壊れた玩具と伝説の狼

すずひも屋 小説:恋川春撒 その他:せつ

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春のススキと白い息1-3

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太い首と大きな口から放たれる、低くて甘いアヤの声。
セイラが呼ばれた方を見れば、最早見慣れた大きな大きな狼の顔。
大好きな、狼の顔。アヤの顔。
「俺が見えているか?」
心配そうにのぞき込んで来た。
(僕の頭の中記憶、全部アヤで埋まれば良いのに)
心配そうにのぞき込んで来たアヤを、うっとりと見つめながら、心からそう思った。
悲壮感でいっぱいの心中とは裏腹に、強かに薬に酔った体はどんどん興奮していく。
「うん、ちゃんと見えてる」
そう言いながら、無意識の内に両足を開いた。
アヤも見えているが、悪夢も見えている。
(こわい、気を抜いたら悪夢に飲まれそう)
何かあの時に無くて、今にしか無い、これが現実なんだと思える確かな物が欲しいと思った。
「ねぇ、アヤ」
「うん?」
「あの輪っか。ずっとつけてられないかな」
「輪っか?」
突然の質問に首を傾げるアヤに、セイラはソロソロと服の前を持ち上げて、自分の勃起した性器を見せた。
「あぁ!性器の根本縛るやつか、そんなに気に入ったのか?」
「つ、着けてると、ちょっと安心っていうか、今はダイヤスの屋敷じゃないって分かるっていうか。あれ、やったのアヤが初めてだから。アヤは本当なんだって思えて、悪夢を振り払えるから」
「・・・そうか」
言うやいなうや、セイラの性器の根元に蔦がシュルリと巻き付いた。
「言っておくが、これを着けていると、お前の行動殆ど丸わかりだぞ?」
「うん。良い、今更何も恥ずかしがる事無いし」
アヤの念押し説明に、セイラは即答した。
「浮気してもバレるからな」
「何で僕が今更アヤ以外と何かしたいと思うのさ」
これだけ毎日一緒にいるのに、浮気の心配までしてくるアヤに、セイラは本気でちょっと笑った。
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