壊れた玩具と伝説の狼

すずひも屋 小説:恋川春撒 その他:せつ

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呪い1ー17

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またも一人、アヤが夢路への道からおいてけぼりを食らって残された。
大きな狼アヤは二晩目の大きなため息を一ついて、今夜はセイラのおでこを舐めた。
「いかん、これは深刻だ。本当にキレイサッパリ俺の事をわすれとるな」
いらん事だけ覚えているくせに、辛い記憶で二人の大事な思いでを塗りつぶされてしまったのだろうかと本気で悩んだ。
昨晩調べた時脳に傷は無かった筈だが、と思いつつも、心配になってアヤはセイラが熟睡しているついでにおでこを念入りにベロベロ舐めた。
気が済むまで舐めた所で、自分も丸くなって眠る事にした。
「まったく、人間とは頭の良い動物なのではないか?!」
ブツブツと独り言を言いながら、明日の糊粥はどの位が丁度良いだろうかと思いを馳せながら目をつむった。

その頃セイラは夢を見ていた。
十五の時の最後に山に行った時の夢だった。
春だった。
雪も無くなって、大分暖かくなって、六年前に住んでいた町で勤める為に家を出ていく、町で過ごす最後の夜の事、数少ない友人達が送別会を開いてくれた。
強かに酔っぱらったセイラはフラりと飲み会の残りの酒の瓶といくつかの摘まみを持って山を訪れた。
だれかと飲んだ夜はいつも一人で飲み直したくなる。セイラはそんな癖があった。
いい気分だった。鼻唄混じりに歩く山の小道、腰丈位の所でクリーム色のススキが揺れていた。
(・・・・あれ?何で春なのにススキが揺れてるんだろう?)
夢の中でふとセイラは疑問に思ったが、『まぁ良いか』と思い直して本当に眠りについた。
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