クラスでカースト最上位のお嬢様が突然僕の妹になってお兄様と呼ばれた。

新名天生

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お風呂回

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 夜になった……なってしまった……
 あれから泉は僕に付きっきりで監視している……本当に看病じゃないよ、これは監視だよ……
 
 まあずっと、と言っても時折席を立つが、でもすぐ部屋に戻ってくる。10分と間が空くことはない……完全に看守と囚人の関係だ。

 そんな事を思っていると泉はおもむろに立ち上がり僕に向かって言った。

「さあ、お兄様、そろそろお風呂に入りましょうか」

「お風呂……え! いいいい、いいよ、今日はいい、入らない!」

「でも……お兄様……入院中は身体を拭く位でしたし、そろそろ入らないと……その……」
 え? 何? その何か言いたそうな顔は…………げ! 臭う? ほ、本当に? 僕って実は今臭い?

「えっと、じゃ、じゃあ……」

「はい! では準備して来ますね!」

「じゅ、準備?!」
 泉はそう言うと嬉しそうに部屋を出て行った……準備って何の準備ですか? 泉さん~~~~、なんか……そう言えば入院中言ってたよね、3人で色々と……裸でとかなんとか……いや、あれは売り言葉に買い言葉で出ただけだよね? てか無理だよ、そんなの……僕が恥ずか死ぬよ。

 そんな悶々とした気持ちのまま部屋で待っていると、暫くして泉が白のバスローブ姿で部屋に入って来た。バ、バスローブ……高級ホテルでお金持ちがお風呂上がりにワイン片手で着ているってイメージの、あのバスローブ……泉にぴったりなんだけど僕の部屋で見ると違和感しか感じない……
 
 バスローブ姿の泉が目の前に来る。胸の膨らみ、白い生足……バスローブの下はひょっとして……想像した瞬間……僕の心臓が高鳴る。

「さあ、お兄様参りましょう」

「いや、さあって、まさか一緒に……とかじゃないよね?」

「え? 一緒に入らないとお兄様が洗えません」

「あ、洗う?! 洗うの? 僕洗われちゃうの?!」

「はい! 大丈夫です! 看護婦さんからしっかり教わってきましたので、任せて下さいお兄様!」

「教わる? 教わるって何を? いや、ちょっと待って、ああああああああ」
 
 泉は僕の腕を取り風呂場に……連行されていく……いや、しかし……泉はどうしてここまで積極的なんだ? まあ今に始まった事じゃ無いんだけど……
 
 泉に連れられ階段を慎重に降り浴室に向かう。僕の腕を持つ泉、僕は泉の肩に手をやり歩く、腕に触れている泉の胸の感触に全神経が集中する。
 腕に伝わる柔らかい感触がいつもよりいっそう引き立つ、やっぱり下は……

 洗面所兼脱衣場に到着すると泉はすぐに僕の着ているシャツに手をかけた。
「さあ~~お兄様、脱ぎましょうね」
 まるで子供と一緒にお風呂に入るかの様に、躊躇ちゅうちょなく僕のシャツのボタンを外していく泉。

「いや、ちょっと……待って、ストップ、泉ストップ!」

「お兄様?」

「大丈夫、本当に大丈夫だから、一人で入れるから!」

「でも……片足で転んだりでもしたら」

「だ、大丈夫、大丈夫だから、本当に」
 
「そんな……心配です……」

「だ、大丈夫、本当に大丈夫だから」

「でも……お兄様はひょっとして……私と一緒に入るのが嫌なのですか?」

「え?、い、嫌じゃない、嫌じゃない! けど……その……恥ずかしい……ってか泉は恥ずかしく無いの? いくら正式に兄妹になったからって、その……クラスメイトの男子と一緒に入るって」
 まだ兄妹になって日も浅い、ついこの間までただのクラスメイトの関係、そんな僕と一緒にお風呂に入るなんて……

「それは……少しは恥ずかしいです、でも……それ以上に嬉しいんです……だって……夢だったんですもの、兄妹で一緒にお風呂って、小さい頃お兄ちゃんと一緒に入れなかった……だから今お兄様と入れる事に……私喜びを感じているんです。お兄様がいつもありがとうってさっき言ってくれましたけど、感謝しているのは私です。お兄様は私の夢を叶えてくれているんです、だから……」

「泉……」

「さあお兄様」
 泉は笑顔で再びシャツのボタンに手をかける。

「待って、本当に待って、わかったわかったから!」

「お兄様」

「入るって言っても家のお風呂狭いし、湯船に二人は無理だよね」

「そうですか? でも少し詰めれば」

「ほら、僕今足曲げられないし」

「あ、そうですね」

「だからえっと、せめて怪我が治ってからじゃ……駄目かな?」

「そうですか……では今回はお背中だけでも洗いますね、それに座ったりする時に介助は必要だと思うんです、何よりも危ないですから」
 そう言われるともう逃げようがない、確かに片足だと滑って転ぶ可能性も高い。

「えっと……じゃあせめて泉はそのままで、僕はタオルを巻くから」

「え? それじゃバスローブが濡れてしまいますわ」

「ああ、じゃ、じゃあせめて泉もタオルを巻いて、お願いだから」

「そうですか……じゃあそうしますね」
 そう言いながら笑顔で僕を見つめる泉………………

「うん……えっと……あの……後ろ向いて欲しいんだけど、僕も後ろを向くから」
 脱ぐのも脱がれるのも恥ずかしい……せめて後ろを……

「あ、はいお兄様がそうおっしゃるなら」
 そう言い僕と泉は背中合わせになる。いや、そうは言ったけど……ほ、本当に? 本当に一緒に入るの?
 僕は諦め服を脱ぎ始める。泉が今どういう状態なのか……振り向けばわかる、わかるけどそんな事をする度胸も無い僕は素早く服を脱ぎ身体にバスタオルを巻く……あ、違った、僕は男だから胸に巻く必要はないんだった……タオルがさすがに小さくて恥ずかしい……大きめのバスタオルを腰に巻き直す。
 お約束の無い様にしっかりと結んだ、よし! 完璧だ。

「えっと準備出来ました」

「あ、はい、私も大丈夫ですよ」

 そう言われ僕はゆっくりと振り替える。目の前には黒い髪をアップにし、身体にバスタオルを巻いた泉がいる……白い手足、少し赤みがかった胸元と肩、バスタオル越しからわかるスレンダーな体型、それでも出るところは出て引っ込む所は引っ込んでいるのがわかる…………………………あ、僕、今軽く死んでた……

 呆然としている僕に泉は笑顔で言った。

「さあお兄様、入りましょう♪」
 鼻歌でも歌いそうなテンションで僕の腕を取ると、僕はそのまま泉と浴室に入って行った。

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