クラスでカースト最上位のお嬢様が突然僕の妹になってお兄様と呼ばれた。

新名天生

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泉の将来、僕の未来

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 泉と一緒にお婆さんに会った。

 内容は泉の事だった。
 泉は将来お婆さんの跡を継ぐだから僕にそのサポートをしてほしいという事だった。
 
 泉のお兄さんが継ぐ事になっていたんだろう、しかしもうそのお兄さん居ない。
 なので泉はこれからそういう教育を受ける事になるとか……なんとか……。
 僕には難しくてよくわからなかった。
 
 その後2、3会話をしたが、お婆さんの体調が優れないという事で僕達は部屋を出た。

「お兄さま……申し訳ありません……」
 お婆さんの部屋を出ると泉は僕に向かってそう謝ってきた。

「何が?」

「お兄さまにサポートだなんて……本来は私がお兄さまのサポートをする立場ですのに……」

「あ、ああ、まあ仕方ないよ、僕はお婆さんと血縁関係では無いし」
 そう……もしも父さんと義母さんが離婚したら僕達はまた他人になってしまう……。
 そんな曖昧な存在の僕を跡取りとしてお婆さん認めるわけはない……。

「お兄さま……」
 泉は僕の手をそっと取るとそれを頬に当てた。

「お兄さま……ずっと側に居てください……」
 泉は僕の手を慈しむ様にそう言いながら目を閉じた。
 
 泉の事を知る為に北海道まで来た……でも……この旅で知った最大の事は僕の思いだった。
 泉と兄妹として生きていくという……僕の決心だった。

 泉はまだ用事があるとの事で、帰りはボク一人先に帰った。

 メイドさーーーーーーん(泣)


◈◈◈◈



「へーーーーそうなんだあ」
 僕の前で愛真がニコニコしている。なんだよ僕の失恋を嬉しそうに笑いやがって。
 北海道から帰ると僕は北海道のお土産を渡す為に、愛真と喫茶店で会っていた。

 多分僕は誰かに聞いて欲しかったんだろう……僕の失恋話を……自分の中だけでは処理しきれないから……誰かに吐き出したかったのだろう。

 僕の友達に、親友に聞いて欲しかったんだと思う。

「なんだよ……喜んでるのかよ」
 人の不幸は蜜の味とはよく言った物だ……。まあ、僕の失恋話を聞いて泣かれるのもどうかと思うけどさ。

「あたり前でしょ?」

「なんだよ当たり前って……」

「すっかり忘れてる……まあいいや、でもさあ……真ちゃん本当に諦めたの泉さんの事」

「うん……諦めたも何も……僕達は兄妹なんだから、兄妹が付き合うとか無いでしょ?」

「血は繋がって無くても?」

「ああ、血なんて繋がって無くても家族になれる、兄妹になれるって、僕はそう信じているからさーー」
 うんちょっと格好いい事言った……血が繋がっていても他人の様な家族だっているんだから逆もまた然りだ。

 僕は胸を張ってそう主張してコーヒーを飲んだ。


「じゃあさーー私と付き合おうよ」

「ぶふうううううううう」

「汚いいいいいいい」
 愛真の言葉に僕はコーヒーを思わず吹いてしまった……え? 今なんて?

「あ、ご、ごめん……」
 お手拭きでテーブルを拭きながら、愛真の言葉を思い出す……今……なんて言った? つきあう? 棒かなんかで?

「もーー、で、返事は?」

「へ?」

「真ちゃん前に言ったでしょ? 私の事、前は好きだったって……過去形なのは泉さんが居たからでしょ? でも泉さんの事は諦めたって、じゃあさーー私と付き合おうよ」

「じゃあさーーじゃないよ、そんな軽く」

「軽いのは嫌い? じゃあ…………」
 泉は姿勢を正し真っ直ぐ僕を見た。真剣な顔で僕を見た。

「真ちゃん……ずっとずっと前から好きでした、今も大好き……これからもずっと好き……だから……私と付き合って頂けますか?」
 愛真はそう言うとニッコリと微笑んだ……その子供の頃からの変わらない笑顔にその顔を見た瞬間、僕の心臓がドキドキと高鳴った。

「──えっと……えっと……」
 突然の告白……これで2回目の愛真からの告白に僕は動揺した。

「私とじゃ……嫌かな?」
 今度は少し泣きそうな顔に変わる、コロコロと表情が変わるのはいつもの事だけど、何だかんだ今日は違って見える……可愛いって……滅茶苦茶可愛いって……僕はそう思った。

「…………ごめん……諦めたから愛真にってとか、そんなの違うって、駄目だって」

「いいじゃん……私は気にしない……今はまだ1番じゃなくてもいい、付き合ってくれたら……真ちゃんの1番になれる…………ね……駄目……かな?」
 テーブルの上に置いてある僕の手に愛真は自分の手を添えた……そして優しく微笑む……。

「……か、考えさせて……下さい」
 即答なんて出来ない……でも……泉を諦めた以上……今は断る理由が無い……だって僕はずっと愛真の事が好きだったから……。
 
「──うん……いいよ、私は待ってる……ずっと待ってるから」

 愛真は僕の手の平に自分の手を乗せてそう言った。
 愛真の手のひらは温かく柔らかくて……その手が僕の心をそっと包んでくれている様な、そんな気がした。


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