壊れた玩具と伝説の狼

すずひも屋 小説:恋川春撒 その他:せつ

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人食い湖の住人2-4

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セイラはこの山に、温泉が有るなんて聞いた事が無なかった。
そりゃぁ、山頂は伝説の狼の住処と言われていたから、滅多に地元の住人達は行かなかったが、それにしても噂にも聞いた事が無かった。
「温泉、あるの?!この山」
「あぁ、そうそう、それそれ。人間たちが温泉とか言ってるものがある。頂上に住んでいる人間達がよく使っている」
温泉の話に意識を覚醒したセイラに、アヤは更にさらっととんでもない情報を言った。
「・・・ん?」
「ん?」
「この山人が住んでるの!?」
「山頂にな、正しくは山にすんでいるというか、湖にすんでいるんだがな結構いるぞ」
セイラの問いかけに、『お前を閉じ込めていた人間達だって山の住人だぞ』と、いう言葉を、アヤは態と言わなかった。
正気のセイラが珍しくダイアス達を思考の中から追い出している。つまり意に介していない、これは相当喜ぶべき事だ。
(俺が思ったよりも、セイラは回復しているのかも知れねぇ)
そう、内心喜びながらも、この慶事を長引かせたくて態と思わせぶりな説明をした。
「は?湖に住んでいる?何それ、分からない。船の上にでも住んでいるの?」
案の定、セイラはアヤの思惑通り、アヤの話に食いついて来た。
「ふふふふ、温泉とやらに入るかどうかはともかくとして一度行ってみるか」
温泉には行ってみたい、しかし
(人と合う・・・)
何故だか酷く嫌だった。
(どうしよう・・・)
悩んでいてふと気がついた。
ひょっとして、いつも食べてる食事はその湖の住人達が作ってくれているのではないだろうか。
「あの、いつも僕が食べてるご飯ってひょっとして・・・」
「あぁ、そこの住人が作っている」
(お礼を言った方が良いだろうか?)
そう思った。


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