壊れた玩具と伝説の狼

すずひも屋 小説:恋川春撒 その他:せつ

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人食い湖の住人3-6

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「僕、あの人見た事ある」
セイラが彼を見たのは、セイラがダイヤスの幻影に騙されて、屋敷を脱出しようとして失敗し、『皆のおもちゃ』に下ろされた日の前日。
 一人屋敷から脱走した男、それが今、セイラの目の前で海月の触手に可愛がられて喜んでいる男とそっくりだった。
名前は確か、
「ガザ!ダイヤスの屋敷から逃げ出した人だ」
セイラがそう言ったとたん、今まで嬉しそうに海月の触手に愛撫されて喜んでいた男が、カッと目を見開き、
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!」
と叫び声をあげて痙攣し始めた。
「いやぁぁぁっ。ちがうぅう!いやぁぁ!違う!ごめんなさいっ!もう逃げない。もう逃げないからっ。イヤぁぁ!ごめんなさいぃぃっ。ぎゃぁぁ」
海月が慌てて抱きしめたが、ガザのパニックは終わらなかった。
「このこ、ガザって言う名前なの!?」
海月がセイラに問いかけた。
「は、はい。多分、ダイヤスがそう言ってたから」
(名前も言えない位壊されていたのか)
そう思いながらセイラは答えたが、セイラがダイヤスと言った途端、ガザのパニックは更に悪化した。
「いやぁぁ!許してっ。ダイヤスー!もうしない!ごめんなさい、ガザがっガザが我儘でした。ダイヤスっ。来ないで!お願いしますっ。いやあぁぁぁっいやぁあ。あぁぁぁああっ!」
一体何をされたのか、『ダイヤス』という名前に反応してガザは暴れ、怯え、痙攣を繰り返して叫び続けた。
「ガザ!ここにソイツは居ない!居るのは『海月』だよ。大丈夫だから、暴れないで」
海月が、必死にガザを抱きしめて宥めた。
  暴れるガザが、海月の肩に思い切り噛みついたけれど、海月はガザを離さなかった。
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