口に合いませんでしたか?」
今日の泉の手料理はビーフストロガノフとポテトサラダ、今日は出掛けて時間が無かったのでと謝られた……何について謝られたのか分からない程美味しい。
「ううん、いつも通りで美味しいよ! あ、でもほら、遊園地でちょっと食べ過ぎちゃったからかな?」
「そうですね……お兄様とっても楽しそうで……はしゃいでましたし……」
「うん、凄く楽しかった!」
「そ、そうですか……」
「うん! ジェットコースターに初めて乗ったけどあんなに面白いとは、それに皆と遊ぶってのも初めてで、スッゴク楽しくて…………あれ? どうしたの?」
「い、いえ……お兄様が楽しんでらっしゃたのなら……」
「え? え? 僕何か変な事言った?」
「いえ…………ただ……」
「ただ?」
「いえ……私と一緒の時よりずっと楽しそうだったので……」
「え? ああ、うん、泉と一緒の時も楽しいけど、皆と一緒に遊ぶってもっと楽しいよね、泉が友達作れって言った理由が良くわかったよ」
「いえ、あれはそういう意味では……」
なんだろう? 今日の泉は歯切れが悪いと言うか、いつもと違う……
「えっと、どうかした?」
僕がそう聞くと泉は僕を見て真剣な顔で言った。
「お、お兄様は、その……委員長……いえ、一萬田さんの事、どう思っているんですか?」
「え? みか、凛ちゃんの事?」
「凛…………」
なんだろう、やっぱり泉は凛ちゃんの事、いや、それは今日完全に否定したし、凛ちゃんもバカって……つまりこれはどういう事で聞いているんだ?
僕は考える、この間みたいな勘違いを二度としないように、今度は間違えない様に考える……泉は何が聞きたいのかを…………
「…………お兄様、お兄様は一萬田さんの事が、その……前から好きだったんですか? だから友達作れって言った時……真っ先に一萬田さんに……」
「え? ええええええええええ!」
な、何で泉は知ってるんだ? 僕が凛ちゃんのファンって事を! 僕が前からミカンちゃんの事大好きって事を!
おかしい、隠してたのに、そう言えば今日凛ちゃんメガネしてなかったから、ひょっとしてバレた?
「し、知ってたの?」
「はい、今日なんとなく……」
「そうなんだ……」
まずい、まずいよ凛ちゃん、バレちゃったよ、どうしよう……
「お兄様……あの……」
「ごめん泉! この事は皆に、特にクラスの人には言わないで欲しいんだけど!」
「え? それは別に、言いふらす事ではないですけど……本当なんですね?」
「うん……実はそうなんだ……僕もこの間気付いてびっくりしちゃって」
「お兄様も知らなかった……私が煽ったばかりに……」
「煽る? ああ、そうだね、そのお陰で僕は凛ちゃんと」
「そ、そうですか、お、おめでとうございますお兄様……妹としては喜ばないとですね……」
「あ、うん、ありがとう」
僕が憧れの凛ちゃんと友達になれたのは泉のお陰なんだ、ありがとう泉!
「いいえ……」
あれ? あまり喜んでいない? 何でだろう? 友達作れって言ったのは泉なのに……ああ、そうか皆に言わないでって頼んだからかな?
「凛ちゃんと相談して、皆に言うか決めるから、それまでだから、ね?」
「発表!」
「うん、別に悪い事じゃないし」
アイドルだよアイドル、メイドアイドルってそんなに悪い事じゃないと思うんだよね?
「そ、そうですね、私にとってはとても悪い事ですが……」
泉にとっては悪い? あーーそうか、学園のアイドルが泉から、凛ちゃんに変わってしまうからか……でも泉の地位は変わらないと思うけど……
「気にしなくても大丈夫だと思うけどな~~」
「気にならないわけ! も、もう結構です、私は妹ですからね!」
「え? う、うん」
泉は妹だけど、そもそも最初に自分から妹だって言っておいて……何で今さら、それおま言う? って感じなんだけど?
「早く食べて下さい、冷めちゃってますよ!」
「あ、うん」
なんだか怒っている?……こんな状態では残す事も出来ないので、僕は急いで食べると、泉は皿を奪い取るようにシンクに持っていき、僕に背を向けてさっさと洗い始めた。
うーーん? 何か怒ってる様な? 何でだろう? 僕はそう思うも泉の背中からにじみ出ている話しかけるなオーラのせいで、何も聞けなかった。
0
あなたにおすすめの小説
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり
鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。
でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。
罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語
ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。
だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。
それで終わるはずだった――なのに。
ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。
さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。
そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。
由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。
一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。
そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。
罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。
ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。
そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。
これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる