壊れた玩具と伝説の狼

すずひも屋 小説:恋川春撒 その他:せつ

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人食い湖の住人2ー17

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アヤがフンと鼻をならして投げやりに言った。
「その、人間を体内で大量に飼っておいて、それを恋人と言い切る思想が分からん。まるで恋愛感情が有る様には思えん」
海月がふふふと笑う
「元スライムに倫理観を求めないでよ。所詮は私は合成魔獣なんだから。
食べ物は見れば美味しそうだと思うし、好ましいと思うし、私はスライムだから殺さないしね。
慕われれば獣人の部分が可愛いと思うのさ」
さらりと凄い事を言った。
セイラの体からぞっと血の気が引いた。
(合成魔獣って、禁忌の魔法じゃないか)
この世界には、いくつも魔法を行使する為の魔術を開発している機関が有る。
大抵は国や貴族、豪商等の大口のパトロンを抱えて、自分達の研究を行う為にパトロンのリクエストを叶えて研究資金を調達している。
とはいえ、魔術を研究すると一口に言っても、一応制約が無いワケではない。
世界的な決まり事が幾つかあるのだ。
その中でも最も人々に忌避されている魔法の一つが人を使った合成だった。
人とは、種族を越えた社会構築能力を持つ生き物の事を指し、人間、獣人、精霊族、魔人等の事を指す。
これらの人を魔術で人為的に無理やり混ぜ、一つの生命体を作成する事を生体合成と言い、世界的に厳しく規制されている。
先ほど海月は自分の事を『スライム』と言い、さらに『獣人の部分』と言い表した。
つまり、
(少なくとも海月は何かの獣人とスライムの合成魔獣なんだ・・・)
思わず微かに後退りしたセイラを見て、海月がやはり、薄い唇で優しそうに笑った。
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