上 下
54 / 110

ルークの初恋 3ー26

しおりを挟む
シャルレは後部側の席に寝そべる様に座っていた。
「おいで、ルーク」
呼ばれてルークがそばに行く、馬車が動き出した。
「セットが崩れちゃって、変に引っ張られちゃって痛いの。髪の毛解いて」
「はい、失礼します。」
解けと言いつつ姫が姿勢を変えるワケ無いので、必然的にルークが座席に片膝を着いてシャルレの髪に手を伸ばした。
「あぁ・・・これは痛いでしょう、絡まってます。すみません、ちょっと時間かかりますよ」
ルークがシャルレの手触りの良い髪を出来る限り傷めない様に丁寧に絡まりを解いているとシャルレ姫が暇を持て余したのか、ルークの着ている民族衣装のビーズを悪戯し始めた。
シャラリ、シャラリをビーズが綺麗な音を立てる。
「姫?」
「あいつに、何処どこで合ったの?」
「ジェイコブ王子ですか?えっと街中で露天商の人に絡まれてる所を助けて頂いたんです。偶然」
「お前、それけられてたのよ、分かってる?」
「まぁ、姫との会話を聞きましたので」
「先ず、助けられた時点で怪しいと思いなさい」
「すみません」
飾りをいじっていたシャルレの手が、するりとルークの腹を撫でた。
「良い手触りね」
ルークの返答を待たずに、シャルレは言葉を続けた。
「ジェイコブ王子と随分親しくなったのね。お前の初恋の話なんて、私、聞いた事が無い」
「はぁ、誰にも話した事無かったんで」
そこで、シャルレのまとう空気が何故か一気に低下した。
「へぇ・・・」
心なしか声が恐い。
表情が笑顔なのがまたルークを戦慄させた。






しおりを挟む

処理中です...