壊れた玩具と伝説の狼

すずひも屋 小説:恋川春撒 その他:せつ

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人食い湖の住人3-8

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「くすぐったいよ。あっ」
短くて柔らかい髭が一本耳に入って中をくすぐった。
セイラが思わず可愛い声を上げると。
アヤが、フンッっと大きく一つ、息を吐き出した。
セイラが、アヤの鼻を引き寄せて唇にキスをすると、アヤの大きな舌がセイラの口内にズルリと入り込み、上顎を擦り上げた。
どちらの物なのか分からない唾がセイラの口内を満たし、セイラはそれを躊躇無く飲み込んだ。
「ぁ、アヤ」
キスをしている内にセイラの中に今までにない感覚が生まれた。
お腹が空いている様な、切ない様な、何かが足りてない様な、小指がチリチリと感電している様な・・・。
静かな、だけれど、確かな渇望。
セイラは、目の前の、この熊より大きな不思議な狼と、抱き合って、キスをして、舐め合って恋人以上の人としかしないエッチな事を沢山したい。
他のどんなものも代わりにならない、今のセイラが抱き合いたいのは、キスをしたいのは、紛れもなくこのアヤという名の狼だけだ。
(これは恋だ)
今さらだけれどはっきりとそう思った。
「アヤ、ァャ。えっちしたい」
セイラは甘えた声でアヤの首に両腕を巻き付けた。
歩いて体が温まり、薬も大分セイラの中で回り始めている。最早慣れてしまった人工的な快楽への欲求が、セイラの思考を支配し始めていた。
「そうだな、えっちしたいな。たくさんしよう」
アヤは、上機嫌でもう一度セイラにキスをした。

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