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カンテの街は外から見たらレンガ色だけど、建物の中に入ればどれくらい豊かな土地かがよく分かる。
豪奢な調度品で彩られた商会の応接室で、僕はガスゴルグ家傘下の商会会頭から様々な東洋からの輸入品の説明を受けていた。
「こちら、リー姫様の嫁入り道具にもあったと言われるティーセットです。白磁の釉薬が見事でございましょう?」
会頭の恰幅のいい体に、指や首にはルビーやサファイアのはめ込まれた金細工のアクセサリーが光る。
「素敵ですね。」
品自体は確かに良いものに見える。リー姫の嫁入り道具というのは本当だろうか?ちらりとハルを見た。
「しかしリー・ベルガ男爵様を前に偉そうに言うのは緊張しますな!はっはっはっ!」
会頭が態とらしく行った。
「いえ、恥ずかしながら、リー姫はほとんどの品を我が家に嫁ぐ際に手放していますので……。」
「とんでもない!諸侯の理解を得るために彼らに贈ったと聞いております。愛した方と一緒になる為なら財を惜しまない。全く尊いお姿でございます。」
「それはどうも。」
「しかし、もし少しでもご所蔵ならぜひお目にかかりたい。何せ稀代の品ばかりと伝わっておりますからね。七色に輝く高杯、あらゆる傷を癒す軟膏、紙を乗せるだけで切れる太刀、ルビーの生る盆栽……」
「えっ……なんでも傷が直せる薬があるの?」
僕は会頭の言葉に驚いてハルを見た。その黒い眼帯を見つめる。
「……残念ながら、既に手放しております。」
「そうなんだ……あっ、でも晃から来た品なら晃にはあるんだよね!?会頭さん、どうにか手に入ったりしないんですか?」
「これはこれは。そうでございますねぇ。中々難しいご要望ですが、侯爵令息様のお力添えが頂けるのであれば……」
「ぼ、僕にできることなら!」
「会頭殿、すみませんが……」
「アモル!」
ハルの言葉の途中、名前を呼ばれて部屋の扉に目を向ける。
そこにはガスゴルグ公爵が満面の笑みで立っていた。
「ガスゴルグさん!」
驚きつつも立ち上がり、彼に近寄る。
ずんぐりした父さまとちがって、細身で背が高い公爵が僕を包むように抱きしめた。
「やあ、来てると聞いて驚いたよ。うちの商会に用があるならどうして教えてくれなかったんだい?」
話しながらゴシゴシ背中をさすられる。相変わらず公爵はスキンシップが激しいな。
「あ、すみません。今トーリアに滞在していて急に決めたものだから……」
「トーリアに?……何故?」
「領地の視察です。父にもっと勉強しろと言われました。」
「そうか!アモルももう大人だからな。良いことだ。何にせよこっちで会えるなんて嬉しいよ。そうだ。今日はうちの屋敷に泊まっていきなさい。」
「ありがとうごさいます。公爵もカンテにご滞在ですか?」
「ああ。イダスに送る新しい船を買おうと思ってね。造船会社はこの目で工場を見て決める主義なんだ。」
「そうでしたか。お忙しいなら、お邪魔するわけには……」
「なーに!今日一日アモルの相手をするくらい構わんよ!今から来るかね?」
両手でほっぺを押さえられて顔を引き寄せられる。
いつもの事だけど、ち、近い。
「こ、公爵、あの、リー・ベルガ男爵をご紹介しても?」
迫ってくる顔を避けながら話題を変える。
僕の言葉に、公爵がハルを見た。
「君が噂のリー・ベルガ君か!いやぁ、噂通りの美丈夫だね!」
公爵がパッと僕から離れてハルに手を差し出す。
ハルは貼り付けたような笑みでその手を取った。
「男爵のバルハルド・リー・ベルガです。お初にお目にかかります。」
「いやぁ、噂には聞いているよ!領地の管理が相当優秀だとね。うちのロンヘンも任せたいもんだ!!どうだ主家を変えないか?」
握手した手をぐにぐに揉んで、肩をポンポン叩いて撫で回す。
ちょ、ちょっと、ハルに気安く触らないでほしい……
「私程度、トーリアに尽くすので精一杯でございます。」
ハルは特に気にする風もなくされるがままだ。嫌じゃないのかな。
「ふむ!その謙虚さも素晴らしいな!」
「こ、公爵!お屋敷に行くなら早く連れていってください!」
更にハルを触ろうとする公爵の腕を引っ張って剥がし、勢いで公爵の屋敷に行く事になった。
豪奢な調度品で彩られた商会の応接室で、僕はガスゴルグ家傘下の商会会頭から様々な東洋からの輸入品の説明を受けていた。
「こちら、リー姫様の嫁入り道具にもあったと言われるティーセットです。白磁の釉薬が見事でございましょう?」
会頭の恰幅のいい体に、指や首にはルビーやサファイアのはめ込まれた金細工のアクセサリーが光る。
「素敵ですね。」
品自体は確かに良いものに見える。リー姫の嫁入り道具というのは本当だろうか?ちらりとハルを見た。
「しかしリー・ベルガ男爵様を前に偉そうに言うのは緊張しますな!はっはっはっ!」
会頭が態とらしく行った。
「いえ、恥ずかしながら、リー姫はほとんどの品を我が家に嫁ぐ際に手放していますので……。」
「とんでもない!諸侯の理解を得るために彼らに贈ったと聞いております。愛した方と一緒になる為なら財を惜しまない。全く尊いお姿でございます。」
「それはどうも。」
「しかし、もし少しでもご所蔵ならぜひお目にかかりたい。何せ稀代の品ばかりと伝わっておりますからね。七色に輝く高杯、あらゆる傷を癒す軟膏、紙を乗せるだけで切れる太刀、ルビーの生る盆栽……」
「えっ……なんでも傷が直せる薬があるの?」
僕は会頭の言葉に驚いてハルを見た。その黒い眼帯を見つめる。
「……残念ながら、既に手放しております。」
「そうなんだ……あっ、でも晃から来た品なら晃にはあるんだよね!?会頭さん、どうにか手に入ったりしないんですか?」
「これはこれは。そうでございますねぇ。中々難しいご要望ですが、侯爵令息様のお力添えが頂けるのであれば……」
「ぼ、僕にできることなら!」
「会頭殿、すみませんが……」
「アモル!」
ハルの言葉の途中、名前を呼ばれて部屋の扉に目を向ける。
そこにはガスゴルグ公爵が満面の笑みで立っていた。
「ガスゴルグさん!」
驚きつつも立ち上がり、彼に近寄る。
ずんぐりした父さまとちがって、細身で背が高い公爵が僕を包むように抱きしめた。
「やあ、来てると聞いて驚いたよ。うちの商会に用があるならどうして教えてくれなかったんだい?」
話しながらゴシゴシ背中をさすられる。相変わらず公爵はスキンシップが激しいな。
「あ、すみません。今トーリアに滞在していて急に決めたものだから……」
「トーリアに?……何故?」
「領地の視察です。父にもっと勉強しろと言われました。」
「そうか!アモルももう大人だからな。良いことだ。何にせよこっちで会えるなんて嬉しいよ。そうだ。今日はうちの屋敷に泊まっていきなさい。」
「ありがとうごさいます。公爵もカンテにご滞在ですか?」
「ああ。イダスに送る新しい船を買おうと思ってね。造船会社はこの目で工場を見て決める主義なんだ。」
「そうでしたか。お忙しいなら、お邪魔するわけには……」
「なーに!今日一日アモルの相手をするくらい構わんよ!今から来るかね?」
両手でほっぺを押さえられて顔を引き寄せられる。
いつもの事だけど、ち、近い。
「こ、公爵、あの、リー・ベルガ男爵をご紹介しても?」
迫ってくる顔を避けながら話題を変える。
僕の言葉に、公爵がハルを見た。
「君が噂のリー・ベルガ君か!いやぁ、噂通りの美丈夫だね!」
公爵がパッと僕から離れてハルに手を差し出す。
ハルは貼り付けたような笑みでその手を取った。
「男爵のバルハルド・リー・ベルガです。お初にお目にかかります。」
「いやぁ、噂には聞いているよ!領地の管理が相当優秀だとね。うちのロンヘンも任せたいもんだ!!どうだ主家を変えないか?」
握手した手をぐにぐに揉んで、肩をポンポン叩いて撫で回す。
ちょ、ちょっと、ハルに気安く触らないでほしい……
「私程度、トーリアに尽くすので精一杯でございます。」
ハルは特に気にする風もなくされるがままだ。嫌じゃないのかな。
「ふむ!その謙虚さも素晴らしいな!」
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更にハルを触ろうとする公爵の腕を引っ張って剥がし、勢いで公爵の屋敷に行く事になった。
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