壊れた玩具と伝説の狼

脱出１－２

逃げられない様にダイアスが鍵をかけて出かけるので自由は無いが、ダイアスの部下に悪戯される心配も無い、安心してシャワーを浴びたり睡眠をとる事が出来た。
いっそひと思いに殺してくれたら良いのにと、何度も思った。
態とダイアスの機嫌を損ねる事をして、ダイアスに自分を殺させる事も考えたが、ダイアスがセイラを殺すなら、なぶり殺しだろうという事は分かり切っている。死ぬことより拷問が怖かった。
何度も自殺も考えたけれど、どうしても自殺に踏み切る事が出来なかった。
「一体、僕の今の生の何処に、自殺を躊躇う価値が有るのさ」
セイラの呟きに答えをくれる物は無かった。
物音ひとつしない墓の中の様な無音の部屋の中で、セイラの心臓だけが微かに音を立てていた。

チャンスが来たのは、初夏の、ダイアスがいつもの通りセイラを閉じ込めて出かけた日の事だった。
馬車が帰って来たかと思うと、ダイアスがエントランスの扉を開いたとたん、一人の男性が中から飛び出して走り去って行った。
「ガザ！」
走り去る男をダイアスはそう怒鳴りつけると、片手を振り上げ、それを見たいつもダイアスの周辺を警護している屈強な男達が男が走り去った方に向かって駆けて行った。
ダイアスは一回、馬車の車輪を思い切りけ飛ばしていた。
これは、今夜は手ひどく抱かれるなと予想して覚悟してセイラはその時を待ったが、予想に反してその夜セイラの所にダイアスは一回も来なかった。
セイラが監禁されて初めての事だった。