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春のススキと白い息1ー8
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六年という歳月をかけて、刻まれた凄惨な記憶は余りにも鮮烈で、強く刻みこまれ。
「こんな記憶、消える分けない。
幻覚に襲われなくなっても、記憶が消える訳じゃないんだ。
いつも頭の中の何処かに有るんだ。僕はレイプされたんだ。嘲笑われながらレイプされたんだ。殴られながら犯されたんだ。
おしっこ飲まされて挙げ句『美味しいです、有り難うございます』なんて言った。
殴られるのが怖くて、自分から言った。
起きてしまった事実は消えない。
無かった事にはならないんだよ」
セイラは自分の頭に手をやり、髪の毛をむしり取らんばかりに強く握りしめた。
「セイラ、自分を痛みつけるものじゃない」
強く握りし過ぎたせいで、手のひらに爪が食い込んで、血がにじんでいた。
アヤは慌てて諭したが、セイラは泣き顔のまま苦く笑った。
「体が痛いと、少しだけ心の痛みが分からなくなるんだ」
強く握りこまれた髪の毛が、数本、微かな音を発てて千切れた。
「あの頃、僕はいつもダイヤスを殺す方法を考えていた。
でも同時に、確実に一瞬で死ねる方法も考えていたんだ」
どちらも方法が見つからなかった。
何度も殺してほしいと、自分を犯しに来る者達に頼んだが、皆、口を揃えた様に『ダイヤス様に怒られるから無理だ』と言っていた。
首輪に繋がる長い鎖はあっても、それを引っ掛けて首を吊れる所が無かった。
この六年間、特に最後の二年間、死はセイラにとって、唯一の救いだった。
いよいよ己の死を目前に迎えた時の、あの歓喜は、絶頂にも勝っていた。
この六年間で、死はセイラにとってとても良い物に変わってしまった。
「こんな記憶、消える分けない。
幻覚に襲われなくなっても、記憶が消える訳じゃないんだ。
いつも頭の中の何処かに有るんだ。僕はレイプされたんだ。嘲笑われながらレイプされたんだ。殴られながら犯されたんだ。
おしっこ飲まされて挙げ句『美味しいです、有り難うございます』なんて言った。
殴られるのが怖くて、自分から言った。
起きてしまった事実は消えない。
無かった事にはならないんだよ」
セイラは自分の頭に手をやり、髪の毛をむしり取らんばかりに強く握りしめた。
「セイラ、自分を痛みつけるものじゃない」
強く握りし過ぎたせいで、手のひらに爪が食い込んで、血がにじんでいた。
アヤは慌てて諭したが、セイラは泣き顔のまま苦く笑った。
「体が痛いと、少しだけ心の痛みが分からなくなるんだ」
強く握りこまれた髪の毛が、数本、微かな音を発てて千切れた。
「あの頃、僕はいつもダイヤスを殺す方法を考えていた。
でも同時に、確実に一瞬で死ねる方法も考えていたんだ」
どちらも方法が見つからなかった。
何度も殺してほしいと、自分を犯しに来る者達に頼んだが、皆、口を揃えた様に『ダイヤス様に怒られるから無理だ』と言っていた。
首輪に繋がる長い鎖はあっても、それを引っ掛けて首を吊れる所が無かった。
この六年間、特に最後の二年間、死はセイラにとって、唯一の救いだった。
いよいよ己の死を目前に迎えた時の、あの歓喜は、絶頂にも勝っていた。
この六年間で、死はセイラにとってとても良い物に変わってしまった。
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