[短編集]数分で読めるホラー小説

リョータ

文字の大きさ
3 / 5

夜の学校

しおりを挟む


夜の学校

 


文化祭の準備で遅くなり、友達の悠人と二人で教室を出た。
校舎はすでに真っ暗で、人気もない。蛍光灯のちらつく廊下を歩きながら、悠人が言った。
「なあ、夜の学校ってさ……変な話、多いよな」

俺は苦笑した。よくある肝試しのネタだと思った。
「例の、3階の廊下にある鏡の話?誰も本気にしてねえよ」
「でもさ、昨日ここに残ってた先輩が、その廊下で“もう一人の自分”を見たって」

冗談のつもりで笑おうとしたが、なぜか声がうまく出なかった。その時、後ろから俺たち以外の足音が確かに聞こえた。
「……誰か残ってる?」
振り向くと、誰もいない。だが足音は俺たちのすぐ後ろからついてくるように響く。

「やばいな」悠人が小声でつぶやいた。俺らは早足になった。

三階の鏡がある場所に差しかかったとき、前方に人影の後ろ姿が見えた。なんだかもやがかかったかのように少し見辛かったが、制服姿で、背格好は……俺とほとんど同じ。
「おい……お前、あれ」
悠人が震える声で言った。人影は、ゆっくりこちらを振り返った。

廊下の薄暗がりの中、顔が朧げながら見える。目を凝らすと、間違いなく、俺だった。
ただし表情は、笑っている。口角を大きく吊り上げ、目だけが冷たく光っていた。

思わず後ずさると、隣の悠人が俺の肩を掴んだ。
「……どういうことだよ」
「わ、分かんねえ……」

だが次の瞬間、悠人が俺を睨んだ。
「本物は……どっちなんだ?」
「は?」
「さっきから、お前の声が後ろからも聞こえてたんだよ」

足がすくんだ。振り返ると、廊下の後方にもう一人の「俺」が立っていた。
後ろに「俺」がいて、前にもきっと「俺」がいる。

後ろの“俺”がに口を開いた。
「早く行こうよ」
声も息遣いも、俺そのものだった。

悠人は顔を真っ青にして俺を突き飛ばし、後ろの“俺”に近づいていった。
「お前が……本物か?」
悠人も、何が何だか分からず、混乱している。あいつが差し出した手を“俺”が握った瞬間、ぱちん、と蛍光灯が切れた。

闇の中で、悠人の叫び声だけが響いた。

 数秒の間、俺は体が動かなかった。やっとの思いでライトをつけたときには、友達の姿は消えていた。廊下には俺と、“笑っている俺”だけが残っていた。

 

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

意味が分かると怖い話【短編集】

本田 壱好
ホラー
意味が分かると怖い話。 つまり、意味がわからなければ怖くない。 解釈は読者に委ねられる。 あなたはこの短編集をどのように読みますか?

責任分界点

叫骨【Kyoukotu】
ホラー
『新入社員へのアドバイス 三階会議室は使用禁止です。』 私のツイートからのショートショート作品です。

意味がわかると怖い話

井見虎和
ホラー
意味がわかると怖い話 答えは下の方にあります。 あくまで私が考えた答えで、別の考え方があれば感想でどうぞ。

女子切腹同好会

しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。 はたして、彼女の行き着く先は・・・。 この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。 また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。 マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。 世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

(ほぼ)5分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ5分で読める怖い話。 フィクションから実話まで。

1分で読める怖い話短編集

しょくぱん
ホラー
一分で読める怖い話を定期的に投稿しています。 感想などをいただけると嬉しいです。 応援よろしくお願いします。

処理中です...