スイート・スパイシースイート

すずひも屋 小説:恋川春撒 その他:せつ

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lose sparkling 1-4

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「凶神・・・」
転がされた先で高岡が呟いた。
まさか現役の刑事が、後ろから関節固めようとして投げ飛ばされるなんて思いもしていなかったんだろう、ぶん投げられた高岡が床に座り込んで呆然としている。
コバは腰を抜かして壁に張り付いて、ぺったりと床に座り込んでいた。
俺は、ただ琢美の父親を殴り続けてた。
憎いとか、許せないとか、正義の鉄槌とか、そんな、少年漫画でありがちな題目みたいな整然とした思いなんか何一つなかった。
そんなやわな言葉なんて、いっそ蒸発して消えてしまう程の灼熱だけが、俺を突き動かしていた。
思っていた事は唯一つ、

「コレだけは壊さなければ」

これがきっと、殺意だ。

振り上げた拳を、渾身の力を込めて、振り下ろそうとした瞬間に
「だめぇぇぇぇ!」
俺の体は止まった。
止められた。
俺を止めたのは、琢美だった。
「ゆうちゃん、それ以上はダメ、その人死んじゃいます!」
構わず振り下ろそうとした拳は、ビクともしなくなった。
俺の背中に琢美が張り付いていた。
「その人死んだら優ちゃん捕まっちゃうよ!もう離れ離れは嫌です!絶対に!」
「琢美、コイツだけは俺死んで良いと思うんだよ」
悔しくて涙が出た。
「裕ちゃんがやらなくていい、それは、裕ちゃんのやる事じゃない、お願いだから。お願いだから裕ちゃんが殺しなんてしないで!」
いつだって、琢美には敵わない。
振り上げていた腕の力を抜いたとたん、その腕ごと抱き込まれた。
すかさず高岡刑事が琢美の父親を俺の下から引き摺り出していった。
引きずられてゆく琢美の父親の右端が、ニヤリとつり上がったのが見えた。
冷えかけた俺の頭にまたもや血が上る。
「コイツ、コイツがっあの時、血が」
まさかコイツが、実の子供を!畜生っ畜生!畜生!畜生!。
怒りで我を忘れて再び暴れそうになった俺を、琢美が必死にしがみ付いて止めた。
「されてない!あの時って、あの私を抱きかかえて産婦人科に連れてってくれた日の事でしょう?!大丈夫だったから、ちゃんと逃げた!逃げれた。私、あの時もそう言ったでしょう?、」
ーー嘘だ、と思った。
・・・そんなうまい話しがあるもんか。
だってそうだろ?俺達の人生はいつだって、いざというとき助けなんか来なかったじゃないか。
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