58 / 223
呪い1-13
しおりを挟む
だって僕メチャクチャ頑張ったんだよ。一人で学んで、一人で傷を癒して、犯罪者にもならず一応ちゃんとした大人になったんだ。
ただ、幸せになりたかった。
父親や母親みたいになりたくなかった。
それだけだった。
あいつらに出来なかった幸せな家庭を築いて証明したかった。
死神と悪魔の間に生まれ育ったって、ちゃんとまともになれるんだって。
何度も転んで、失敗して、ボロボロになったって諦めなかった。
別に誰かを見下したかった訳じゃない。
強いて言うなら世界を見返してやりたかった。
僕をあんな悪魔たちの元に誕生させた世界を見返してやりたかった。
誰にも大切にされなかった子供だって、悪魔の子供だって幸せな家庭を築けるんだって証明してやりたかった。
正解の分からない僕は、間違って傷ついたら一人で泣いて、自分で傷を舐めて癒して、そして又転ぶのを覚悟で自分の正解を求めて挑むしかなかった。
笑えるだろ、それがこのザマさ」
セイラは一気に話し終えるとゆらりとやせこけた両手を上げて見せた。
「ちょっとした判断間違えで、親より酷い悪魔に捕まった」
アヤがクィンと叱られた犬みたいな声で鳴いた。
余りに可愛い鳴き声だったので、セイラは思わずアヤを見つめてほほ笑んだ。
そしてもう一回、自分の骨と皮ばかりになった、とても二十八歳とは思えない傷跡とシミだらけの自分の両手を見つめて言った。
「きっともう元には戻らないね」
「セイラ」
「やめておけば良かった。さっさと諦めて一人で生きてく心を決めればきっとこんなにボロボロにまではならずに済んだのに。ごめんね、せっかく探し当てた僕がこんなにお粗末な体になっちゃってて、食べるにしても筋皮しかないし、性処理にするにしたって脆くて突っ込めないんじゃがっかりだろう?」
そう言ってパサリと両手を下ろして自嘲気味に笑った。
ただ、幸せになりたかった。
父親や母親みたいになりたくなかった。
それだけだった。
あいつらに出来なかった幸せな家庭を築いて証明したかった。
死神と悪魔の間に生まれ育ったって、ちゃんとまともになれるんだって。
何度も転んで、失敗して、ボロボロになったって諦めなかった。
別に誰かを見下したかった訳じゃない。
強いて言うなら世界を見返してやりたかった。
僕をあんな悪魔たちの元に誕生させた世界を見返してやりたかった。
誰にも大切にされなかった子供だって、悪魔の子供だって幸せな家庭を築けるんだって証明してやりたかった。
正解の分からない僕は、間違って傷ついたら一人で泣いて、自分で傷を舐めて癒して、そして又転ぶのを覚悟で自分の正解を求めて挑むしかなかった。
笑えるだろ、それがこのザマさ」
セイラは一気に話し終えるとゆらりとやせこけた両手を上げて見せた。
「ちょっとした判断間違えで、親より酷い悪魔に捕まった」
アヤがクィンと叱られた犬みたいな声で鳴いた。
余りに可愛い鳴き声だったので、セイラは思わずアヤを見つめてほほ笑んだ。
そしてもう一回、自分の骨と皮ばかりになった、とても二十八歳とは思えない傷跡とシミだらけの自分の両手を見つめて言った。
「きっともう元には戻らないね」
「セイラ」
「やめておけば良かった。さっさと諦めて一人で生きてく心を決めればきっとこんなにボロボロにまではならずに済んだのに。ごめんね、せっかく探し当てた僕がこんなにお粗末な体になっちゃってて、食べるにしても筋皮しかないし、性処理にするにしたって脆くて突っ込めないんじゃがっかりだろう?」
そう言ってパサリと両手を下ろして自嘲気味に笑った。
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開
【完結】 男達の性宴
蔵屋
BL
僕が通う高校の学校医望月先生に
今夜8時に来るよう、青山のホテルに
誘われた。
ホテルに来れば会場に案内すると
言われ、会場案内図を渡された。
高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を
早くも社会人扱いする両親。
僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、
東京へ飛ばして行った。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる