壊れた玩具と伝説の狼

すずひも屋 小説:恋川春撒 その他:せつ

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呪い1-1

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次の日、セイラが目が覚めると、アヤの熱烈なキスで覚醒させられた。
『アヤ』と名前を呼ぶ前に、狼の大きな舌がセイラの口に突っ込まれた。
(ねおき!)
セイラの抗議の口回りを叩くパッティングも無視してアヤはセイラの口内を舐めまわした。
歯の並びを確かめる様に舌を這わせ、上顎を執拗にスリスリと愛撫した。
(これ寝起きのキスじゃない!そりゃ昨晩キスしても良いとは言ったけれどもっ)
熊よりも大きな狼にとって、セイラの抗議のパッティングなんて虫に刺されるよりも痛みを感じないらしく、完全にお構いなしで濃厚なキスは続けられた。
気が澄んだ狼が口を離した時には、セイラは頬を真っ赤に染めて息も絶え絶えの状態になっていた。
ご機嫌なアヤが言った。
「起きたな。おはよう」
「おは、ようじゃ、ないよ」
息も整わないままにセイラは返事した。
「息、止まるかと思った」
「それは困るな」
セイラの抗議をアヤは何故か嬉しそうに聞いていた。
「腹が減っているだろう、昨日と同じ糊粥だ。匙は持てそうか?」
狼はセイラをベッドから出そうともせず、ベッドの上に糊粥の入った鍋をおいた。
「うん」
匙は簡単に持てた。
セイラは鍋から粥を救って五、六口食べた所で全部もどした。
粥を吐いただけでは吐き気は収まらず、胃液が出るまで嘔吐は続いた。
辛うじてベッドの外に吐きはしたものの、床は汚してしまった。
健康な時ならば洗浄魔法で消せるが、今のセイラではとうてい魔法なんて使えなかった。
ごめっ御免、住処汚した・・・」
「いや、問題無い、こんなもの直ぐにきれいに出来る。どこか痛いのか、気持ち悪い所とか無いか?」
「痛い所は無い」
痛みを感じる所は無い、アヤが舐めて治してくれた。
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