クラスでカースト最上位のお嬢様が突然僕の妹になってお兄様と呼ばれた。

新名天生

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みかんちゃんのお仕事

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 入口で迎えてくれたメイド様に案内され店内に、いや、僕のお屋敷の食堂に案内され席に着く。

 丁寧な挨拶、感じの良い笑顔、最後に椅子まで引いてくれるその対応に戸惑いながらも、凄いなーーと感心していた。

 クラシカルロングタイプのメイド服、胸元のリボンが特徴的で全体はややふっくらとアレンジしている。
 そのメイド服姿の可愛い女の子が僕に可愛く微笑みながら言った。

「ご主人様様、こちらのお屋敷にお帰りになられたのは初めてでございますか?」
 身長がかなり低いそのメイド様に僕は見覚えがあった。確か『全国メイド喫茶ナンバーワン決定戦』のキュート部門で賞を取っていたメイド様だ。

「あ、はい」

「畏まりました、では最初に当屋敷のご説明をさせて頂きますね」

「あ、はい!」

「まずはこちらをお渡し致します、こちらはギニーと言って当屋敷のメイドに対する報酬、所謂チップと同等の物でございます。お気に入りのメイドが出来ましたらそちらにお渡しください。本日は初めてのお帰りと言うことで10ギニーをお渡し致します。このギニーはご主人様様のお飲み物やお食事をお召し上がりの際にお渡し致します。お気に入りのメイドがお休みの場合でも入口の所に各メイドに投入出来る場所が御座いますのでそちらにお入れください」
 そう言ってテーブルに綺麗な金色に光るコインを10枚置いた。

「ご指名のメイド等いらっしゃいますか? いらっしゃらなければ本日私『シュガー』がご主人様の担当致しますが?」

 このメイド様の名前はシュガーちゃん……ストロベリーブロンドの髪、青い瞳、外国人の様な顔立ちだがかなり幼いイメージ……か、可愛い……雑誌で何度か見かけていたが、写真で見るよりも遥かに可愛い。

「あ、えっと……ご免なさい、僕、みかんちゃんの知り合いなのでみかんちゃんをお願いします」

「左様でございますか、それではみかんをお呼び致しますね。こちらはご主人様のお屋敷ですので本日はごゆっくりとおくつろぎくださいませ」

 断ったのに嫌な顔一つしないでシュガーちゃんは丁寧にお辞儀をしてバックルームの方に向かって行った。

 僕はシュガーちゃんの後ろ姿を見つめる……ああ、メイド服は後ろ姿がまた良い……あのエプロンの結び目が隠されたリボンの様で可愛いと再認識した。

 さっき入店したばかりだから恐らく着替えに時間が掛かるだろうと予想し、みかんちゃんを待っている間僕は店内を見渡す。

 店内は一言で言うと内装が豪華、綺麗な壁紙、豪華なシャンデリア、でも変にゴテゴテキラキラしているわけではない所にセンスの良さを感じる。各席がパーティションで区切られており他のお客の姿は見れないが、メイド様数人が各席で対応しているのを見るとそれなりに居ると思われる。
 店内に流れるクラシックの曲が心地よく、時間の経過を忘れさせてくれる。

 どれくらいの時間がたったかわからない。本当に自分がお屋敷に、自分の家に居る様な感覚になりながらボーッと店内を眺めていると、物凄く立ち居振る舞いの良いメイド様がバックルームから出てきた。
 それは出てきたというよりは、降臨したと表現した方が良いだろうと思う程輝いており、他のメイド様達とは違う圧倒的な姿だった。

「みかんちゃん?」
 そこに降臨したのはみかん様だった。一瞬迷ったのは学校に居る時とあまりにも姿が違ったからだ。

 今のみかん様のお姿はブルネットの髪、元々綺麗だった顔が化粧によりさらに磨きが掛かっていて、それはもう見惚れる程の美しさ。着ているメイド服は先ほどの可愛いらしいクラシックロングでは無くシンプルな英国風、シンプルだけにスタイルの良さが際立つ。先ほどの可愛いメイド服よりも地味なんだけどみかんちゃんが着ていると全く見劣りしない、むしろ清楚なイメージがとても良く感じる。

 みかんメイド様は真っ直ぐに僕の横に歩いて来ると持っていたお水を丁寧に置き美しい所作でお辞儀をする。
 そして営業スマイルとは思えない程の笑顔で僕に言った。

「お帰りなさいませ、ご主人様」

 先程入店した時にも言われたが、全く違う言葉に感じた。そしてその笑顔に心を撃たれる。え? 何? やっぱりみかんちゃんて天使だったの?

「本日のお飲み物のメニューでございます、お食事はなされますか?」
  そう言ってどこかの高級レストランの様なメニューを渡される。

「あ、はい、します」
 断れるわけもなくそう言うと更に豪華なもう一つのメニューを渡される。

「お決まりになりましたらベルでお呼びください」
 そう言うとテーブルにおかれている呼び鈴を指差す。ファミレスにあるような電気式の物では無く銅で出来たクラシックなタイプの呼び鈴だ。チンチンと突起物を押して鳴らす奴ね。

「あ、はい、わかりました」
 僕が緊張してそう言うとみかんちゃんは笑顔は崩さず少し怒った口調で言った。

「ご主人様、ここはご主人様のお屋敷でございます。そして私達はご主人様の使用人でございます。敬語では無くもっと命令口調で言って頂かないと困ってしまいます」

「あ、はい、いえ……えっと、わかった」

「出すぎた事を言って申し訳ありませんでした。ではご用が御座いましたらお呼びくださいませ、失礼致します」
 みかんちゃんは再度丁寧にお辞儀をすると僕の席から離れて行く……凄い……凄すぎる。そのみかんちゃんの接客に、プロの接客に僕は圧倒された。

「凄い……やっぱりメイド様は、メイド喫茶は……いや、違う……みかんちゃんが凄いんだ……みかんちゃん……凄すぎる」

 全国1位のメイド様に、その姿に、接客に僕は感動していた。

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