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サナリアの悪夢9
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『悪夢を作りました。』とサナリアはそう言った。
その夜は、グイネバルド始まって以来、最も静かな夜となった。
グイネバルドに要る全ての人類に魔法が掛かり、子供はただ眠り、大人達には悪夢が届けられた。
強い酩酊を覚え、意識が遠退いた後、目が覚めたのは辺り一面真っ黒な空間の中だった。
壁か何かに囲まれているのかと思ったが、継ぎ目も壁も見つからない。
光源すら見つからなかった。
自分の手足が見えている事だけがその場が闇では無い事を証明していた。
キョロキョロ辺りを探っていると、不意に人の気配を感じて振り替えると、そこにウロボロスのパレードで先頭を飾る、ドラゴンのフルフェイスマスクを被った魔導士(?)がそこに立っていた。
素人目では、それが本物なのか偽者なのかは分からない。
衣装の細部までなんて覚えていない。
「おい、アンタここが何処だか分かるか?これはアンタの仕業か?」
近づこうとすると、魔導士は近づいた分だけ遠ざかった。
「なぁ!何なんだここは、出られるのか?!」
そう問いかけるが、魔導士は何も答えてはくれなかった。
微動だにしない魔導士、一瞬人形かとも思えたが、無風の中縋る様に持っている錫杖の飾りが微かに揺れている事だけがマスクの中の人物が生きている事を証明していた。
錫杖はウロボロスパレードの今年のドラゴンのマスクの者が持っていた物に見えた。
頭に血が上って掴み掛ろうとするが、寄れば寄ったった分、手を伸ばせば手を伸ばした分魔導士は距離を取った。
いい加減息を切らして、両手を膝に着けた所で、突然耳元で声がした。
「貴方は考えなければならない。」
魔導士は突如自分の真横に現れた。
思わず飛びのき、カッっとなった。
「この野郎!馬鹿にしてるのか!!」
と殴り掛かったが、案の定かわされた。
たたらを踏んでよろけた所に再び真横に瞬間移動してきて繰り返す。
「貴方は考えなければならない。」
「何なんだよ!テメェ!偉そうに。」
「貴方が突き出した拳が何を引き起こすのかを、どんな災厄を起こすのかを、考えなければならない。」
偉そうに言いやがってと腹が立った。
イライラした。
現実味のない己がいる場所が、何をしても許されると思わせた。
腰に下がっていた使い慣れた剣を抜き、思い切り振りかぶって魔導士を切りつけた。
本気で刺さるとは思っていなかった。
予想に反して剣はさくりと魔導士に刺さった。
余りに思い切りよく刺さり、思わず悲鳴を上げて飛びのき、後ずさり、よろけて尻もちを突いてしまった。
剣が突き刺さった所からは血しぶきが上がった。
当たり一面に血だまりが出来た。
切り裂かれた魔導士は叫び声も上げずに、剣が食い込んだ体のままその場に立ち尽くしている。
「おい・・・。」
自分で切りかかっておきながら今度は手を差し伸べようとした。
理由は分からない、あまりに現実味の無い状況に考えが付いて行かず、これが現実なのか確かめようとしたのかも知れない。
魔導士の被っていたマスクが真っ二つに割れて落ちる。
中に居た人間が割れた顔でこの世の全ての憎悪を固めた様な顔で言った。
「人殺し。」
ソイツは自分の顔をしていた。
その夜は、グイネバルド始まって以来、最も静かな夜となった。
グイネバルドに要る全ての人類に魔法が掛かり、子供はただ眠り、大人達には悪夢が届けられた。
強い酩酊を覚え、意識が遠退いた後、目が覚めたのは辺り一面真っ黒な空間の中だった。
壁か何かに囲まれているのかと思ったが、継ぎ目も壁も見つからない。
光源すら見つからなかった。
自分の手足が見えている事だけがその場が闇では無い事を証明していた。
キョロキョロ辺りを探っていると、不意に人の気配を感じて振り替えると、そこにウロボロスのパレードで先頭を飾る、ドラゴンのフルフェイスマスクを被った魔導士(?)がそこに立っていた。
素人目では、それが本物なのか偽者なのかは分からない。
衣装の細部までなんて覚えていない。
「おい、アンタここが何処だか分かるか?これはアンタの仕業か?」
近づこうとすると、魔導士は近づいた分だけ遠ざかった。
「なぁ!何なんだここは、出られるのか?!」
そう問いかけるが、魔導士は何も答えてはくれなかった。
微動だにしない魔導士、一瞬人形かとも思えたが、無風の中縋る様に持っている錫杖の飾りが微かに揺れている事だけがマスクの中の人物が生きている事を証明していた。
錫杖はウロボロスパレードの今年のドラゴンのマスクの者が持っていた物に見えた。
頭に血が上って掴み掛ろうとするが、寄れば寄ったった分、手を伸ばせば手を伸ばした分魔導士は距離を取った。
いい加減息を切らして、両手を膝に着けた所で、突然耳元で声がした。
「貴方は考えなければならない。」
魔導士は突如自分の真横に現れた。
思わず飛びのき、カッっとなった。
「この野郎!馬鹿にしてるのか!!」
と殴り掛かったが、案の定かわされた。
たたらを踏んでよろけた所に再び真横に瞬間移動してきて繰り返す。
「貴方は考えなければならない。」
「何なんだよ!テメェ!偉そうに。」
「貴方が突き出した拳が何を引き起こすのかを、どんな災厄を起こすのかを、考えなければならない。」
偉そうに言いやがってと腹が立った。
イライラした。
現実味のない己がいる場所が、何をしても許されると思わせた。
腰に下がっていた使い慣れた剣を抜き、思い切り振りかぶって魔導士を切りつけた。
本気で刺さるとは思っていなかった。
予想に反して剣はさくりと魔導士に刺さった。
余りに思い切りよく刺さり、思わず悲鳴を上げて飛びのき、後ずさり、よろけて尻もちを突いてしまった。
剣が突き刺さった所からは血しぶきが上がった。
当たり一面に血だまりが出来た。
切り裂かれた魔導士は叫び声も上げずに、剣が食い込んだ体のままその場に立ち尽くしている。
「おい・・・。」
自分で切りかかっておきながら今度は手を差し伸べようとした。
理由は分からない、あまりに現実味の無い状況に考えが付いて行かず、これが現実なのか確かめようとしたのかも知れない。
魔導士の被っていたマスクが真っ二つに割れて落ちる。
中に居た人間が割れた顔でこの世の全ての憎悪を固めた様な顔で言った。
「人殺し。」
ソイツは自分の顔をしていた。
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