クラスでカースト最上位のお嬢様が突然僕の妹になってお兄様と呼ばれた。

新名天生

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パンツ見てます!

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「真ちゃん起き上がれる?」

「無理……僕の事はほっといてくれ」

「うーーん、どこか痛いの?」

「全部痛い……身体も心も……」

「うーーん……とりあえず見たところ大丈夫そうだな~~、ほら真ちゃん、起きて! 皆見てるよ!」

「だーーかーーらーー無理って言ってるだろ!」

「うん、それだけ元気なら大丈夫だね、真ちゃん、起きないとね~~」

「お、起きないとなんだよ?」

「この人~~~~寝転がって私のパンツみてますうううううう!」

「ひいいいいいいいい」
 そう言われ僕は飛び起きた! いや、見たんじゃない、見えただけだ!

「わーーい、起きれた~~~、じゃあ、行こう」
 愛真は飛び起きた僕を支える様に腕を抱く、転んだ拍子に膝を打ったのか右足がかなり痛くフラフラしている。

「い、行こうって?」

「私の家~~」

「…………」
 

 特に行く当ても無かった僕は愛真の提案に何も言えなかった。
 でも今は家には帰りたくない……泉には会いたくない……ただ、それだけだった。


 足を引きずりながら歩く事10分、綺麗なマンションに到着する。
 愛真は持っていた鍵をパネルにタッチし自動ドアを開ける。小学校の時とは違う家、昔一瞬に遊んだ家はもう無い。

「ただいま~~~~おかーーさーーーん、真ちゃん連れて来た~~~」
 そう言われた瞬間僕は数年前の記憶が甦る。しまった愛真のお母さんの事を僕はすっかり失念していた。
 ドタドタと奥から走ってくる、双子かってくらい愛真そっくりの人物が僕を見るなり満面な笑みに変わった。

「きゃああああああああ! 真ちゃん、わああああああああ、すっかり大きく…………あまりなって無いわね」

「うるさいよ!」

「あら、口調は少し乱暴になったわね~~うん、さすが男の子、でもあまり変わって無くて可愛い頃のまま、よしよし、可愛い可愛い」
 そう言いながら僕の頭を撫でる愛真のお母さん……そして僕は抵抗せずに素直に撫でられる。
 この愛真よりもさらに距離感の近い愛真のお母さん……昔からこうだ……そして僕はこの距離感、この馴れ馴れしさに何も言えない、抵抗出来ない……だって……母さんを思い出させるから、こんな風に頭を撫でてくれた、母さんを……

「お母さん、真ちゃん足怪我してるから薬箱取ってきて、ほら真ちゃんもデレデレしてないで行くよ」

「あら、どうしたの? 怪我? 大丈夫?」

「あ、うん、ちょっと転んで」

「そう、じゃあ今持って行くから」

「うん、よろ~~~~」
 愛真はそう言って僕を引っ張って行く、そして扉を開け僕を部屋に入れたって……

「え! 愛真の部屋!」

「うん、久しぶりでしょ~~」

「いや、まあ……」
 普通リビングとかじゃないの? いきなり部屋に?
 僕は少し戸惑うも、まあ初めて入るわけじゃないしと素直に中に入った。
 部屋の大きさや造りは当然変わっている。でも匂いは以前と変わらない、ほんのりイチゴの様な香り。そして前と同じく部屋はぬいぐるみで溢れていた。昔から結構な数のぬいぐるみが置いてあったが、かなり増えた様でそこらじゅうぬいぐるみだらけ、主に動物と魚類のぬいぐるみが多い所も昔から変わらない。

「はい、そこ座って足捲って」

「そこ?」

「うん、ほら!」

「うわわわわわ」
 愛真は僕を無理やりベットに座らせベットの下にペタりと座る。そして徐に僕のズボンの裾を捲った。

「いたたたた」
 裾が傷を擦り膝に痛みが走る、これはかなりの傷が……

「傷は擦り傷ね、打撲は……ちょっとしてるけど、たいしたことなさそう……相変わらず真ちゃん痛いの苦手だね~~」

 そう言われ恐る恐る膝を見る…………微かに傷が……あれ? 痛みが少し薄れて来た。

「はい、持ってきた……あら、平気そう、綺麗な足ね女の子みたい」
 部屋に入って来て僕の足を見るなりそう言う愛真のお母さん……相変わらずズバズバと……
 愛真は薬箱を受けとるとテキパキと僕の膝を治療し始める。

「とりあえず消毒と絆創膏と湿布も貼っておくか、他に痛い所は?」

「えっと……肘?」

「じゃあ、シャツ脱いで! ほら!」

「うわわわわ!」

「愛真! ちゃんと避妊はしなさいよね」
 そう言って部屋を出ていく愛真のお母さん。

「おい!」

「はーーい」

「はーーいじゃない!」

「いいからほら!」

「きゃ!」
 着ていたシャツを脱がされ、つい小さな悲鳴をって逆だろこれ!

「うん、こっちは大丈夫そう、湿布だけでいいね」

「いや、骨が折れてる可能性も」

「あはははは、ナイナイ」
 爆笑しながら手を左右に振る……人が怪我してるのに爆笑とか死ねば良いのに……

「医者じゃないのにそんな事言っていいのかよ!」

「それだけ動かせれば大丈夫!」

「もう、相変わらず勝手な事言って……」
 愛真は既に薬を片付け始めている、まだこんなにズキズキ痛……みは減ったけど……

「さあ、それでどうしたの?」
 愛真の顔がそれまでとは変わって真剣な顔に……いや……あまりなってないな……

「あ、うん……」

「ケーキ買って泉さん、妹さんと話しをしたんじゃ無いの?」

「話しは……してない、聞いただけ……」

「ふーーーーん、なんか言われたんだ」

「……うん」

「なんて?」

「言えない……」

「なんで?」

「…………もう誰も信用出来ないから……泉も……凛ちゃんも…………愛真も……」

「私も?」

「うん……」

「そか……うん……そうだね……私……真ちゃん裏切っちゃったもんね……ごめんね」
 
 愛真はそう言って僕を見つめて涙を流し始めた……それを見て僕はずっと隠してた思いが溢れだしてくる。愛真が行ってしまった悲しさが、ずっと隠してた思いが、ずっと黙ってた事が、今僕の目から涙となって溢れ出る。

「そ、そうだよ……愛真……突然いなくなって……また……僕一人になって、また一人ボッチに……」
 あの時の、あの愛真の姿、僕に敬礼して去っていったあの姿が頭を過る。
 あの時愛真は泣いていた、でも僕は泣けなかった。突然過ぎて、悲し過ぎて、寂し過ぎて泣けなかった。

「真ちゃん……ごめんね……ごめんね」
 愛真は立ち上がり、ベットに腰掛け泣いている僕の頭をそっと抱いてくれた。
 
 愛真の甘い香りが柔らかい感触が僕の心を癒す、深い傷がゆっくりとゆっくりと塞がっていくかの様に……


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