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前世の話 唯と蓮華編
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寒い、寒い、さむい。
恐らくもう何年も掃除されていない石段にうずくまりながら、ぼうっとする頭で考える。それもそうだ。今は十一月の下旬。それにも関わらず、今着ている物は薄いボロボロになったこのワンピース。其れも夏物だ。
(……そろそろ、死ぬかもな…)
他から見れば、一人の痩せ細った少女が真冬の中、ボロボロのワンピースを着ていながら、誰も助けないと言う異常な光景だが、此処では日常の一ページだ。
此処は紛争地帯の近くにある貧民窟。早くに父や母をなくし、天涯孤独の子供や、貧しい人間が沢山住んでいる。
紛争や殺し合いなど、日常茶飯事。
殺し、奪い、殴らないと、死ぬのは自分だ。
弱い人間は直ぐに死ぬ。強くならねば、生きていけない。
その弱い者の中でも、一番最初に死ぬのは、やはり子供や老人だ。大人の女なら身を売れば生きていけるし、男ならば働きに出たりすれば良い。だが子供や老人にはそれは出来ない。せいぜいゴミ箱からどうにか食べられそうな物を探し出して生きていくしかないのだ。
(生きていても楽しい事なんてないから、良いんだけどね…)
8つの時に両親が亡くなってから、ずっとここで生きて来た。
楽しい事など、一つも無かった。
殺し合いが終わった後の死体から食べ物を探したり、それこそ泥水を啜ったり。
そうやって生きていくしか、無かった。
だから、別に死ぬのは怖くない。寧ろこの世界から解放されて嬉しいくらいだ。
(でも、どうせなら、)
誰かこの冷え切った手を握り締めて欲しい。
一瞬でも、良いから。
そこで意識は、途絶えた。
(………あたたかい…?)
手から伝わる、あたたかい温度。
あたたかくて、やわらかいその温度は、まだ幸せだった頃に、よく握ってくれた母さんの手の温度に、とても似ている。
これは、誰の手だ?
私は、死んだ筈じゃ?
恐る恐る目をあけると目に飛び込んで来たのはいつも見ている貧民窟には似つかわしく無い晴天ではなく、真っ白な天井だった。そのまま少し身体を起こし、辺りを見回す。すると何故か私の右手を握り締めながら寝ている一人の少女が居る。さっきから手に伝わって来るぬくもりは、きっと彼女が原因だろう。
(にしても、此処、何処……)
見渡す限りは清潔感のある小さな医務室、と言ったところだろうか。
彼女を起こして聞けば良いかもしれないが、あまりにすやすや眠っていて起こすのも悪い気がする。そもそもこの子は何で見知らぬ人間の手を握り締めながら寝ているのだろうか。謎だ。
そんな事を考えていると、ガチャッと、ドアが開く。
其処から入って来たのは一人の中年の男性。
四十代後半と言ったところだろう。
顔はかなり整っていて、若い頃はさぞかしモテていたのだろうなと簡単に予想が付く。
だがこの状況、かなり危ないのでは?
「お、起きたか、お嬢さん。」
「キャー!!誰か助けて!!!!この人に犯される!!!!」
「ビクッ、え!?」
「そんな事しないよ!!!!????」
これが後に、私の義父となる月雪響一朗と、
後に相棒となり、最強コンビとして裏社会に名を轟かせる事になる、日向唯と出会いだった。
恐らくもう何年も掃除されていない石段にうずくまりながら、ぼうっとする頭で考える。それもそうだ。今は十一月の下旬。それにも関わらず、今着ている物は薄いボロボロになったこのワンピース。其れも夏物だ。
(……そろそろ、死ぬかもな…)
他から見れば、一人の痩せ細った少女が真冬の中、ボロボロのワンピースを着ていながら、誰も助けないと言う異常な光景だが、此処では日常の一ページだ。
此処は紛争地帯の近くにある貧民窟。早くに父や母をなくし、天涯孤独の子供や、貧しい人間が沢山住んでいる。
紛争や殺し合いなど、日常茶飯事。
殺し、奪い、殴らないと、死ぬのは自分だ。
弱い人間は直ぐに死ぬ。強くならねば、生きていけない。
その弱い者の中でも、一番最初に死ぬのは、やはり子供や老人だ。大人の女なら身を売れば生きていけるし、男ならば働きに出たりすれば良い。だが子供や老人にはそれは出来ない。せいぜいゴミ箱からどうにか食べられそうな物を探し出して生きていくしかないのだ。
(生きていても楽しい事なんてないから、良いんだけどね…)
8つの時に両親が亡くなってから、ずっとここで生きて来た。
楽しい事など、一つも無かった。
殺し合いが終わった後の死体から食べ物を探したり、それこそ泥水を啜ったり。
そうやって生きていくしか、無かった。
だから、別に死ぬのは怖くない。寧ろこの世界から解放されて嬉しいくらいだ。
(でも、どうせなら、)
誰かこの冷え切った手を握り締めて欲しい。
一瞬でも、良いから。
そこで意識は、途絶えた。
(………あたたかい…?)
手から伝わる、あたたかい温度。
あたたかくて、やわらかいその温度は、まだ幸せだった頃に、よく握ってくれた母さんの手の温度に、とても似ている。
これは、誰の手だ?
私は、死んだ筈じゃ?
恐る恐る目をあけると目に飛び込んで来たのはいつも見ている貧民窟には似つかわしく無い晴天ではなく、真っ白な天井だった。そのまま少し身体を起こし、辺りを見回す。すると何故か私の右手を握り締めながら寝ている一人の少女が居る。さっきから手に伝わって来るぬくもりは、きっと彼女が原因だろう。
(にしても、此処、何処……)
見渡す限りは清潔感のある小さな医務室、と言ったところだろうか。
彼女を起こして聞けば良いかもしれないが、あまりにすやすや眠っていて起こすのも悪い気がする。そもそもこの子は何で見知らぬ人間の手を握り締めながら寝ているのだろうか。謎だ。
そんな事を考えていると、ガチャッと、ドアが開く。
其処から入って来たのは一人の中年の男性。
四十代後半と言ったところだろう。
顔はかなり整っていて、若い頃はさぞかしモテていたのだろうなと簡単に予想が付く。
だがこの状況、かなり危ないのでは?
「お、起きたか、お嬢さん。」
「キャー!!誰か助けて!!!!この人に犯される!!!!」
「ビクッ、え!?」
「そんな事しないよ!!!!????」
これが後に、私の義父となる月雪響一朗と、
後に相棒となり、最強コンビとして裏社会に名を轟かせる事になる、日向唯と出会いだった。
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