壊れた玩具と伝説の狼

すずひも屋 小説:恋川春撒 その他:せつ

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人食い湖の住人2ー5

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「頂上に住んでいる人達とは、僕でもお話出来る?」
「何だ?ナンパか?」
「何でそうなるんだよ」
セイラが湖の住人と話したいと言い出すと、何故かアヤは急に不機嫌になった。
「人間社会では何か貰ったらお礼を言うのが当たり前なんだよ」
「必要ない、礼なら俺が湖の主に言っているし対価も払っている。別に貰っているわけじゃ無い」
アヤはくるりとセイラを巻き込んで寝返りを打ち、セイラに覆いかぶさった。
(湖の主?)
セイラが『湖の主とは何だ?』とアヤに問いかける前に、アヤが言葉を続けた。
「狼の常識では、求愛中に他の雄に目を向けるなんて言語道断だ!俺達は今やっとお互いの気持ちが同じになった所なんだぞ!」
アヤはプリプリとむくれながら言った。
(お礼を言うのもダメなのか)
「なんとも思って無い相手と話すのもダメなの?」
「ダ、ダメだ!」
繰り返し聞いたセイラに、少し視線を逸らしたアヤがやはり他の者と話すのはダメだと言った。
すこし怯んだのは、それがアヤにとってだけダメな事だからだろう。独占欲だ。
セイラの頬がすこし緩んだ。
(まぁ・・・アヤにしてみれば十数年かかってやっと落とした相手って事になるものなぁ・・・)
セイラにとってはアヤはつい最近出会ったばかりだが、アヤにしてみれば長年探しあぐねてやっと見つけた番いなのだ。
それはアヤの勘違いなのだけれど、アヤがそう思っている限りアヤの心配性は続くのだろう。
(あれ?じゃぁ何で態々人の居る所に連れて行こうとしてるんだろう?僕、試されてるのかな?それに)
話すのすらダメならば、今のセイラの全裸は問題無いのだろうか?

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