壊れた玩具と伝説の狼

すずひも屋 小説:恋川春撒 その他:せつ

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春のススキと白い息3ー2

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セイラを、真っ直ぐ見て言ったアヤの言葉に嘘はない。ならば、セイラにとっても問題はない。
「なら、何も怒る事は無いよ」
セイラの表情は自然とほころんでいた。
「僕はアヤの番になりたいと言ったし、狼が巨大化する程の不思議な力が働く山の王とやらの番になるのに、何事もないまま済むとは思っていなかったよ。まさか一回死ぬとは思ってもみなかったけど」
いや、番になるのは死ななくてもなれるのか、山の王と同じ時間を歩むならば体を作り替えなくてはいけないのか。
そして、それをきちんと番になってから行わなければならない所を、アヤは手順をすっ飛ばしてセイラと番関係が成立する前に行ってしまったのだ。
(そうか、僕はアヤと同じだけ生きて行ける体を貰ったのか)
つい少し前は、あと数時間、数十分で死にそうという有り様だったのに、何て不思議な巡り合わせだろうか。
「お前の選択肢を奪ったんだ、俺の番にならなければ、普通の人間のままでいれば、他の人間と番になるという選択肢もあった。
 それを」
『ソレを俺は、強引に奪ったんだ』そういってうなだれた。
セイラは不謹慎と知りながら、そんなアヤを少し可愛いと思ってしまった。
知らず、頬の筋肉が緩んだ。
「アヤ、それが僕を半ば力付くで番にした山の王の言い種?
 『俺が絶対一生幸せにしてやる』位言ってよ。
 余裕が出来たからって日寄らないで」
本当にそう思った。
「あんなに、出会った瞬間から本気で毎日口説いておいて、こんなに自分をメロメロにさせておいて、今さら日寄るなんて甘えは許さない、責任もって一生愛して貰わなくては困る!」
今度はセイラが『ぷぅ』とむくれて見せた。

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