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本当の兄妹
しおりを挟む「ふーーん、そっか」
「そうなんだよ、もう泉って本当わかんないよ」
僕は泉の作ったお弁当を見つめながらそう言った。今日も泉とは別行動、朝ご飯もお弁当も作ってはくれている。でも、以前とは違う何か義務の様な、作業の様にしか感じられない。
「うーーーーん……あのさ……佐々井君て、泉さんの事好きなの?」
「え! ええええ!」
「あ、ふーーん、そうなんだ……」
みかんちゃんはそう言うとパクりとサンドイッチを頬張る。そしていつもの様にオレンジジュースを一飲みした。
そう聞かれ僕は少し考えた……僕は泉の事をどう思っているか、どう思っていたか……そして僕は何も隠さずにありのまま答えた。
「いや、えっと……その……前はね……前は好きだった……」
「だったか……じゃあ今は?」
「今は…………今は兄妹だから……泉は妹になったし」
「兄妹って言っても血は繋がって無いんだよね?」
「うん……でも泉はずっと兄が欲しかったんだって、ずっとずっと兄が欲しかったって、だから僕は泉の兄になろうって……そう決めたんだ」
「……佐々井君は……それで良いの?」
「…………うん」
「そか……」
みかんちゃんはそう言うと、またサンドイッチを一口噛った。
本日のお昼休みも恒例となりつつある、校舎裏の秘密のベンチにてみかんちゃんとランチタイム、僕は昨日の泉との事をみかんちゃんに相談していた。
「……でも、今の佐々井君の気持ちって……私にも妹がいるから少し分かる……かも?」
「そうなの?」
「うん……妹は生意気だし、わがままだし、かわいげ無いし、でも……妹なんだよね、もうそれだけで好きなんだよね、家族なんだよね。多分こういう感覚って彼氏やそれこそ結婚しても中々ならないと思う、多分佐々井君と泉さんは家族になりかけているんだろうね」
「そうなのかな?」
「付き合っているわけでも、恋人として愛し合ってるわけでも無い二人が突然兄妹になって一緒に暮らす。難しいと思うよ、そう言う所でお互いの感覚って言うのかな? 意見や意識が食い違うって事もあると思うな。そして家族なら兄妹ならなんて事無い事でもやっぱりまだ家族になりきれていないが故に喧嘩になっちゃうとかね」
「うーーーーん、言われてみれば……、でもどうしたらいいのかわからなくて……」
「こういうのって時間が解決してくれたりするんだけどね、後は……うーーん、そう、じっくり話して見れば? 話し合えば分かると思うけどなーー」
「そうなのかなぁ? うん、でもそうかも……最近ちゃんと話してないし……うん、そうだね」
「うん、でも……そうか~~、佐々井君て泉さんの事好きだったんだ~~それでか……」
「それでって?」
「え? 佐々井君が私の弱味を握ってもエッチな要求して来なかった理由」
「え、ええええええええ! エッチなってえええええええ!」
「あははははははは、顔真っ赤だよ~~~」
「そ、そりゃ、えっと…………も、もしだよ、もし僕がそんなエッチな要求をしたら、その、みかんちゃんはどうしてたの?」
「え~~~そりゃ、受け入れるよ」
「ええええええええええええ!!」
「でも今みたいに友達には絶対にならないけどね~~~~」
「…………そか……だよね、ああ良かった、変な事言わなくて」
「良かったの?」
「うん! 勿論!」
「そか…………うん……そうだね」
「あーーでもちょっとくらい……今からじゃ駄目?」
「駄目です~~~~もう友達になっちゃったんだからね~~~~」
「えーーーーでも……ちょっとくらいなら」
僕は手を伸ばしみかんちゃんを触ろうとする。
「お客様当店はお触りは厳禁でございます!」
「しないよ、お店では、でも……ここなら誰も見てないぞ、えっへっへ」
僕がにやけながらみかんちゃんに近づく、ここなら本当に誰も来ない、校舎の近くに窓も無い。
「いやあああ、痴漢、変態! 近寄らないでえ!」
胸を隠しながら後ずさるみかんちゃん、そのマジっぽい表情を見て僕は焦った。冗談なんだけどひょっとして本気にされたかもと……
「う、嘘だよ! ご、ごめん!」
「わかってるよ~~~あははははははは」
「はあああああ、なんだ本気にされたかと……」
みかんちゃんの演技力凄い、やっぱりメイド喫茶でメイドの演技をしているからなのかな?
「佐々井君はそんな事しないってわかってるよ~~」
「そ、そう?」
「うん、ヘタレだもんね~~~」
「ひ、酷い!」
「でも……優しい大事な友達だよ」
「うううう、それ……あまりフォローになってない!」
「あはははははははは」
「もおおおおおお!」
そう言ってお互いケラケラと笑った。
みかんちゃんとの会話は楽しい、こんなに楽しく話すのって初めてかも知れない……泉とこんな風に話せる事が出来たらどれだけ楽しいんだろう……もし僕と泉が本当の兄妹に、僕が心から泉の事を妹って思ったら、思う事が出来たら、こんな風に心から楽しい会話が出来るんだろうか?
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