壊れた玩具と伝説の狼

すずひも屋 小説:恋川春撒 その他:せつ

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壊れた玩具と伝説の狼 フィナーレ10

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釜戸かまどが出来たら道具がそろえば料理が出来る。
肉を焼く位なら、大きな石の板でも置けば良い。
「なんか、二人で家を作るって、本当に新婚さんみたい」
自力で動けなくなったセイラは、アヤに寝床へと運んでもらいながらしみじみと言った。
「新婚さんだろう、しかも12年越しでやっと結ばれた二人だ」
アヤはセイラが行方知れずになった年月を相当根に持っていた。
セイラにとっても、後半6年は死んだ方が幸せと思うような日々だった。
「つらかった。本当に、アヤと離れていた間」
あの、言葉にするのも難しい凄惨は日々を思い出して、思わずセイラはアヤに『抱きしめて』とねだった。
アヤは、セイラが横たわった横に自分も横になり、自力で動けないセイラの体を前足で自分の胸に掻き寄せた。
セイラは、ふわふわとした毛並みに包まれ、アヤの臭いをかぐと安心して、心も落ち着いた。
ここなら大丈夫、素直にそう思えた。
「俺から離れたりなんかするからそんな酷い目にあったりするんだ」
アヤは、優しくも拗ねた様な複雑な声で言った。
言いがかりだ。
第一セイラはアヤに出会う前だってそんなに満たされた生活なんて送ってなかった。
でもアヤのその言い分は、今のセイラには欲しい言葉だった。
だからセイラは、アヤが言った駄々をこねた子供の様な言い分を、素直に肯定した。
「そうだね。本当に、アヤと離れてから、酷い事ばっかりだったよ」
アヤから離れたりしたから悪い事が起きた。
そう思えば、何だか楽に色んな理不振な出来事が納得できる気がした。
ほんの少し、あの酷い日々を思い出して、セイラの両目から涙がこぼれた。
本当に、何で生きてこれたのか、自分でも分からない地獄よりも酷い日々だった。

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