壊れた玩具と伝説の狼

すずひも屋 小説:恋川春撒 その他:せつ

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春のススキと白い息1ー6

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幸せだった。
こんなに大事に愛された事なんて生まれて初めてだった。
セックスするのがこんなに嬉しい事だなんて初めて知った。
あまりにも幸せで、
(今死ねたらどんなに最高に幸せな気持ちのまま死ねるだろうな)
つい、そう思った。
思わずセイラはアヤにせがんでしまった。
「あや。好き。好きだよ。ねえ、食べて。このまま僕を食べてよぉっ」
セイラがそうせがんだとたん、アヤの舌の動きが止まった。
「・・・何で」
セイラの聞いたことの無い恐ろしい声だった。
(アヤ怒ってる)
何でか涙がボロボロと零れた。
アヤの舌がセイラの中からズルリと抜けた。
からだの中に収まっていた熱がなくなると、セイラの体は震えだした。
「また悪夢に捕まったのか?」
「違う」
「ならば何故?」
セイラは泣き出してしまって、上手く答えられなかった。
ただ泣くセイラの涙を舐めて拭いながら、アヤは根気よくセイラが自分の言葉で説明するのを待った。
「し、幸せで」
「うん」
脈絡泣く始まったセイラの言い訳に、アヤは優しく相づちを打った。
「僕、今、今まで生きてきた中で一番幸せで」
「そうか」
「特にこの六年間は、死ぬより辛かったから、今でもこれが夢なんじゃって思う位で」
「夢じゃないぞ」
「それ位幸せで、それで、この先アヤを失くす位なら、今死んだら、幸せなまま死ねるなって思って」
『今一番幸せだから死にたい』セイラがそう言ったとたん、アヤは呆気にとられて間抜けな声をあげた。
「は?」
「アヤとセックスしてる時、僕一番幸せで、暖かくて、愛されてるって自覚できて、こんな気持ちのまま死ねたらどんなに良いだろうって・・・」
セイラの理屈に、最後アヤはぽかんとした顔のまま立ち尽くして聞いていた。
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