異世界街道爆走中〜転生したのでやりたい仕事を探します。

yuimao

文字の大きさ
81 / 84
第三章 悩める剣士との出会い

第70話 アドレーヌの決意

しおりを挟む
 アドレーヌ視点

「ここで間違いないの?ザックス」
「はい。この教会の庭でアリシア様が子供たちに剣術を教えてるはずです」
「これは見つからないはずね・・・」

 私はザックスからの報告を受けて、アリシアを連れ戻すべく、目の前のボロボロの教会を訪れていた。
 てっきり街の剣術道場にいるとばかり思っていたアリシア。まさかこんな所にいるなんて信じられない。

 ワタル様は、今日は商業ギルドに行っており、ユキナちゃんとノーミー様は屋敷にいるはずだ。

 ギギギ

 ザックスが教会の古ぼけた扉を開ける。

「・・・アリシア」
「ワタ・・・なっ!ザックス様・・・アリシア・・・」
「ようやく見つけたわよアリシア!」

 ザックスに続いて教会に入ると、三ヶ月前とはずいぶん違う姿のアリシアがドリュアス様の像の前で佇んでいた。
 誰かを待っていたようだが、現れたのが私とザックスだったため驚いている様子だ。

「久しぶりねアリシア。髪を切ったのね・・・それに少しやつれたみたい」

 以前は腰まであったきれいな金色の髪は短くなり後ろでまとめてある。
 それじゃますます殿方が近づいて来ないだろう。

「無事で何よりだアリシア」
「・・・・・・ザックス様」

 バッ!

「急にいなくなるなんて・・・どれだけ心配したと思っているの?」
「すまないアリシア」

 思わず抱き締めてしまったアリシアの体は三ヶ月前と同じで引き締まった体をしていた。剣術の修行は続けているのだろう。

「どうして何も言わずに王都から居なくなったの?」
「私はマリアを手に掛けてしまった・・・もう王都には戻れない・・・」
「それは事故でしょ?あなたが故意にマリアを傷つけるはずないわ」

 体を離した私はアリシアの顔を見ると、唇を噛んで俯いている。

「アリシア・・・あれは不幸な事故だった。戦場に出る以上マリア様も覚悟していたことだ」
「ザックスの言うとおりだわ!幸いマリアは日常生活には支障ない位に回復してる。そのうち剣術だって・・・」
「そ、そうか・・・マリアは元気なのか・・・良かった」

 マリアの事を話すとどこかホッとしたような表情を浮かべる。

「あの子もアリシアの事を許しているわ!だからね!戻りましょ?剣聖の御前試合も近いわ・・・」
「そうだな・・・私もアリシアが居ないと張り合いがないからな・・・」
「すまない・・・アリシア、ザックス様。私は剣聖になる資格はないんだ」
「どうして!?」

 (なんでそんな顔をしてるのアリシア。いつもの自信たっぷりな態度はどこへいってしまったのよ!まるで別人じゃない!)

「私は・・・私はあの日以来剣が持てなくなってしまったんだ」
「なんですって!」
「本当なのかアリシア!」
「私だって何度も剣をとろうしたさ・・・でも駄目なんだ・・・どうしてもマリアの顔がうかんでしまう」
「そんな・・・そんなのって・・・」

 冗談でこんな事は言わないアリシア。今も手が震えて絞り出すように声を出している。

「夜寝ていると夢の中でマリアが言うんだよ。「姉上どうして私を切ったの?」「なんで敵と間違えたりしたの?」その度に謝りながら飛び起きる」
「・・・アリシア」
「分かっただろアドレーヌ。こんな軟弱な剣士・・・もう剣士じゃないな・・・剣聖の資格があるはずがない」

 悲しそうにドリュアス様の像を見上げて呟くアリシア。
 試合になれば相手の剣戟を華麗にかわし、目にも止まらぬ一閃を相手に食らわせる剣姫、妖精姫と呼ばれた姿はどこにもいない。

 ドリュアス様の像はそんなアリシアを静かに見ているだけだ。

「・・・・・・・・・」

「そんな顔をしないでくれアドレーヌ。今の生活も気に入っているんだ」
「・・・そんなの嘘よ」
「嘘じゃないさ・・・最近やらなくてはいけない事もできたんだ」
「私は諦めないわ・・・あなたは私の親友で将来近衛騎士になるのよ!」
「・・・アドレーヌ」
「今日は帰るけど、絶対にあなたを連れ戻すわ!覚悟しておきなさいアリシア!」

「行きましょうザックス!」
「アドレーヌ様・・・アリシアくれぐれも早まった真似はするなよ!」
「・・・はいザックス様」

 ギギギ・・・バタン

「私は諦めないわよ・・・絶対にアリシアを立ち直せるわ!」

「アドレーヌ様。私は急ぎこの事を陛下にご報告したいと思います。アドレーヌ様の警備は部下に任せますが、くれぐれも危険な真似はせぬようにお願いします」
「ええ・・・分かったわ」

 今の生活が気に入っている?
 やることができた?
 冗談じゃない!
 それならなんであんな悲しそうに笑うのよ!

 私は決意を新たにするも、方法がわからないまま馬車に乗り込んだ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

面白い、続きが気になるという方はいいねや感想を頂ければ嬉しいです♪
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

転生したらスキル転生って・・・!?

ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。 〜あれ?ここは何処?〜 転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。

処理中です...