壊れた玩具と伝説の狼

すずひも屋 小説:恋川春撒 その他:せつ

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伝説の狼1-10

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たまに人間の男にいるが、この狼も『可愛い』は禁句扱いの男なんだろうか?
(ある意味最高の誉め言葉なのに)
今はもう、アヤの機嫌が直る事は無いだろうと思って溜息をついて、良い感じに眠気が出て来たのでセイラもアヤに習って目蓋を閉じた。
「可愛いは好きか?」
うつらうつらして来た所でアヤが話しかけて来た。
「えぁ?」
もう夢の扉を潜って深い眠りに着く寸前だったセイラは、寝ぼけ眼の良く回らない口で何とか返事を返した。
「セイラにとって可愛いとは何だ?どういう時に使うんだ?」
(何だその哲学的な問いかけは?)
眠りかけで頭の回転が最低レベルになった時に、難しい問答と持ち掛けられても上手く答える事なんて出来ない。
「なに?その難しい質問、可愛いは可愛いだよ」
「可愛いとはどんな時に使うんだ?」
「いろいろ」
「・・・今回の可愛いは何だ」
狼はなぜがセイラの『かわいい』発言に妙に拘った。
「なにって」
そんなに深く考えず言った事を深く突かれて言い淀むセイラに、アヤは更に食い下がって問いかけた。
「その可愛いは、キス出来るのか?」
(キス?)
セイラの寝ぼけた頭が困惑する。この狼はセイラとキスしたいのだろうか?
「どうなんだ?キスしたいのか、キスしたい『可愛い』なのか?」
(何か声が近いな)
セイラが薄目を開けて声の方を見ると、狼は、いつの間にかセイラの耳元に顔を寄せてかなり真剣な表情をして話しかけていた。
その様子は、やはり可愛いと思えた。
「どうなんだ?」
(キスねぇ・・)
セイラは昨晩起きた事を思い返した。
(したなぁ、一晩の内に、数えきれない位)
キスどころか裸に剥かれて体中舐めまわされた。
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