2 / 2
第2話 カナタとユイト
しおりを挟む
「こっちにきたら?カナタ。おいしいよ」
銀髪を揺らしながら、茶菓子を頬張《ほおば》るユイトは、庭を眺《なが》めるカナタに呼びかける。
仲居が部屋や施設の案内をしている間も、ユイトが荷物を整理している間も。
ずっと同じ表情で中庭を眺めている。
実はその目線は一転ではなく、中庭の細かいところまで視線を走らせているのは分かっている。
ずずず、ユイトはお茶を飲む。
「おお、うまい」
あの仲居。
若いようだが、仲居として経験がありそうだ。
案内の口調、お茶を淹《い》れる仕草、そしてお茶のおいしさ。
「やるねぇあの仲居さん」
「おい、誰にでもへらへらすんじゃねぇよ」
「大丈夫大丈夫!僕ら水入らずの旅行だもんねぇ」
「うるせぇ」
気が済んだのか、中庭から目を離したカナタは、ユイトの前にどかっと座る。
しかし、仏頂面はかわらない。
「…ユイト、匂うぞ」
ぼそっと呟《つぶや》くように言ったカナタの言葉に、ユイトの口元がほころぶ。
「そっかぁ」
ユイトは微笑みに意地悪さを添《そ》えた。
* * *
「こちらが本日の水物《みずもの》 季節の果物です」
「おおー!」
部屋に夕食を一つずつ運んでいく。
できたての食事を鮮度が落ちないうちに運んで、客人の前で最高の状態で提供する。
ユイトは喜んだように振る舞ってくれるのに、カナタは眉一つ動かさない。
「温かいお茶も用意できますが、用意いたしましょうか?」
「ああお願いします」
問いかけても返事をするのはユイト。
口を開かないカナタはユイトに全てを預けているようだ。
これが信頼関係か、と半ば興味をもちながらも、サナはお茶を淹れ、空になった食器を片付けていく。
「本当においしかった。さすが噂に聞く蝶の宿さんだ」
「ありがとうございます。料理長にも伝えますね」
「それにサナさんのお茶もおいしいよ」
「ありがとうございます」
「ね!カナタ!」
「…」
ユイトの言葉に、カナタがちらりとサナを見るが、無言のまま果物を口にいれる。
話が苦手なタイプなのだろう。
夕食の準備中にサナはそう分析していた。
笑顔は変えずに、「よかったです」と気にしていないように返す。
「ところで…」
事件が起きたのはそのときだった。
「うわああああ‼」
時が一瞬停止した。
銀髪を揺らしながら、茶菓子を頬張《ほおば》るユイトは、庭を眺《なが》めるカナタに呼びかける。
仲居が部屋や施設の案内をしている間も、ユイトが荷物を整理している間も。
ずっと同じ表情で中庭を眺めている。
実はその目線は一転ではなく、中庭の細かいところまで視線を走らせているのは分かっている。
ずずず、ユイトはお茶を飲む。
「おお、うまい」
あの仲居。
若いようだが、仲居として経験がありそうだ。
案内の口調、お茶を淹《い》れる仕草、そしてお茶のおいしさ。
「やるねぇあの仲居さん」
「おい、誰にでもへらへらすんじゃねぇよ」
「大丈夫大丈夫!僕ら水入らずの旅行だもんねぇ」
「うるせぇ」
気が済んだのか、中庭から目を離したカナタは、ユイトの前にどかっと座る。
しかし、仏頂面はかわらない。
「…ユイト、匂うぞ」
ぼそっと呟《つぶや》くように言ったカナタの言葉に、ユイトの口元がほころぶ。
「そっかぁ」
ユイトは微笑みに意地悪さを添《そ》えた。
* * *
「こちらが本日の水物《みずもの》 季節の果物です」
「おおー!」
部屋に夕食を一つずつ運んでいく。
できたての食事を鮮度が落ちないうちに運んで、客人の前で最高の状態で提供する。
ユイトは喜んだように振る舞ってくれるのに、カナタは眉一つ動かさない。
「温かいお茶も用意できますが、用意いたしましょうか?」
「ああお願いします」
問いかけても返事をするのはユイト。
口を開かないカナタはユイトに全てを預けているようだ。
これが信頼関係か、と半ば興味をもちながらも、サナはお茶を淹れ、空になった食器を片付けていく。
「本当においしかった。さすが噂に聞く蝶の宿さんだ」
「ありがとうございます。料理長にも伝えますね」
「それにサナさんのお茶もおいしいよ」
「ありがとうございます」
「ね!カナタ!」
「…」
ユイトの言葉に、カナタがちらりとサナを見るが、無言のまま果物を口にいれる。
話が苦手なタイプなのだろう。
夕食の準備中にサナはそう分析していた。
笑顔は変えずに、「よかったです」と気にしていないように返す。
「ところで…」
事件が起きたのはそのときだった。
「うわああああ‼」
時が一瞬停止した。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
春に狂(くる)う
転生新語
恋愛
先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/
カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる