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夜の学校
しおりを挟む夜の学校
文化祭の準備で遅くなり、友達の悠人と二人で教室を出た。
校舎はすでに真っ暗で、人気もない。蛍光灯のちらつく廊下を歩きながら、悠人が言った。
「なあ、夜の学校ってさ……変な話、多いよな」
俺は苦笑した。よくある肝試しのネタだと思った。
「例の、3階の廊下にある鏡の話?誰も本気にしてねえよ」
「でもさ、昨日ここに残ってた先輩が、その廊下で“もう一人の自分”を見たって」
冗談のつもりで笑おうとしたが、なぜか声がうまく出なかった。その時、後ろから俺たち以外の足音が確かに聞こえた。
「……誰か残ってる?」
振り向くと、誰もいない。だが足音は俺たちのすぐ後ろからついてくるように響く。
「やばいな」悠人が小声でつぶやいた。俺らは早足になった。
三階の鏡がある場所に差しかかったとき、前方に人影の後ろ姿が見えた。なんだかもやがかかったかのように少し見辛かったが、制服姿で、背格好は……俺とほとんど同じ。
「おい……お前、あれ」
悠人が震える声で言った。人影は、ゆっくりこちらを振り返った。
廊下の薄暗がりの中、顔が朧げながら見える。目を凝らすと、間違いなく、俺だった。
ただし表情は、笑っている。口角を大きく吊り上げ、目だけが冷たく光っていた。
思わず後ずさると、隣の悠人が俺の肩を掴んだ。
「……どういうことだよ」
「わ、分かんねえ……」
だが次の瞬間、悠人が俺を睨んだ。
「本物は……どっちなんだ?」
「は?」
「さっきから、お前の声が後ろからも聞こえてたんだよ」
足がすくんだ。振り返ると、廊下の後方にもう一人の「俺」が立っていた。
後ろに「俺」がいて、前にもきっと「俺」がいる。
後ろの“俺”がに口を開いた。
「早く行こうよ」
声も息遣いも、俺そのものだった。
悠人は顔を真っ青にして俺を突き飛ばし、後ろの“俺”に近づいていった。
「お前が……本物か?」
悠人も、何が何だか分からず、混乱している。あいつが差し出した手を“俺”が握った瞬間、ぱちん、と蛍光灯が切れた。
闇の中で、悠人の叫び声だけが響いた。
数秒の間、俺は体が動かなかった。やっとの思いでライトをつけたときには、友達の姿は消えていた。廊下には俺と、“笑っている俺”だけが残っていた。
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